快適な介護施設を目指して、進化する建築設計の工夫とは

使えるハウツー

介護施設の様子
みなさんは介護施設の建物にどんなイメージがありますか?無機質な病院のような施設をイメージする人が多いかもしれません。確かに持病を抱えていたり、足腰が弱かったりする高齢者にとっては医療用施設に準じた役割も介護施設にはあります。

しかし、最近は高齢者にとって終の住処となりうる介護施設を「住まい」として魅力的に建築する工夫が多々見られるようになっています。デザイン性、機能性ともにすぐれた介護施設には、どのような特徴があるのでしょうか。今回は事例をもとに紹介していきます。

介護施設の種類によって建物もさまざま

介護施設は要介護者が入所する保健施設や老人ホームから、自立した高齢者が生活を送るケアハウスやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)まで種類はさまざま。また、公的施設よりも民間施設のほうが工夫を凝らした建築が目立つようです。

特別養護老人ホーム

通称「特養」と呼ばれる特別養護老人ホームは、要介護度3以上の認定を受けた高齢者が入居し、食事や排せつ介助などの身体介護や介護サービスを受ける公的施設です。旧型の施設は4人部屋などの多床室が多く見られましたが、2002年にユニット型が制度化され、個室と10人程度で共有する生活設備がセットになった、いわゆる「ユニット型個室」で構成されるようになりました。公的施設であるため、簡素なつくりの建築物が一般的です。

介護老人保健施設

介護老人保健施設、通称「老健」は要介護度1以上の高齢者が在宅復帰を目指して暮らす公的施設です。身体介護や医療的管理、リハビリを受けながら、半年程度生活を送ります。特養同様にユニット型個室もあれば多床室の施設もありますが、リハビリ施設、機能訓練室が充実しているという特徴があります。

介護付き有料老人ホーム

介護サービスを提供する認可を受けた事業者が運営している民間の介護付き有料老人ホームは、介護認定されていない方も入居可能です。食事や生活支援、介護やリハビリなど入居者の状態に合わせたサービスを受けられます。民間施設であるため利用料金の幅は広く、施設の建築様式やデザインも多様です。

ケアハウス

60歳以上で自立生活に不安がある方をサポートするケアハウス。「一般型」と「介護型」のふたつのタイプがあり、利用可能条件がそれぞれ異なります。公的施設ではありませんが国や自治体から運営補助金が供給されるため、所得によって料金が変わり、比較的安価で利用できるという特徴があります。

グループホーム

要支援2以上の認知症高齢者が入居するグループホーム。10人未満の少人数で、スタッフによる介護サービスや機能訓練を受けながらも、作業を分担して共同生活を送る民間施設です。集団生活を考慮した開放的なスペースや共有空間を中心に設計されています。

これらの施設以外にも、比較的自立した高齢者対象の健康型有料老人ホームやサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)などさまざまな施設が存在し、それぞれの施設に求められる要求に応えるような設備や間取りが考慮された造りになっています。

特養に見る介護施設を建築する条件

介護施設を建てる際には、さまざまな基準が設けられています。

ここでは特別養護老人ホームを例に挙げて建築基準と設備基準の両面からご紹介します。

建築基準

特別養護老人ホームは、耐火建築物でなければなりません。しかし、入所者が日常生活を過ごす場所が2階や地下になかったり、火災時に協力を得られる体制が整っていたりすれば準耐火建築物でも認められます。そのほかにも、廊下の幅は1.8m以上、廊下やトイレへの常夜灯の設置、階段廊下への手すりの設置、また階段の傾斜を緩やかにすることなど、細かい基準が定められています。

設備基準

居室や静養室、食堂、浴室、洗面設備、トイレ、医務室、機能訓練室などの基準も細かく定められています。これらの設備のなかでも居室と静養室、食堂、浴室、機能訓練室は原則として建物の3階以上に設けられません。これは火災や地震発生時の避難経路を考慮しているからです。

また、居室は定員を1人とし、1人あたりの床面積は10.65㎡(収納設備を除き4.95㎡)以上が必要。寝台設備や避難上有効な1つ以上の出入口、ブザーの設置など細かい決まりがあります。このほか食堂の広さや、調理室での不燃材料の使用など利用者の安全と快適さに配慮した基準が設けられています。

介護施設建築の多彩なアイデア6例

車椅子を押して歩く介護スタッフ
利用者の事故を防止するために、オープンな空間を活かした介護施設もありますが、逆にプライバシーが守られず利用者が息苦しいと感じてしまうことも。

利用者にとってはもちろん介護スタッフも過ごしやすい介護施設づくりが求められている今、設計時に取り入れられている工夫を紹介します。

塩ビ系の床材は転倒事故防止に有効

足が不自由な高齢者が多く暮らす介護施設の床材には塩ビ系を選ぶと滑りにくく、転倒事故の防止になるため積極的に取り入れられています。ビニールは水をはじくため、トイレや浴室などの水回りにも最適。肌触りが柔らかいことから、裸足で歩いても不快感がありません。

ケアハウスやグループホームはデザイン性も重要

比較的自立した高齢者が暮らすケアハウスやグループホームのなかには病院のような閉塞感を感じさせない、おしゃれなカフェテイストの団らん室や温泉旅館のように高級感のある浴場が設計されている施設が存在します。シックでモダンな外観で、一見ホテルと見違えるような施設も増えてきています。

介護職員が働きやすい施設づくり

介護職員の身体的・精神的ストレスに配慮した工夫もあります。休憩時間はゆっくりと休めるよう、利用者から少し離れた場所に休憩スペースを設ける例も。介護現場の人手不足が叫ばれるなか、介護職員に配慮した施設づくりは今後の課題と言えそうです。

フレキシブルな居室設定でプライバシーを保護

「入所者やスタッフのプライバシーを守りつつ、コミュニティスペースも確保したい」「でもスペースには限りがある」そのような現場の声に応えてパーテーションを使い、個室にも多目的ホールにも対応できる介護施設を建築した事例もあります。これからは利用者の方々のさまざまなニーズに応えた個性豊かなスタイルの施設が増えていくでしょう。

近隣住民に配慮した圧迫感のない介護施設

介護施設にとって地域との共生は不可欠。普段から円滑な関係を築けるよう建物のつくりに配慮し、無機質なコンクリートではなく木材などの優しい素材を使い、いわゆる施設ではなく「住宅」のようなテイストの施設も登場しています。

自然を感じられる開放感のある施設は魅力的

介護施設を病院のように閉鎖的な空間にしたくはないということから、光や緑の存在を意識した施設もあります。中庭を作って散歩できるようにしたり、吹き抜けをつくって採光をよくしたり、頻繁に外出できない利用者に配慮したものになっています。

すべての人に寄り添った施設づくりが理想的

笑顔の施設利用者様と介護スタッフ
無機質なイメージが強い介護施設ですが、事例を見ると実に多様であることがわかりますね。利用者の安全や健康を第一に、清潔かつ機能的で、利用者もスタッフも気持ちよく過ごせる場所。

すべての人に寄り添うように配慮された介護施設なら、介護スタッフもよりやりがいを感じながら働けるはず。ぜひ介護施設で働く際の参考にしてくださいね。

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