高い雲、青く澄みわたった空。秋が深まる10月は、屋外でも気持ちよく過ごせるベストシーズンです。
高齢者にとっては、暑さ寒さが厳しい夏や冬にくらべ、外出へのハードルが低くなる貴重な時季。老人ホームやデイサービスなど、高齢者施設でのレクリエーションにもぜひ、外出を伴うものを取り入れてみたいですね。
芸術の秋、読書の秋、スポーツの秋といわれるように、空気もカラリと乾いて過ごしやすい秋は、さまざまな趣味活動にも集中しやすい季節。大人の趣味系レクにも、挑戦する意欲が高まります。
このコラムでは、10月に取り入れたいレクリエーションのネタをご紹介していきます。あわせて毎日の会話のネタに役立つ記念日や雑学もご紹介。毎日の介護ワークにぜひ役立ててくださいね。
10月ってどんな月?
10月は、5月と並んで一年のうちで、いちばん過ごしやすい季節かもしれません。晴れた日の空は真っ青で、抜けるように高く感じますね。
春や夏と同じ空のはずなのに、どうして秋の空はひときわ青く高く感じるのでしょうか?それは、秋の空気にチリや水蒸気といった不純物が少ないため。もともと空気を構成している酸素分子や窒素分子は、青や紫など波長が短い光を強く拡散します。一方、チリや水滴は、青だけでなくさまざまな波長の光を拡散するため、それらを多く含む春や夏の空は白っぽく見えるのです。
さらに、秋は雲の位置も高くなります。秋の空によく見られるイワシ雲やウロコ雲は巻積雲といって、空の高いところにできるため、空自体が高くなったように感じられるのだそうです。
晴れた秋の日、青い空を眺めて思いきり深呼吸すると、とてもすがすがしい気分になりますね。秋ならではの澄んだ空気を吸いに、ぜひ外出の機会も多く持ちたいところです。
10月の風物詩としては、行事では運動会やハロウィン、生き物では赤とんぼや鈴虫、コオロギなどの秋の虫。植物ならそろそろ色づき始める街路樹の紅葉や、コスモス、菊、金木犀など。食べ物ならサンマや秋鮭、きのこに栗や芋、果物では柿にぶどう、梨に巨峰など、旬を迎えるおいしいものがめじろ押しです。
天気の良い日のお散歩では、車椅子を押しながら、子供の頃の運動会の思い出話や好きな秋の食べ物など、いろいろなお話を聞き出してみてくださいね。
レクや会話のネタに!10月の記念日
10月2日:豆腐の日
とうふの語呂合わせから、この日は豆腐の日。ヘルシーで栄養もあり、柔らかいので高齢者も食べやすい食材ですね。
ところで豆腐のおいしい食べ方といえば湯豆腐でしょうか、それとも麻婆豆腐でしょうか?冷奴にかけておいしい変わりダネは?小さなきっかけですが、そこからお話が盛り上がるといいですね。
10月4日:いわしの日
こちらも語呂合わせから、10月4日はイワシの日なのだそう。脳に良いと言われるDHAや血液をサラサラにするEPAといった栄養素を豊富に含んでいますから、ぜひ積極的に摂っていきたいですね。骨が気になる場合は、圧力鍋で煮ると骨まで柔らかに。しらすやちりめんじゃこの形でとるのも良いですよ。
10月第2月曜日:体育の日
1964年、10月10日に行われた東京オリンピックの開会式にちなみ、制定された体育の日。これから2020年にも東京オリンピックが控えていますが、当時の盛り上がりはすごかったと聞きます。その辺りのリアルな思い出話なども、ぜひ聞き出してみたいところです。
10月13日:さつまいもの日
さつまいもが旬を迎える10月。あちこちの農園でも、さつまいも掘り体験ができます。大きく太ったさつまいもを土の中から掘り出すのは、とても楽しいレジャーですね。
体に障害を抱えた高齢者にとっては、実際にさつまいも掘りをすることは難しいので、高齢者施設の中で楽しめる「さつまいも掘りゲーム」はいかがでしょうか?
新聞紙などを丸めて色を塗り、さまざまな大きさのさつまいもを作ります。色の濃いビニール袋(45リットル程度)の中に、シュレッダーにかけた紙を入れ、さつまいもを隠します。スタートの合図でビニール袋に手を入れて、さつまいもを探します。
ピンポン球など、ハズレを入れておいても楽しいですね。また、ビニール袋をダンボール箱にすると、探しやすくなって難易度が下がります。
袋の中は見えず、指先の感覚だけで探すため、集中力や思考力も刺激され、楽しみながら手や指、腕の運動ができますよ。さつまいもの他にも、いろいろな秋の風物詩でやってみてくださいね。
10月31日:ハロウィン
ハロウィンはもともと、古代ケルト人が秋の収穫を祝い、悪霊を追い出すために行っていたお祭りです。現代では子供たちが魔女やお化けに仮装して、お菓子をもらったりして楽しんでいます。
日本の高齢者には馴染みがないイベントかもしれませんが、せっかくのイベントですから、高齢者施設でも楽しんでいきたいですね。
レクリエーションで飾りを作って施設内をデコレーションすると、お祭り気分が出て楽しくなります。当日はスタッフがちょっとした仮装をしたり、おやつにお化けクッキーを出したりするだけでも、会話や笑顔が増え、職員も楽しめますよ。
芸術の秋、大人の鍵盤ハーモニカにチャレンジ
近頃、高齢者も楽しめるとして、大人の鍵盤ハーモニカが注目されているのをご存知ですか?
鍵盤ハーモニカというと、子供の楽器で幼稚なイメージを持っている人も多いかもしれません。でも最近、大人の趣味として静かなブームになっているんです。
鍵盤ハーモニカのいいところは、認知機能や運動機能など、高齢者の衰えがちな機能回復に、さまざまな効果が期待できるところ。
まず息を吹き込んで音の大きさを調整するので、自然に頬や唇、喉や舌の筋肉を使います。鼻から息を吸い口から出すので、呼吸に使う筋肉も鍛えられます。考えながら指を動かすので、脳もしっかり使います。さらにみんなと交流したり、目標を持って練習したりすることで心がワクワクして、気持ちも元気に!
誰のお家にもたいてい眠っている鍵盤ハーモニカ。お家にある方は持って来ていただいてもいいですね。
最近は音色やデザインを大人っぽくおしゃれに改良した、大人のための鍵盤ハーモニカや、大人が弾きたくなる曲目をセレクトした模範演奏CD付きの楽譜も市販されています。
ステキな曲が弾けるようになったり、みんなで楽しく合奏したり・・・そんな楽しみがあれば、毎日がもっと豊かになりますよ。ぜひ検討してみてくださいね。
お散歩レクを楽しむコツ
気持ちの良い秋晴れの日には、外出しなければもったいない気分になりますね。でも、ただ「散歩に行きましょう」だけでは、なかなか億劫がって腰を上げてくれない高齢者もいるでしょう。そんな時には、何か目的があると「行ってみようか」という気になります。
たとえば「植物調査」などはどうでしょうか?施設の周辺を散歩して、咲いている花や、落ちている木の実などを見つけます。スケッチブックと筆記用具を持っていき、観察して描きこみます。
他にも「新しいお店調査」などと題して、白紙のマップを用意しておき、「ここにこんなお店ができていた」などと書き込んでいくのもいいですね。
30分ほど散歩を楽しんだら、施設に戻って発表会をします。その日の発見をワイワイとみんなで共有すれば、全身運動にもなり、コミュニケーションにもなり、心にも体にもいいことづくめです。
スポーツの秋はボールを取り入れて
せっかく過ごしやすい季節ですから、体操やスポーツなど、体を動かす機会も増やしたいですね。おすすめはボールを使って、ゲーム感覚で楽しめるアクティビティです。
みんなで輪になって座り、風船を落とさないようにトスをしていく「風船バレー」や、バスタオルの上にボールを乗せ、二人一組でバスタオルを持ち、ボールを送っていく「ボール送りゲーム」などは定番ですね。列になって座り、大き目のビーチボールなどを足で送っていってゴールに入れる「ボールサッカー」は、対抗戦にしても面白く、よい下肢運動になります。
ゲーム感覚で楽しめるアクティビティは、手や腕など、全身の運動になることはもちろん、ボールを落とさないように声を掛け合ったり、みんなで笑いあったりすることで脳が刺激され、意欲のもとになるドーパミンなどのホルモン分泌も高まります。
ボールの大きさや素材を変えたり、ボールに少し水を入れたりすると、いつものアクティビティも難易度が変わってまた新鮮に。いろいろ工夫してみてくださいね。
掃除や洗濯だって立派なレクリエーションに
毎日まいにちレクリエーションのネタを考えるのは大変ですね。別に10月に限りませんが、掃除や洗濯などを手伝ってもらうことも、本人が楽しめれば立派なレクリエーションになります。
認知症の方でも、タオルをたたんだり食器を洗ったりなど、長年やってきたことは体が覚えていて、上手にできることも。「さすがですね!」「助かります」といった声かけで、認知症のBPSD(周辺症状)が改善することも知られています。日頃から、本人ができることはどんどんお願いしていきましょう。
お勧めしたいのは掃除。「大掃除は年末」という固定概念を取り払って考えると、空気が乾燥して気候の良い秋は、大掃除にぴったりの季節です。
「○○ホーム大掃除大会」などと銘打って、大掃除をレクリエーションにしてしまうのはいかがでしょう。床を掃く、テーブルなどを拭くという動作は肩から腕の運動になりますし、きれいになれば気分もスッキリ。最後には「今大会のMVP」として、とくに頑張ってくれた方を表彰するのも楽しそうです。
10月のレクリエーション企画のポイント
めっきり過ごしやすくなる10月は、夏の間にたまった疲れを回復し、冬に向けてまた体力をつけていくために重要な時期。
そのためにはもちろん栄養をとることも大切ですが、しっかり食べようと思ったら、まずお腹がすくことが重要です。少しずつでも体を動かしてもらえるよう、サポートしていきましょう。
ただ体操をする、運動をするだけでも良いのですが、その先に目的があるとやる気が出ます。鍵盤ハーモニカなら「こんな曲が弾けるようになりたい」という目標や、ただの散歩であっても「珍しい植物を見つけてみんなをびっくりさせよう」といった目的があれば、グンと張り合いが出てモチベーションも上がります。
高齢者の好奇心を刺激し、やる気になってもらうためにも、レクリエーションが面白いかどうかは重要です。マンネリになっているなあ、と感じている介護職の方は、ぜひ上記のアイデアなども参考にしながら、勤務施設に合わせカスタマイズして取り入れてみてくださいね。