介護業界は社会的なニーズが高く、転職でも売り手市場。厚生労働省が公表している資料「介護労働の現状について」によると、コロナ禍であっても介護職の有効求人倍率は令和2年9月時点で3.82倍と非常に高く推移しています。ただ、職場の選択肢はたくさんあるものの、いざ転職すると「失敗した」と感じてすぐにやめてしまう人もなかにはいます。
では、どうして失敗したと感じてしまうのでしょうか。前述の資料などからその理由を探ってみました。失敗の事例を参考に、「ここに転職してよかった」と思える転職先選びに役立ててください。
転職後に「失敗した」と感じた理由は?
「失敗した」と思うということは、入社前の想像と違っていたということ。では、どんな点で「こんなはずじゃなかった」と感じることが多いのでしょうか。
人間関係が合わない
前述した資料の、令和元年度における「主な介護の仕事をやめた理由」で25.4%を占め、最も多かったのが人間関係の問題。入社したばかりの若い世代と以前からいる30代、40代の社員の世代間ギャップが大きい、どうしても合わない人がいるなど、人間関係はどちらが悪いと言い切れないことが多いものですが、新入りの転職者のほうが居づらさを感じ、辞めてしまうことが多いようです。
会社の理念と自分の考えが合わない
「主な介護の仕事をやめた理由」で、人間関係や結婚・出産に次いで21.6%と多かったのが、企業の運営のあり方への不満です。「利益を追求しすぎてついていけない」「求められるものが大きすぎる」など、会社が目指す方向性や求める人材と、自分が大事にしている考えや目指す働き方がずれていると、だんだん無理がでてきて長くは続きません。
条件だけで決めてしまった
「月収〇〇万円」「年間休日〇〇日」「家から近い」といった労働条件は、働く上でとても大切です。実際に、「収入が少ない」という理由で辞める人も15.5%と少なくはありません。ただし、条件ばかりにとらわれると「想像していた仕事内容ではなかった」と、別の面で希望どおりにいかず、仕事に満足感を得られないことも。また、「月収〇〇万円以上」と条件を先に絞ってしまうと選択肢を狭めることになり、良い出合いを見落とす場合があります。
キャリア形成への考え方が違った
キャリアアップしたいのにできない環境だった、または逆に、キャリアには興味がないのに無理に勉強や資格取得を強いられるなど、雇用者側と転職者との認識の相違が失敗例を生み出すこともあります。
転職で失敗しないためにやっておきたいこと
実際に入社して働いてみないと分からないこともたくさんあります。でも、入職前に理想と現実のギャップはできるだけ入職前に埋めておきたいもの。そのために、転職活動の段階でしっかりと準備・確認しておくことが大切です。
自分が求める働き方や仕事への考えを明確にする
まずはこれが一番大切です。「働きやすい職場」は、人によって違います。キャリアアップを考えているなら、多少忙しくなっても勉強のサポートをしてくれる施設が良いですし、家族との時間を大切にしたいなら、夜勤や残業のない施設が良いでしょう。ご自身が働くうえで何を大切にしたいかをいまいちど整理しましょう。
会社の考え方を確認する
企業は利益なしでは経営できませんが、利益ばかりにとらわれて介護サービスの質が落ちてしまっては本末転倒です。介護職に理想を持って真摯に取り組む人ほど、理想と現実のギャップに苦しむもの。介護施設の実績や理念などの情報を収集し、面接時にも介護方針について質問をしましょう。理念が実践されているかどうかは、見学時の雰囲気からも感じ取ることができます。
何社か比較する
条件面が合って「ここがいい」と思っても、その一社だけを見て決めるのではなく、いったん落ち着いて、いろんな事業所を探してみましょう。いくつかの施設を比較したほうが、施設ごとの違いやメリットが分かりやすくなります。
条件面以外にも目を向ける
「月収はいくら以上ほしい」「夜勤ナシがいい」など、希望条件を挙げればキリがありません。ただ、条件を増やせば増やすほど選択肢は狭まってしまいます。最初の段階では、視野を広く持ちましょう。たとえば月収は希望より1万円低くても、人間関係がよくて働きやすい環境なら、そちらのほうが転職としては成功といえるかもしれません。長い目で見て、ご自身が満足できる職場を選んでください。
見学する、人の意見を聞く
応募する前に施設を見学できる場合が多いので、その機会をぜひ活用しましょう。百聞は一見にしかず。見学すれば、現場で求められる能力や施設の衛生環境、職員の雰囲気もよくわかり、求人票だけでは見えないことも見えてきます。 身近に転職をした人がいたら、その先輩たちのリアルな成功談・失敗談を聞くのも参考になるでしょう。
施設形態による仕事の違いも念頭に
ひとくちに介護と言っても、働く施設の種類は「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」「グループホーム」「訪問介護事業所」「通所介護(デイサービス)」など、少し挙げただけでもたくさんあります。それぞれに特徴と役割があり、働く人の業務内容も変わります。
たとえば、通所介護(デイサービス)なら、利用者の方は比較的介護度が低く、元気な方が多くいらっしゃいます。身体介助のほか、レクリエーションで利用者様と交流をはかることも大事な仕事です。訪問介護事業所なら、自宅に訪問し一人で食事や入浴、排泄などの身体介助や生活援助を行います。
ご自身がどんな職場でどんな仕事をしたいのか、また、この先描きたいキャリアやワークライフバランスなど、希望に合った施設形態を選ぶことが大切です。
引く手あまたの介護職。転職先はじっくり選ぼう
超高齢者化社会を迎える日本。高齢者は今後さらに増えていくと予想されており、介護職員は引く手あまたです。将来にわたって重視されている職業なので、給与や休日などの労働条件も以前と比べるとずいぶん改善されてきています。前述した厚労省の資料で「現在の仕事の満足度」を見てみても、仕事の内容・やりがいの項目で満足度が高くなっています。さらに、人間関係や雇用の安定性、労働時間といった条件面への満足度も数年前と比較すると良くなっています。
働きがいのある介護という仕事。職場の環境が良ければ、生涯を通して充実した気持ちで仕事に向き合うことができるでしょう。だからこそ、職場は焦らずじっくり選びたいもの。まずはなりたい自分の姿を想像することから始めましょう。
ご自身で選ぶことが難しいなら、介護に強い、信頼できる転職エージェントを利用するのも一つの手です。かいごGardenでは、転職希望者の要望をじっくり聞いて、マッチする転職先を探したり、新しい職場になじむまでフォローアップしたりと転職のサポートが得意なエージェント。転職に失敗したくない方はチェックしてくださいね。