高齢化対策モデル国「デンマーク」とは?
「世界幸福度ランキング(Ranking of Happiness)」でも何度も1位になっていて、幸福大国として有名な“デンマーク”。デンマークの社会は「成熟社会」とも呼ばれていて、医療費、出産費、教育費等が無料だったりと日本では考えられないほど充実した社会福祉サービスが提供されています。もちろん、介護もその中の一つで、充実した介護福祉サービスが受けられるようになっています。
「成熟社会」と言われるデンマークのシステム
では、まずデンマークはどんな社会システムで動いているかをみていきましょう。
デンマークは、消費税が25%、所得税が50%超えということの代わりに、医療費のほとんど無料であったり、介護福祉サービスが受けられたりといった手厚い社会福祉サービスを提供しています。日本との最大の違いは、社会福祉にかかわる財源を全て税金で賄っていることです。それ故、一見して驚くような税率でも国民の満足度は高い状況にあるのです。
以下に、デンマークの社会福祉制度をざっくりとですがまとめてみました。
医療費無料
医療費が無料といってもすべてが無料というわけではありません。このシステムを成り立たせるために「家庭医」と「病院」という2段階の診療システムがあります。日本でいう「かかりつけ医」が「家庭医」にあたり、体調が悪いときやけがをしたときはここにかかる。家庭医の診断結果に基づき総合病院のような大きい病院に送るかを判断するそうです。医療費が無料なのは「病院」だけであり「家庭医」は補償対象外です。命に関わるようなものには100%手厚く保障がある上にそのような重病人の方がスムーズに診療を受けられるような仕組みになっている点もメリットです。
出産費・教育費無料、育児制度も充実
デンマークでは、出産費と幼稚園~大学までの費用が無料です。日本との最大の違いは、お金をもらって大学にいくことが常識ということですね!
充実した高齢者福祉
デンマークの年金制度は「国民年金」「労働市場付加年金」「早期退職年金」の3種類あります。特に特殊なのが「国民年金」です。収入や家族構成など様々な年金所得者の状況に応じて、毎年調整されます。これで公平性を保っているそうです。
以上のようにデンマークでは税金が高いですがたくさんの保障が受けられるようになっています。
デンマークの介護の要点まとめ
ここまでで、デンマークの社会保障制度はとても手厚く高齢者福祉や介護にもたくさんの保障が設けられていることがわかっていただけたと思います。しかし、デンマークが高齢者モデル国といわれる所以はただ単に『保障』がすごいだけではないそうです。ここからはデンマークの高齢者福祉に関してもう少し掘り下げてご紹介していきたいと思います。
在宅ケアを推奨するデンマーク
最近のデンマークでは、「老人ホームをなくし在宅ケアを推奨する」という方向に舵を切っています。
デンマークは1960年代に高齢者率が10%を超えました。その時は、日本でいう特別養護老人ホームのような「プライエム」が多数建設されていました。今の日本と少し似ていますね。しかし、デンマークの高齢者福祉モデルを構築していくための考え方を決めるために1979年に設立された「高齢者委員会」というところで定めた「高齢者三原則」の策定によりデンマークの高齢者福祉は大きく舵をきることになりました。
具体的には「高齢者三原則」に基づき「老人ホーム」から「在宅ケア」に方向転換されました。これは、財政的な問題などではなく福祉が「過剰なケア」を提供するものではなくお年寄りの自立を支援するものであるべきという哲学に基づいています。
補足説明)高齢者三原則とは
1.生活の継続性に関する原則
これまで暮らしてきた生活と断絶せず、継続性をもって暮らすという意味です。
それぞれの人が、住み慣れた環境で可能な限り暮らし続けることを支援し“在宅介護”の充実につながる原則です。
2.自己決定の原則
高齢者自身の自己決定を尊重し、周りはこれを支えるということを指しています。
「高齢者になっても、一人の人間であることには変わりがない」という尊厳の尊重に関わる原則です。
3.残存能力の活性化に関する原則
これは今ある本人の能力に着目して、自立を支援するというものです。
「高齢になっても、何も出来ない病人になってしまうわけではない。」「介護サービスを利用するようになっても、全てに関して受け身で暮らさなければならないわけでもない。」等の事を考えた『どこまで支援すべき』かを考える原則です。あまりに介入しすぎて残存能力が悪化することのないように気を配ることが必要だと考えられているそうです。
このように、「保障」の他に「高齢者がいつまでも自立した生活を送れるように」と国をあげて舵をきったことがポイントだったようです。
超高齢者社会に向かっている日本でもこういった部分は見習わなければならないと筆者は考えています。デンマークもある日突然「成熟社会」と呼ばれるような社会制度ができたわけではありません。私たち日本でも「成熟社会」と呼ばれるような社会システムの仲間入りができるよう一人一人が何が出来るかを考えていけるようになればいいですね。
まとめ
今回は、高齢化対策モデル国「デンマーク」の介護ここがすごい!と題して、北欧デンマークの社会福祉制度をご紹介してきましたがいかがでしたか?
デンマークが高齢者対策モデル国と言われている理由が少しでもご理解いただけたでしょうか。デンマークが介護福祉のモデル国家となったのは、なにも特別なことをしたからではありません。高齢者への過度なケアを提供するのではなく、どう自立をサポートしていくかという方向へ国を挙げて考え方を少し方向転換しただけなのです。これをきっかけにご自身の介護観を考える際に「自立支援」について少し目を向けてみるのも良いかもしれませんね。