軽度認知障害(MCI)と認知症を予防する7つのヒント

使えるハウツー

和食を食べる様子
認知症の一歩手前の段階である軽度認知障害(MCI)。記憶が体験ごと抜け落ちる、ヒントを出しても思い出せないなどの物忘れは、もしかしたら軽度認知障害かもしれません。この状態を放っておくと、やがて認知症へと進行してしまいます。

軽度認知障害とその先にある認知症を防ぐには、生活習慣の見直しが有効です。日々何気なく行っている動作が、気付かぬうちに脳の機能低下を加速させてしまっていることも。しかしちょっとした手間をかければ、脳を刺激し機能低下を防ぐものに変えることができます。

今回は、認知機能の低下防止に役立つヒントを7つご紹介します。いつまでも元気でいて欲しい高齢者のケアに、ぜひお役立てくださいね。

ヒント(1)しっかり歯磨き

高齢者の歯磨きをサポートする介護スタッフ
認知症の予防法として、今もっとも注目されているのが口腔ケアです。歯周病菌が出す毒素が認知症の発症と深く関わっており、口の中を清潔に保つことが認知症や軽度認知障害の予防に効果的であることが分かってきました。

そこで注目したいのが日々の歯磨き。歯周病菌のえさとなるプラークをしっかり落とすためには、2~3分の歯磨きでは不十分です。ご本人が磨く場合も必要に応じてスタッフが後で仕上げ磨きを行い、フロスや歯間ブラシも使って歯と歯の間までキレイにしましょう。また定期的に歯科検診を受け、口腔ケアのプロにクリーニングしてもらうこともおすすめです。

ヒント(2)心地よい体験をする

認知症には、記憶を司る「海馬」と、その先端にある「扁桃核(扁桃体)」が深く関わっています。扁桃核は「好き」「嫌い」「心地よい」「不快」などの感情をコントロールしていますが、筋肉などと同じで使わないでいると衰えてしまいます。ふだんの生活のなかでドキドキワクワクといった感情や心地よさを感じられる体験をして、扁桃核を刺激することは脳の機能低下防止に役立ちます。

具体的には、本人が無理なくできることをお願いしてやってもらったり、好きなことにチャレンジしてもらえる機会を作りましょう。自分のしたことが褒められたり、相手に喜んでもらえることが扁桃核を刺激します。そのほかにもできる範囲で、見たいものを見たり、おいしいものを食べたりする体験もたくさんしてもらいましょう。

ヒント(3)頭を使う体操

手の体操をする利用者様と介護スタッフ
有酸素運動は脳機能を高める働きがあるという報告があります。高齢者の認知症予防という観点で見れば、軽い運動でも十分効果が見込めます。毎日のルーティンに体操や運動を組み入れて、楽しく体を動かしてもらいましょう。

この時さらにデュアルタスクとして、体と脳を同時に使うと脳血流がアップして認知症予防につながることが分かっています。簡単な体操に計算やしりとりなどを組み合わせて、楽しく頭を使いながら取り組んでみましょう。

論文「異なる運動強度の運動が高次脳機能に与える影響について」
https://ci.nii.ac.jp/naid/130005016734

ヒント(4)睡眠を大切にする

睡眠時間は少なすぎても多すぎても、認知症リスクが上がることが分かっています。リスクが一番低いのは睡眠時間が5~7時間の人で、5時間未満の人はその2.64倍、10時間以上の人は2.23倍も認知症になりやすいという研究結果※1も。認知症リスクを下げるには、6時間前後の睡眠が望ましいようです。

また睡眠時に呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群も、軽度認知障害などのリスクを上げるという報告※2があります。いびきが大きい、昼間に眠気がある、寝ているときに息が止まるといった場合は、放っておかず早めに治療しましょう。

※1:Ohara T,et al.J Am Geriatr Soc.2018 Jun 6. doi:10.1111/jgs.15446
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jgs.15446
※2:JAMA. 2011 Aug 10; 306(6): 613–619. doi: 10.1001/jama.2011.1115
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3600944/

ヒント(5)主食だけメニューを避ける

炭水化物ばかりを摂取してカロリーオーバーになっている状態は、軽度認知障害や認知症のリスクを高めるという報告※があります。「ご飯大盛りの丼物」「菓子パンだけ」「ラーメン+チャーハン」といった炭水化物主体のメニューは、料理が苦手だったり、経済的な問題がある時などに選びがちです。訪問介護などで利用者様がそういった食生活をされている場合は、食事面でも周囲がサポートしていきたいところです。

具体的にはご飯やパン、麺などの主食を少し控え、代わりに肉・魚・卵・豆などのタンパク質を増やしたメニューにすること。玄米食や全粒粉パンなどを取り入れるのもおすすめです。ご本人が用意するのが難しければ、宅食サービスの利用や、野菜の副菜を小分けにして作り置きするなど、対策を考えていきましょう。

※Journal of Alzheimer’s disease : JAD. 2012;32(2);329-339. doi: 10.3233/JAD-2012-120862.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3494735/

ヒント(6)腸内環境をよくする

認知症の人の腸内細菌を調べたところ、認知症でない人に比べて「バクテロイデス」という腸内細菌が少なく、代わりに種類不明なその他の細菌が多かったという特徴が見つかりました。この特徴は認知症の前段階である軽度認知障害にもあてはまり、そのリスクは約5倍にもなるとのこと。くわしいメカニズムはまだ分かっていませんが、腸内の細菌状態が脳の炎症を引き起こすのではないかと考えられています。

腸内環境を改善して軽度認知障害や認知症の進行を防ぐため、ヒント5と同様に周囲がサポートしていきましょう。野菜やきのこ、海藻類、ヨーグルトや納豆などの発酵食品などを、日々の食事メニューに取り入れることがおすすめです。

※国立研究開発法人国立長寿医療研究センター
https://www.ncgg.go.jp/hospital/monowasure/news/20191218.html

ヒント(7)よく噛む

噛むことは脳血流をアップさせる、いちばん簡単で有効な手段。日本顎咬合学会によると、一回噛むごとに脳に3.5mlの血液が送られるのだそうです。毎日の食事が柔らかいものばかりになっていないでしょうか。食事はゆっくりとよく噛んで食べていただき、脳の血流を高めてアルツハイマー型認知障害の原因とされるアミロイドβを追い出していきましょう。

早めの予防が明暗を分ける

笑顔の高齢者と介護スタッフ
軽度認知障害(MCI)は、記憶障害などが始まっているものの日常生活にはまだ支障がない状態です。訪問介護などで「もしかして」と感じることがある、というヘルパーさんも多いかもしれません。

利用者様に気になる症状が出ている場合は、これ以上認知機能の低下が進まないよう、周囲と連携をとりながらサポートしていきたいですね。認知症へと進行してしまえば、ご家族の負担も増し、在宅生活している方はそれができなくなってしまうかもしれません。改善が見込める軽度認知障害のうちに、そしてその前段階でも、予防に役立つ行動を始めていきましょう。

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