国が力を入れるフレイル予防事業。その狙いと内容は?

使えるハウツー

フレイル予防事業とは

「フレイル」、それは要介護状態になる一歩手前の「弱っている状態=虚弱」のこと。高齢者本人や身の回りに高齢者がいる人にとっては、最近よく耳にするようになった言葉かもしれません。

要介護状態になってしまってから回復しようとするよりも、その手前の状態で気付いて対策をとれば効率が上がり、回復できる幅も大きくなります。そのため、いまフレイル予防が注目されているのです。

そこで厚生労働省が後押しして、各自治体で取り組んでいるのが「フレイル予防事業」です。そのなかではフレイルサポーターの養成、フレイルチェックの実施、結果を踏まえた対策のレクチャーなどが行われています。今回は、この予防事業にスポットを当て、その狙いやくわしい内容について掘り下げていきます。

フレイルとは

体力の低下による、手すりにつかまる様子

フレイルは、加齢に伴って体のあちこちで機能低下が進み、弱ってしまっている状態のこと。そのままにしていると、「要介護」の状態に進んでしまうことがあります。

要因として挙げられるのは、「栄養の不足」「筋肉量や筋力の低下=サルコペニア」など。サルコペニアによって高齢者の活動量が減ると、食欲が低下して低栄養に陥ります。それによってさらに体力が落ち、サルコペニアが進行する・・・この負のスパイラルで、次第に要介護状態に近づいていってしまうのです。

厚生労働省のホームページからは、フレイルのことがわかりやすく解説されたパンフレットが無料でダウンロードできます。もっと簡単に知りたい人向けには、動画も用意されています。よかったらこちらも参考にしてみてくださいね。

>パンフレット「食べて元気にフレイル予防」

https://www.mhlw.go.jp/content/000620854.pdf

>啓発動画(2分30秒)

https://www.mhlw.go.jp/content/000620862.mp4

フレイルのセルフチェック法

自分や身の回りの人がフレイルに当てはまるのかどうか、簡易的にチェックする方法をご紹介します。下記の項目で、当てはまるものにチェックを入れてみましょう。

□体重減少 (意識して減量しているわけではないのに、6ヵ月で2~3キロ以上体重が減った)

□筋力(握力)低下 (握力が、男性で26キロ未満、女性で17キロ未満)

□疲労感 (ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする)

□歩行速度の低下 (以前と比べて歩くのが遅くなったと感じる。1秒あたり1m未満)

□身体活動の低下 (軽い運動・体操をしておらず、定期的な運動・スポーツもしていない)

J-CHS基準
https://healthprom.jadecom.or.jp/wp-content/uploads/2018/04/cmed3204_312-320.pdf
より)

あくまで目安ですが、3つ以上当てはまった人は「フレイル」、1~2つ当てはまった人はフレイルの前段階である「プレフレイル」の可能性があります。

他には、フレイルと関係の深いサルコペニアチェック法「指輪っかテスト」も参考になります。両手の人差し指同士と、親指同士をくっつけてひとつの輪をつくり、利き足でない方のふくらはぎの一番太い部分を囲んで、すき間ができるようならサルコペニアの危険度が高いというものです。

ただしどちらも目安ですので、これだけで診断が下されるわけではありません。気になることがある場合は医療機関の受診をおすすめします。

フレイル予防は国家プロジェクト

イラストタイプの人口ピラミッド

国民の4人に1人が75歳以上になり、医療や介護の問題が噴出すると予想されている「2025年問題」。この問題への対策として、国が重要視しているのが「フレイル予防」です。2016年には閣議決定で、ニッポン一億総活躍プランのなかにフレイル対策の全国展開が盛り込まれました。

ではフレイル予防事業の実際の内容と展開について、簡単に説明していきましょう。活動のおもな担い手は、「フレイルサポーター」「フレイルトレーナー」と呼ばれる人たちです。地域に住む興味のある方はどなたでも、「フレイルサポーター養成研修」を受けてフレイルサポーターになることができます。また、「フレイルトレーナー」は選ばれた地域の専門職(理学療法士など)で、フレイルサポーター養成講座で講師役を務めます。

フレイルサポーターの役割は、各地域に密着して「フレイルチェック」を実施すること。参加者を募り、上でご紹介した指輪っかテストなどの簡易チェックや、滑舌等の測定、質問票の記入などを行います。最後にチェックの結果説明と、生活の上で気をつけることなどがレクチャーされます。活動は基本的にボランティアで、地域交流をかねて和気あいあいとした雰囲気で行われています。

大切なことは、フレイルチェックを一度きりで終わらせないこと。定期的にチェックを繰り返し、そのときの状態を確認していくことが大切です。またフレイルチェックで集められたデータは集積され、フレイル予防についての研究に使用されます。

そのほかの取組みとして、75歳以上が年に1回受けられる「後期高齢者健康診査」では、2020年度から問診の項目が見直され、フレイルに関する15項目の質問が盛り込まれました。

後期高齢者の質問票の解説と留意事項(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000557576.pdf

これによりフレイルのおそれがある高齢者を早めに見つけ出し、個別指導や医療機関の受診につなげることを目指しています。

コロナ対策と並行してフレイル対策を

運動で汗を流すシニア夫婦

国がフレイル予防事業に力を入れる背景には、健康な高齢者を増やすことで膨らみ続ける社会保障費をなんとか抑えようという狙いがあります。早くからフレイル対策に取り組んでいる自治体では、すでに要介護状態や死亡する人の割合が大きく減少するなど、目に見える成果も出ています。

順調に進むかに見えたフレイル対策ですが、今年は新型コロナウイルスの影響で高齢者が外出する機会が減ってしまいました。家に引きこもり誰とも会わない生活は、活動量が減りフレイルを招きやすい状態です。さらに、地域でのフレイルチェックや後期高齢者健康診査も、感染予防の観点から中止になることが相次いでいました。フレイルになりやすい条件が揃ってしまっていることが心配されます。

フレイルの予防には、「栄養」「社会活動」「運動」の3つが重要です。3食きちんと食べる、人の少ない公園を散歩する、混雑を避けつつ買い物に出かける、友人や家族と電話で話すなど、コロナ禍でも工夫次第でできることがあります。頭を柔らかくしてフレイル対策に取り組み、明るい時代を迎えられるようにしていきたいですね。

 

※参考:「神奈川県大和市における保健事業と介護予防の一体的な実施について」

https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000358693.pdf

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