ひと雨ごとに寒さがやわらぎ、桜のつぼみふくらむ3月。明るい日の光に誘われて、虫や植物たちがいっせいに活動をはじめます。
私たち人間も、なんとなく心が晴れやかになり、活動的な気分になれる季節。そんな3月にぴったりの、簡単にできて盛り上がるレクリエーションをご紹介していきます。
たとえば3日のひな祭りは、桜餅を作って食べたり、ひな祭りにちなんだゲームでワイワイと。後半にはそろそろ外も暖かくなってくるので、お散歩レクも取り入れていきたいですね。
ゲームにおやつレク、お散歩レクなど、スムーズに行うための具体的なアイデアをご紹介していきます!
3月ってどんな月?
3月は別名「弥生(やよい)」の別名のほか、「さくらづき(桜月)」、「とうげつ(桃月)」、「はなみづき(花見月)」、「ゆめみづき(夢見月)」といった呼び名も持ち合わせています。これらの別名からもわかるように、桜のイメージが強い月。
関東以南では3月下旬から4月上旬にかけて満開を迎える桜は、日本人にとってはとても馴染みの深い花。誰もが桜の開花を心待ちにしているからこそ、開花予報や桜前線の話題がニュースになるんですね。
この時期は「九州ではもう桜が咲いたらしいですね」「向かいの公園で今朝1輪咲いていましたよ」などと桜の話題で話しかけてみると、利用者の方との会話の糸口になりそうです。
また、3月の壁面飾りは「桜」をモチーフにすると、壁一面に咲いたやさしいピンクの花が、空間をパッと明るくしてくれます。しだれ桜や八重桜などに挑戦してみるのもおすすめですよ。
3月に食べたい季節の食べ物としては、メバルやさわらなど春が旬のお魚や、菜の花、筍、グリンピースなどの春野菜。
春キャベツや新じゃがも、他の時期に取れるものと違って甘くてみずみずしい味わいで、一年に一度ぜひ味わっておきたい春の味です。
明るい黄色や若菜色の春野菜が食卓を彩ると、気持ちもぐっと春気分に。長かった冬を越えてようやく暖かくなってきた喜びを、視覚からも味覚からも、存分に楽しみたいですね。
レクや会話のネタに!3月の記念日
3月3日:ひな祭り
ひな祭りは別名「桃の節句」とも呼ばれる伝統行事。ひな人形を飾り、ひなあられやひし餅、ちらし寿司やハマグリのお吸い物などを食べるのが習わしです。
女の子のお祭りですが、男女関係なく参加できるゲームなら、みんなで楽しむことができます。
【ひな祭りにやりたいレクリエーション:ひな人形争奪ゲーム】
チーム対抗戦でひな人形のカードを集めていくゲーム。準備にそれほど手間がかからず、簡単に楽しめて盛り上がります!
まずは利用者をグループわけして、5人くらいのチームを2〜3作ります。ハガキくらいのサイズの厚紙に、お雛様やお内裏様、三人官女や五人囃子のイラストをプリントアウトしたものを貼り付けて、ひな人形カードを作っておきます。
スタッフがこの人形カードを袋に入れて持ち、利用者のチーム代表とそれぞれ順番にジャンケンをします。ジャンケンに買ったら、人形カードを1枚もらえます。
ジャンケンの時には「さあ、○○チームの皆さん、次はお内裏様が欲しいですね!××さんを応援してくださいね!」などと声かけして、盛り上げていきましょう。
ホワイトボードに大きく「目」のような形に罫線をチームの数だけ書き、何ものっていない3段飾りに見立てて、そこに獲得したカードを貼っていきます。全員がジャンケンし終わった後、ひな飾りが一番きれいに並んでいたチームが勝ち!
ジャンケンに勝つことでチームに貢献できるので、自分の役割を楽しみ、役に立つ喜びを感じられるゲームです。ジャンケン自体はありふれた遊びですが、手の運動にもなり、一瞬で勝ち負けを判断するので判断力のトレーニングにもなります。
>無料で使えるひな祭りのイラスト「EVENTS Design」
3月6日頃:二十四節気 啓蟄(けいちつ)
虫(蛙や蛇)たちが冬ごもりから目を覚まし、暖かくなった土の中から顔を出す頃のこと。虫だけでなく、街路樹や野草を見ても、緑が鮮やかになってきたり、新芽が芽吹いてきたりと、この時期はあらゆる命が輝きだすように感じます。
【春を探そう!お散歩レク】
啓蟄を過ぎたら、天気の良い暖かい日を選んで、外の空気を吸うお散歩レクはいかがでしょうか。
歩ける高齢者にとっては、歩くことは何よりもよい運動になります。車椅子であっても、開放的な場所でさまざまなものを見たり聞いたりすることは、脳を広範囲に刺激し活性化させます。
目的を持たずにただ外出するだけではマンネリ化しがちですから、「春の花を探して春マップを完成させよう!」などとタイトルをつけ目的を持たせると、レクリエーション感が出てきます。
やり方はまず、手書きした近所の地図をコピーしてスケッチブックに貼り、一人ずつ配ります。筆記用具を持って30分ほど近所を散歩し、見つけた野草などを書き込んでもらいます。
施設に帰ったら、色を塗ったりしてマップを仕上げます。できあがったものを見せ合い、感想を言い合う時間を持つと良いコミュニケーションに。
遠出をすると準備が大変ですが、ご近所なら気軽に出かけることができます。それも難しければ施設内の中庭や、近くの公園などでも。スタッフが対応できる範囲で企画してみてくださいね。
3月14日:ホワイトデー
バレンタインデーの由来となったバレンタイン司教は、ローマ皇帝の命令に背いて、愛し合う男女の結婚式を行っていたために2月14日に処刑されてしまいます。処刑から1ヵ月後、その男女が改めて愛を誓い合ったという話から生まれたのがホワイトデーなのだとか。
現代の日本では、バレンタインデーのお返しに、クッキーやキャンディーなどのお菓子を贈るのが習慣になっています。
バレンタインデーに利用者やそのご家族からチョコをいただいたという介護職さんもいるかもしれませんね。そんなときはホワイトデーに、小さなお菓子やメッセージカードなど、ちょっとしたものを準備しておくのがおすすめです。ほんの小さなことで、相手との心理的な距離が縮まります。
3月27、28日:利休忌(りきゅうき)
千利休が秀吉の命を受けて切腹したのは1591年の2月28日。千家ではこの1ヵ月後を利休の命日として、表千家は3月27日、裏千家では3月28日にお茶会を開くのだそうです。
信念を貫いて死を選んだ先人の美学に思いを馳せながら、こんなゲームはいかがですか?
【利き茶ゲーム】
飲んだお茶の種類を当てるシンプルなゲーム。片マヒや車椅子などのハンデも関係なく、みんなで楽しめるのが良いところです。
やり方はまず、緑茶、ほうじ茶、玄米茶、麦茶など種類の違うペットボトルを用意し、ラベルが見えないように番号を書いた紙を巻いて隠しておきます。一人1個ずつ紙コップを配り、1番のお茶から少しずつ(底から1〜2cm程度の量)注いで、みんなで一斉に味見をします。
飲んだらそれぞれ答えを決めて発表します。これを繰り返して全部のお茶で利き茶をします。最後にペットボトルのラベルを外して、正解を発表! ワッと盛り上がることうけあいです。
チーム対抗戦にする場合は、チーム内で答えを相談して一つに決めるようにします。
「この色は絶対ほうじ茶よ」「いや〜、やっぱり麦茶のような気がしてきたね」などなど、仲間とのコミュニケーションが増えるのも魅力です。
3月27日:さくらの日
3×9(さくら)=27の語呂合せと、七十二候の「桜始開(さくらはじめてひらく)」が重なる時期であることから、この日はさくらの日。
この日の前後で、季節感たっぷりのおやつレクとして、桜餅を作ってみてはいかがでしょうか?
【桜餅を作って食べよう!おやつレク】
実は桜餅は、関西と関東で大きな違いがある食べ物です。関西の桜餅はもち米を粗く挽いた粉で包んでいるのでモチモチですが、関東はクレープのような皮でクルッと巻いたタイプで、別名「長命寺」と言います。
関東風の桜餅ならホットプレートで焼くことができるので、手軽に作れます。白玉粉、薄力粉、砂糖に水を加えた生地を薄く小判形に焼き、丸めたあんこをクルッと巻けばOK。
>【料理動画】足立敦子の簡単お菓子レシピ『関東風桜餅』【よみファクッキング】
食紅を少し混ぜるとかわいいピンク色になります。最後に桜の葉の塩漬けで巻いてくださいね。桜の葉は製菓材料のお店やネット通販で手に入ります。
少しくらい不格好でも、自分たちで作ったものはそれだけでおいしいもの。季節を感じられるだけでなく、集中力アップや手指の運動にもなるので、ぜひ挑戦してみてください。
3月のレクリエーション企画のポイント
冬の間ずっと寒さを避けて眠っていた命が、いっせいに目を覚ます3月。春を謳歌する花や虫たちに誘われるように、私たちもウキウキと心弾む季節です。
ですが老人ホームで暮らしていたり、ほとんど自宅から外出しない高齢者にとっては、春の訪れを感じる機会は意外に少ないもの。気候の良い日にはぜひお散歩レクなども取り入れて、春めく空気を吸いたいところです。
室内でのレクリエーションでも、春らしさを感じてもらえる演出を。たとえば、いつもの体操のBGMを春の曲に変えてみたり、いつも飲んでいるお茶を桜茶に変えるだけでも、とても喜んでもらえます。
高齢になれば桜を見ても、「来年は桜が見られるだろうか」「今年で見納めかもしれない」など、私たちとは違う感じ方をしているもしれません。
今、この春をなるべく深く味わってもらえるように、あなたらしい心配りでサポートしてあげてくださいね。