高齢になると自力で歩くことが難しい、危険が伴うといった理由で、車椅子を使うケースが多くなります。老人ホームやデイサービスなどの施設で行うレクリエーションも、車椅子の人とそうでない人が混じっていることが多いのではないでしょうか。
ただ、どちらかがどちらかの事情に合わせるレクリエーションだと、不公平感や不満が出てきて、心から楽しめないことも。障がいの箇所や度合いに関係なく、みんなが公平かつ満足に楽しめるレクリエーションができれば理想ですね。
実はふだんのレクリエーションも、ちょっとしたことに気をつけるだけで、車椅子の人の快適度や安心度がアップします。
車椅子の人もストレスなく楽しんでもらうためにスタッフが気をつけたいポイントや、おすすめレクリエーションのアイデアをご紹介していきます!
レクリエーションの準備をするときの注意点
レクリエーションが盛り上がって興奮すると、車椅子の人はずり落ちや転倒といった思わぬ事故が起こる可能性があります。進行役の他にサポートスタッフを数人配置して、安全面には十分に気を配りながらおこないましょう。
まず、車椅子を所定の位置につけたら必ずブレーキをロック。からだが左右に傾いていないかをチェックして、傾いてしまう時は畳んだタオルをお尻の下に入れるなどして調整します。
片麻痺がある場合は、麻痺のある側にからだが傾きやすいので、麻痺のある側の横や斜め後ろあたりにスタッフを配置して、サポートするようにしましょう。また左麻痺の方と右麻痺の方が並ぶと肘同士が当たりやすいので、あらかじめお互いの座席を離しておくなど配慮しましょう。
気をつけたいのは、床に落ちたボールやお手玉などを拾おうとしたり、輪投げなどのゲームに熱中し、目標物に近づこうと前のめりになる場合など。そんなときには近くにいるスタッフがからだを支えるか、「私が拾いますね」と伝えてから拾って渡すようにしましょう。
脳トレ系レクリエーション3つ
定番カードゲームを「ゆるルール」で
カードゲームといえば、トランプが手軽です。七並べや神経衰弱などの定番カードゲームを、利用者さんが楽しめるようルールを簡単にしてみましょう。ポイントは勝ち負けではなく、みんなでコミュニケーションを取りながら達成感や満足感を得てもらうことです。
・カンタン七並べ
全員にカードを配り、まずテーブルに7のカードを並べます。そこから順番に1枚ずつ出していくのではなく、みんなで協力して並べていきます。全部のカードがマーク通り、順番通りに並べば大成功です。
・カンタン神経衰弱
カードを合わせるとき、マークと数字の両方を合わせるのではなく、色が合えばOKにします。違う色のカードを裏返してしまったら、次の人と交代します。こうすることで難易度がグッと下がります。
簡単すぎるようであれば、マークが合えばOKにするなどルールを少し変えてみましょう。みんなの反応を見ながら臨機応変に変えてみてくださいね。
早口言葉で大笑い
「なまむぎ・なまごめ・なまたまご」や「赤パジャマ・青パジャマ・黄パジャマ」など、早口言葉に挑戦してみましょう。
最初にスタッフが見本として早口言葉を言いますが、このときははっきり、ゆっくり、ていねいに言います。言い終わったら「はいどうぞ!」と言って、利用者さんに繰り返して言ってもらいます。
見本を見せるはずのスタッフが、うまく言えなくてもつれてしまったりすると、それがまた笑いを誘います。最初にそのようにして笑ってもらうと、場の空気がほぐれ「さあ楽しもう!」という雰囲気になりやすいですよ。
歌・リズム系レクリエーション
つられず歌おう
スタッフが「せーの」と合図をしたら、2人1組で同時に違う歌を歌います。たとえば、ひとりは「ウサギとカメ」、もう一人は「浦島太郎」といった具合です。お互いに相手の歌につられてしまわないよう、最後まで歌いきれたら大成功!まわりの人の声援や手拍子も大切な要素です。
途中で止まってしまったり、リズムや音程がおかしくなっても気にしないで。最後まで歌いきったらみんなで拍手をすると、楽しさが倍増します。
楽器を使って合奏しよう
タンバリンやカスタネット、鈴などの簡単な打楽器を使って、歌に合わせて合奏してみましょう。思い思いに好きなタイミングで鳴らすだけなので、難しいことはありません。
全員分の楽器がなければ、曲が終わったときに交代して、みんなで使いましょう。楽器を持っていないときは手拍子で参加してもらいます。とてもにぎやかで、元気が出るレクリエーションです。
8・4・2・1のリズムでトントン体操
「富士の山」や「アルプス一万尺」「線路は続くよどこまでも」といった童謡歌に乗せて、8・4・2・1のリズムでからだをトントンと叩いていきます。富士の山を例にとると、以下のようになります。
「♪頭を雲の」に合わせて右手で右ももを8回軽く叩きます。
(あ〜〜たま〜を〜く〜もおの〜〜)
(● ● ● ● ● ● ● ●)(●部分で手を叩く)
「♪上に出し」に合わせて左手で左ももを8回軽く叩きます。
「♪四方の」で右手で左胸を4回軽く叩きます。
「♪山を」で左手で右胸を4回軽く叩きます。
「♪見お」右手で左肩を2回軽く叩きます。
「♪ろし」左手で右肩を2回軽く叩きます。
「♪て」両手でパンと手を叩きます。これを歌の最後まで繰り返します。
片麻痺の人は、動かせる方の手を使い、手拍子の部分は太ももを叩いてもらいます。ぴったりのリズムに乗せて、気持ちよくからだを動かせるレクリエーションです。
からだを動かすレクリエーション3つ
サッカーゲーム
2チームに分かれ、チーム同士が向かい合って座ります。ひとつのビーチボールを蹴り合い、利用者さんの列の隙間からボールが抜けたら得点が入るというゲームです。
足を使うのが難しい人は、新聞紙を巻いて作った棒を使って、手で参加してもOKです。
色分けビー玉
まず空の500mlのペットボトルを2本用意します。1本に赤ビー玉を3個と青ビー玉を3個、計6個入れます。もう1本のペットボトルを口の部分同士でつなぎ合わせ、ビニールテープでとめたものを準備しておきます。
ペットボトルを左右に傾けて、ビー玉を左右のペットボトルに3個ずつ色分けして揃えるゲームです。適度に偶然性もあるので、意外にスッと素早く完成することもあったりして盛りあがります。チーム分けしてリレー形式にしてみて、どちらのチームが先に揃えるかタイムを競うのも良いでしょう。
洗濯バサミで指先トレーニング
洗濯バサミで何かをはさむ動作は、指先の良いトレーニングになります。手に入りやすく、安価なのもうれしいですね。
いろいろな遊び方がありますが、その中でもよく出てくる遊び方は洗濯バサミタワー。カラフルな洗濯バサミをたくさん用意して、ペットボトルや空き缶などを台に、洗濯バサミをどんどんつけていきます。洗濯バサミの端にまた洗濯バサミをつなげて長くしたり、途中で枝分かれさせたりして楽しむゲームです。
制限時間内にいくつ付けられたかを競っても良いですし、色使いの美しさやバランスの良さを追求してもOK。利用者さんの状態に合わせて、遊び方をアレンジしてみてくださいね。
片麻痺の人も一緒に楽しむためのレクリエーションのコツ
片麻痺の人がレクリエーションに参加する場合は、動かしにくい方の手や足を使ってチャレンジしても良いですし、もちろん動かしやすい方を使ってもOKです。ご本人のやる気や意思を尊重することが大切ですので、それに合わせてサポートするようにしましょう。
また、からだが動かしにくい、言葉が出ないなどストレスを感じている片麻痺の人は、ゲームもうまくできないと、自分ができない現実を突きつけられるように感じてしまうことがあります。
ご本人が劣等感を持つことがないよう、偶然の要素が入るゲームや競わないゲームをうまく混ぜ、できないことは代わりの方法を用意しておくことがポイントです。
たとえばリズム系のレクリエーションでは、手拍子を使うことも多いのですが、片麻痺の人は手拍子が難しくなります。そんなときには太ももを手のひらで叩いてもらったり、鈴を渡しておいて鳴らしてもらうなどの配慮をしましょう。
また、審判や問題を出す役など、特別な役割をお願いするのも良いですね。審判用に「○」「×」の札を作っておけば、言葉が出にくい利用者さんでも、札をさっと上げるだけなので参加しやすくなります。「○○さんは知識が豊富なので、ぜひ審判をお願いします!」などとお願いすれば、ご本人の自尊心を高めてもらうことにもつながります。
「できない」と決めつけないことも大事
車椅子の人がいるからと、上半身のレクばかりをしていませんか?実は車椅子の高齢者でも、足がまったく動かないというケースは多くはありません。たいていは、少しは動くけれど立てない、歩けない、または危険だから、といった理由で車椅子を使用しています。
使わないからだの機能はどんどん衰えてしまうので、たまには足を動かすレクに挑戦してみるのもおすすめです。同じように、片麻痺の人も動かしやすい側だけを使うのではなく、あえて動かしにくい側を使うことも良いでしょう。
その際は、「全部じゃなくて、できるときだけでいいですよ」「やりにくかったら、これを使ってくださいね」といった言葉がけをしてあげることがポイントです。
「こんなの簡単!」と思えるくらいの難易度が、ちょっとチャレンジしてみようかな、という気持ちになってもらうのにちょうどよいかもしれませんね。