高齢者の褥瘡が治るケア、治らないケア。違いを知って完治をめざそう

使えるハウツー

体位変換を行う介護職員

褥瘡(じょくそう)とは、寝たきりなどで体の一部が長時間圧迫され、血行が悪くなることで起きる皮膚組織の損傷です。「床ずれ」とも言われ、皮膚が赤くなるのを手始めに、進行すると水疱ができたり皮膚が壊死して傷になってしまいます。

痛々しい傷ができると、介護者はついそこばかりを見てしまいがちですが、そもそも褥瘡は血行不良が原因。血は全身を巡っているものなので、局所的に手当てしていてもなかなか治らないことも・・・。

今回は介護者が日々のケアでできる褥瘡の治し方についてご紹介していきます。今までよかれと思ってやっていたことがダメだったり、知らないで手つかずにしていたことがあるかもしれません。ぜひチェックしてみてくださいね。

褥瘡リスクの高い人は?

介護用ベットのイメージ写真

ではさっそく、どのような人が褥瘡になるリスクが高いのかを見ていきましょう。

《褥瘡になるリスクが高い人》

  • 自力で体を動かせない人
  • 低栄養状態の人
  • 痩せていて骨が突出している箇所がある人
  • オムツを使用していたり、汗をかきやすいなど、皮膚が湿った状態になりやすい人
  • 拘縮(関節が固まって動かしにくい状態)がある人
  • 糖尿病、動脈硬化、心不全、骨粗しょう症の人
  • 抗がん剤等、薬による副作用で免疫力が下がっている人

まず自力で寝返りを打つことができない人、さらに低栄養の人は十分な注意が必要です。栄養が足りていないと皮膚がむくんで血流が悪くなりますし、筋肉や脂肪も落ちてしまいがち。痩せて骨が突き出た箇所があると、そこに圧力が集中してしまうため褥瘡リスクがさらに上昇します。

そして皮膚が湿った状態になりやすい場合も要注意。ふやけた状態の皮膚は、こすったり引っ張られたりといった軽い力でも傷つきやすくなっています。

拘縮により皮膚と皮膚が密着した状態になっている人も、乾燥を保つのが難しいため褥瘡になりやすくなります。また、関節が固まっていてとれる姿勢が限定されるため、同じ場所に圧力がかかりがち。そのため拘縮がある人は褥瘡に十分注意していくことが必要です。

褥瘡を予防する方法

移乗介助を行う介護職員

こまめな体位変換

同じ体勢をずっと続けていると、血行が阻害されて褥瘡ができやすくなります。2時間を超えない頻度で体の向きを変え、同じ体勢をとり続けないようにしましょう。また骨が突出している部分やすでに発赤が出ている部分は、マッサージをするとかえって悪影響があるため行わないようにしましょう※1

圧抜き

電動ベッドで頭部・背部や脚部を上げたり、車いすに移乗したりすると、ベッドや車いすなどの体と接している面にズレが生じて不快な圧力が発生します。圧抜きとは、その接地面から要介護者の体を一時的に離すことによって、ズレによる圧力を解放すること。
健康な人は無意識にもぞもぞと体を動かしてズレを解消できますが、動けない高齢者はズレが生じたままになり、不快なだけでなく褥瘡の原因になります。

滑りやすい加工を施した介護用グローブを着け、体とベッドや車いすの間に抜き差しするだけで一気に圧力を解放することができるので、体位変換や電動ベッドで背上げ・背下げをした際などは、必ずすぐに行いましょう。

ポジショニング

ポジショニングとは、自力で体を動かせない人に、クッションなどを活用して安全で快適な姿勢の保持を提供すること。褥瘡予防のポジショニングでは、広い接地面積で全体的・立体的に支えることがポイントです。
点など狭い接地面積で支えてしまうと、浮かせた部分は圧力がなくなりますが、そのまわりの接地点では逆に圧力が高まり、筋肉を緊張させ血行を阻害してしまいます。一見良さそうに思える円座クッションも、局所的に圧が高まり円状の不安定さからズレも加わるため、使わないことが推奨されています※2

ポジショニングを行った際は、無理な姿勢になっていないか確認することが大切。体が緊張していると血行が悪くなり逆効果ですので、筋肉が緩んでリラックスできているか必ず確認しましょう。

体圧分散寝具の使用

多層式のエアマットレスなどの耐圧分散寝具を使用し、一カ所にかかる圧力を分散して褥瘡を防ぎます。その際にはシーツをピンと張らないことに注意しましょう。

シーツがピンと張っていると体が沈み込まず、骨突出部の圧力が高まる原因に(ハンモック現象)。そのため多少の緩みを持たせてシーツを敷くことが大切です。またこのような高機能寝具を使用していても、4時間を超えない間隔での体位変換が必要です。

Q&AVol312シーツで褥瘡に?ポジショニングに関するQ&A(日本離床学会ホームページ)

皮膚を保護する

濡れたおむつはすぐに交換し、皮膚をふやけさせないようにします。また汚れたら皮膚をごしごしこすらないようにやさしく洗浄を。皮膚が乾燥しているのもよくないので、保湿クリームも活用していきましょう。骨が突出している箇所にはすべりを良くして褥瘡を予防するテープや、保護ドレッシング材(傷口を覆って保護するシート状の医療用材料)を貼ることも有効です※3

バランス良く食べる

低栄養状態では褥瘡になりやすくなります。米などの炭水化物、肉や魚、卵、大豆などのタンパク質、野菜や海藻、キノコ類に含まれるビタミン・ミネラル類を、偏りなくしっかり食べていきましょう。とはいえ食べられる量には限りがありますので、サプリメントや栄養補助食品も活用して、ムリなく栄養補給をしていきましょう。

※1~※3:褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)(日本褥瘡学会)

褥瘡の重症度

褥瘡防止の体位変換を行う介護職員

褥瘡の重症度は、皮膚の損傷の深さによって以下の4つのステージに分けられます。

  • 【ステージⅠ】皮膚に圧迫しても消えない赤み(発赤(ほっせき))がある
  • 【ステージⅡ】表皮剥離(薄皮がめくれた感じ)、水ぶくれ、びらん(ただれ)がある
  • 【ステージⅢ】皮膚組織の一部が欠けてなくなり皮下組織にまで及んでいる
  • 【ステージⅣ】皮膚組織の一部が欠けてなくなり筋肉や骨にまで及んでいる

NPUAP分類(米国褥瘡諮問委員会:National Pressure Ulcer Advisory Panelが提唱するステージ分類)

ステージⅠであれば、これ以上圧がかからないようにポジショニングやスキンケア、栄養管理を行うことで悪化を防ぎ治すことができます。ステージⅡ以上では傷口からの感染を防ぐため、消毒や抗生物質軟膏、滅菌ドレッシング材などを使用します。

ステージⅢ以上になると治癒するまでに時間がかかり、長く痛みや不快感に苦しむことになってしまいます。日ごろから褥瘡になりやすい部位をよく観察し、ステージⅠやステージⅡの段階で気づいて治療や対策を始めていくことが重要です。

褥瘡の治し方

医療的ケアとしては、ステージⅡまでの浅い褥瘡ならドレッシング材を使用して傷口を保護し、感染を防ぐ塗り薬や痛み止めを服用して治療していきます。ステージⅢ以上の深い褥瘡の場合は、傷の消毒や洗浄、壊死組織をメスなどで取り除く外科的措置を行うことも。状態によっては入院・手術が必要になることがあります。

どちらの場合も日々のケアとしてすることは、上記の褥瘡を予防する方法と同じです。体位変換やスキンケア、栄養補給などをコツコツ続けることが大切。

とはいえ、ケアをがんばっていてもなかなか治らないことがあります。そんなときに取り入れてみたい方法を2つご紹介しましょう。

コラーゲンの摂取

2015年以前は褥瘡に効果がある栄養素として亜鉛、アルギニン、アスコルビン酸が推奨されていましたが、臨床試験の結果、低分子化されたコラーゲン(コラーゲンペプチド)が褥瘡の改善に有効であることが新たに分かりました
コラーゲンペプチドは、飲み物に溶かせる粉末やゼリーなど経口で手軽に摂れるものがたくさんあるので、医師に相談のうえ試してみてください。

新田ゼラチンWeb研究室 ペプチド研究室(新田ゼラチンHP)

電気刺激療法

皮膚に微弱な電流を流すことで創の縮小が早まる電気刺激療法も有効なエビデンスがあり、治療法として推奨されています。電流の強さや流し方などの最適条件やメカニズムについては、現在も研究が進められているところです。

褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)(日本褥瘡学会)
参考:皮膚の構成細胞を活性化させ褥瘡治癒を促進させる電気刺激療法の確立(KAKEN)

介護者の観察眼がものをいう

笑顔の入居者と介護職員

褥瘡になりやすいケースや予防法、治し方についてご紹介しました。いったん褥瘡になってしまえば基本的には血行を阻害する要因を取り除き、皮膚が再生するのを待つ形になるため、どうしても時間がかかります。

介護者や介護職は医療行為はできませんが、代わりに体位変換やポジショニング、スキンケア、食事介助など日々のケアという重要な役目を担います。

ケアの際にはよく本人の様子や皮膚の状態を観察し、予防と悪化防止に努めましょう。変化や気になることはこまめに医師、看護師、リハビリ職に報告して、チームで褥瘡ケアを進めていくことが大切です。

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