民間の介護保険で介護のリスクに備えられるって本当?

使えるハウツー

介護保険
日本には40歳以上の被保険者(保障を受けられる人)が月々一定の介護保険料を納め、いざ介護が必要となった際に介護サービスを受けられる「公的介護保険制度」があります。自宅や施設で介護サービスを1割から3割の自己負担のみで受けられます。一方、要支援・要介護認定を受けたからといって無制限にサービスを利用できるわけではなく、身の回りのことすべては公的介護保険制度でカバーできません。そのため「十分な介護サービスを受けられるよう、若い時から民間の介護保険に加入しておきたい」と考える人も。

しかし、民間の保険に加入しても公的介護保険の範囲でまかなえた場合、余分な出費になってしまいますよね。民間の介護保険加入を考えるときには、公的介護保険で受けられるサービス内容や金額を理解したうえで、自分にとって必要な出費かどうか検討しましょう。今回は、その判断の参考になる情報をお伝えしていきます。

公的介護保険で受けられるサービス

要支援認定や要介護認定は、公的介護保険のサービスを受けるうえでの必須条件です。支援や介護が必要な度合いに応じて「要支援1~2」または「要介護1~5」に分けられ、要支援認定者は介護予防サービスを、要介護1~5の人は在宅や施設で介護サービスを受けられます。具体的なサービス内容について見ていきましょう。

介護予防サービス

排せつや食事は自分ででき、現状は介護の必要こそないものの、将来要介護認定を受ける可能性があり、日常生活に支援が必要とみなされるのが要支援状態です。要支援1は社会的支援、要支援2になると1よりもわずかに生活能力が低下し、さらなるサービスを受けられます。

要支援認定を受けるとケアマネジャーと一緒にケアプランを作成し、デイサービスなどの介護施設に通って生活に必要な支援を受けたり、専門的なリハビリも受けられます。また、ホームヘルパーが居宅を訪れ、身体介護や生活支援を受けることも公的介護保険の範囲内で可能です。要支援2であれば少人数が共同生活を送る住居で、食事や入浴の介助、リハビリサービスを受けられ、要介護状態になるのをできる限り防ぐことを目的とした「介護予防認知症対応型共同生活介護」を利用できます。

介護サービス

「介護を要する状態にある」とみなされることで要介護認定を受けられます。要介護認定も要支援認定と同様、数字が大きくなるほど支援度が高くなります。

要介護認定を受けることで、自宅や施設で在宅介護サービスを受けられたり、施設に入所して日常生活から介護までサポートしてもらえたりします。看護師や理学療法士などによる看護や機能訓練も受けられるため、運動能力の向上を期待できるでしょう。在宅介護は入浴介助やリハビリ、生活指導などを受けられ公的介護保険では4人中3人が利用している主要なサービスです。要介護度が高くなると老人ホームやグループホームなどに入り、日常生活全般のサポ-トを受けることになります。

介護サービスに必要な費用と自己負担

高齢者とお金
要支援や要介護認定を受けた方が介護保険サービスを利用すると、介護事業者に対して「介護報酬」が支払われますが、これは介護給付と自己負担額のふたつで成り立っているものです。ほとんどの利用者の自己負担額は、介護保険サービス利用料の1割と決して大きくはありません。しかし、2018年8月以降、年金収入+その他の合計所得金額が280万円以上340万円未満の方は自己負担割合が2割、340万円以上は3割と収入によって引き上げられました。

自力での歩行や立ち上がりが困難な要介護3以上の状態になると施設に入所しやすくなりますが、利用時に支払う施設サービス費はその体制や部屋のタイプなどによって変わってきます。要介護度が高いほど自己負担額は高くなる傾向にあり、個室を選ぶとさらに負担が増すことに。料金設定は施設ごとで異なるので、事前確認をしたうえで介護プランを立てる必要があります。

公的介護保険で負担されないもの

介護サービスにかかる費用の多くは公的介護保険でカバーされますが、食費や日常生活費、施設に通う交通費、また杖や補聴器、車いすなど福祉用具費の購入費は基本的に自己負担です。住宅内に手すりをつけるなど、バリアフリー改修にかかる費用も個人で捻出する必要があります。

ただし、救済策がまったくないわけではありません。福祉用具の購入や住宅改修時には一旦全額立て替え払いをしますが、あとから費用全額の7~9割が戻ってきます。それ以外にも要支援者・要介護者の所得などに応じた負担軽減制度が設けられているので、お住まいの自治体のホームページなどで確認してみましょう。

民間の介護保険の概要

生命保険文化センターが行った「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」によれば、民間保険における介護保険・介護特約の加入率は14.1%。決して高くはありませんが、公的介護保険の自己負担割合が増えるにつれて、今後は加入者が増えるかもしれません。

民間介護保険を大きく分けると、要介護認定を受けてから保険料を受け取るものと、まとまったお金を一度に受けられるものの2種類。保険期間は、終身型と一定年齢に達すると受け取れる定期型のいずれかです。月々の保険料は40代で加入すると3,000円程度ですが、加入年齢が上がるにつれて高くなり、70代で加入するとなれば1万円以上かかることも。公的介護保険料の月額平均5,500円と合わせるとまとまった金額になるので、40代から加入を検討するのも良いでしょう。介護保険の給付金はおむつ代や日常的な介護費用、介護をサポートしてくれる家族への御礼などをカバーできます。

介護の平均的な費用と民間の介護保険が必要な人

「平成30年度生命保険に関する全国実態調査」では、世帯主または配偶者が要介護状態になった場合、公的介護保険の範囲外で必要となると想定している月々の平均資金は16.6万円。介護が必要と考える期間の平均は167.2か月ですから、16.6万×167.2か月=約2,700万円が必要になってくると考えている人が多いようです。これは、まだ介護に直面していない段階での意識調査ですが、老後・介護への不安があらわれた数字です。

要介護状態になったときに、十分な貯蓄があれば安心ですが、現実的にはかなり高いハードルかもしれません。貯金がない方や、頼れる家族がいない方は、民間の介護保険への加入を検討してみると良さそうです。

また、公的介護保険の受給対象は65歳以上であり、64歳以下で要介護状態になっても対象外になります。万一の将来の事故や病気に備えて、民間介護保険に加入しておくのも良いでしょう。

平成30年度生命保険に関する全国実態調査

公的・民間介護保険は正しく理解して賢い利用を

高齢者が相談している様子
公的介護保険制度は、社会全体で高齢者の介護を支えあうという理念のもと2000年に創設された比較的新しい制度です。見直しや改善が進められていますが、今後日本の高齢化社会が進むことで、保障額が減ったり介護を受ける期間が長期化して生活が苦しくなったりする可能性があります。そんな時代の到来を懸念して、民間の介護保険への加入を検討してみるのは当然かもしれません。終身型を選択すれば生命保険代わりにもなります。

家庭ごとに事情はありますが、定期的なライフプランの見直しが、ゆとりのある老後のカギになるかもしれません。介護を意識し始める40~50代の方は、一度検討してみてはいかがでしょうか。

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