物忘れに気付いたら、軽度認知障害(MCI)の検査を

使えるハウツー

頭を押さえる中年男性
「財布をどこにしまったか」ではなく「財布をしまったこと」自体を忘れていたり、会った人の名前ではなく、人に会ったこと自体を忘れていたり・・・身近な人に、そんな心当たりはありませんか?

年をとれば誰でも物忘れが増えてくるものですが、上記のように「体験そのものを忘れている」場合は注意が必要。心当たりがあるなら一度「認知症」や「軽度認知障害(MCI)」の検査を受けてみることをおすすめします。

軽度認知障害(MCI)は、認知症を発症する一歩手前の段階のこと。認知機能が低下しているものの、日常生活に大きな支障は無く暮らせているのが特徴です。この段階で気付いて対策をとれば、症状の進行を遅らせ、改善を目指すことも可能です。

検査が怖いからと避けていると、その間に認知症へと進んでしまうことも考えられます。まずは検査を受けて現状を把握し、適切な対策をとっていきましょう!

認知症予備軍=軽度認知障害(MCI)

軽度認知障害(MCI)とは、認知症になる一歩手前の段階で、認知症予備軍ともいわれています。体験したこと自体を忘れてしまう物忘れや、日付や曜日が分からなくなるなどの認知障害がありながらも、着替えや食事、排泄などの日常動作は自分でできている状態です。そのほか、以前より疑い深くなる、といった性格の変化があらわれることもあります。

この状態を放置すると、約1割の人が1年以内に認知症の発症に至るといわれています。逆に、この段階で気付き適切なケアを始めれば、正常な状態にまで回復可能であることも分かっています。「あれ、おかしいな」と思ったら、早めに検査を受け、結果にあわせて対策していくことが重要です。

>もっと詳しく知りたい!軽度認知障害と認知症との違いとは?

認知症診断は、質問形式の検査が中心

認知機能を調べる検査で主役になるのは、質問形式で行われる「神経心理検査」と呼ばれるもの。1974年に長谷川医師によって開発された「長谷川式認知症スケール」や、簡単な図形を描いてもらうテストなど、いくつか種類があります。

なかでも軽度認知障害の診断に広く使われているのが、脳の側頭葉の機能低下を調べる「ミニメンタルステート検査」。各質問の得点を合計し、27~30点では正常、22~26点では軽度認知障害の疑い、21点以下で認知症が疑われるという判定基準になっています。

>認知症診断MMSE

この検査で点数が悪かったからといって、必ず「認知症」や「軽度認知障害」と診断されるわけではありません。緊張や不安があったり、本人が望まずに検査を受けると点数も悪くなりがちですので、リラックスして臨むことが大切です。

このような神経心理検査とあわせて、頭部CTスキャンやMRI、脳血流シンチグラフィー(脳の血流を評価する検査)などの画像検査も行い、最終的にはそれらの結果を総合して診断されます。

軽度認知障害は、どこで検査できる?

女性が病院で検査を受けている様子
物忘れが気になるようであれば、まずはかかりつけの医師に相談を。既往症や服薬中の薬なども把握しているかかりつけ医なら、別の病気が原因で認知症のような症状が起きている可能性にも気付きやすくなります。

そのうえで、かかりつけ医から「もの忘れ外来」や「神経内科」を紹介してもらえばスムーズです。認知症の検査が受けられる診療科は、このほかにも「メモリー外来」や「老年期外来」など、いろいろな名称で呼ばれています。

かかりつけの医師がいない場合は、保健福祉センターや高齢者福祉課の窓口などに相談を。窓口や電話で「認知症の診療ができる医療機関を探しています」と伝えれば、適切な受診先を紹介してもらえます。

脳ドックを受けていれば認知症の検査になる?

「脳ドックを受けて異常は見あたらなかったから、認知症は心配ない」そう思って安心していませんか?実は、脳ドックで認知症の検査を兼ねることはできません。

脳ドックで調べているのは脳血管の詰まりやコブ、動脈硬化など、脳の血管や血液の状態です。これは脳梗塞や脳出血などの病気を未然に防ぐために行っている検査であり、認知機能を調べる検査は含まれていません。

そのため、脳血管の障害によって起こる「血管性認知症」の予防に役立つことはあっても、認知機能の異常や、認知症になりかけているかどうかを調べることはできないのです。

認知症や軽度認知障害についての検査が目的なら、専門の検査師や医師による神経心理検査を含む「認知症ドック」がおすすめです。脳ドックと混同しないよう、注意しておきましょう。

認知症は「軽度認知障害」のうちに早期発見を!

病院で検査を受ける男性と看護師
検査を受けた方がいいと分かってはいても、「もし認知症と診断されたらどうしよう・・・」という不安から、つい二の足を踏んでしまうこともあるでしょう。これはもしかすると、本人だけでなく介護する人も同じ気持ちかもしれませんね。

しかし、認知症は何の予兆もなく、いきなり発症するわけではありません。それ以前から何かしら「あれ?おかしいな」と感じることが起こっているはず。気になることがあれば軽視せず、できるだけ早期に検査を受けましょう。「軽度認知障害」のうちに発見できれば、ケア次第で回復も目指せます。

万が一すでに認知症の段階に入っていたとしても、ケアのスタートは早ければ早いほど有利。薬物治療で認知症の進行を遅らせたり、薬を使わない「回想法」や「作業療法」などでも、認知機能の改善が期待できます。また、今後について家族で話し合ったり、周囲も認知症について勉強するなど、早期であればあるほど備える余裕が生まれます。

認知症になっても、残された能力を使ってまだまだ人生を楽しむことは可能です。「もしかして・・・」と思ったら、迷わず病院を受診して検査を受けてくださいね。

参考文献:「20万人以上を診察した専門医が教える ならない・治す認知症」監修:長谷川嘉哉

この記事をシェア

  • Twitter
  • facebook
  • LINE

週間人気ランキング

かいごGarden noteとは?

かいごGarden noteは、介護の求人サービス「かいごGarden」が運営する介護の情報サイトです。
介護のお役立ち情報や、介護の仕事のお悩み情報などを掲載しています。