梅雨から夏をおだやかに乗り切る!高齢者介護のコツ

使えるハウツー

紫陽花とてるてる坊主梅雨から夏場にかけては、湿度と気温が急上昇する季節。介護施設を利用する高齢者は、体温調節能力が低下していることも多く、熱中症をはじめとしたトラブルに見舞われやすくなります。

とくに今年の夏は、新型コロナウイルスの影響で、スタッフも利用者様もマスクをして過ごす時間が増加。マスクで熱がこもり、熱中症になりやすくなることが心配されています。

そこで今回は、ケアする人・される人の双方に役立つ、熱中症予防のコツを中心にご紹介。そのほか、皮膚のトラブルや睡眠時に気を付けることなど、夏の高齢者ケアで起こりやすい問題についても注意点をお伝えします。

今年の夏も暑くなりそうですが、できるだけおだやかに気持ちよく過ごしていただけるよう、ぜひお役立てくださいね!

脱水予防と感染予防、どう両立する?

高齢者が水分補給をしている様子

高齢者のマスクの使い方

新型コロナ対策のため、介護現場ではマスクが必須です。しかし、マスクをつけていると呼吸のしにくさや熱がこもることによって、体に負担がかかります。喉の乾きにも気付きにくいことから、脱水症になりやすいことが心配されます。

元気なお年寄りがレクリエーションで活発に会話を交わすような場合は、ぜひマスク着用をお願いしたいところですが、人が密集せず、会話が少ない場合は状況に合わせて判断しましょう。

また、心肺機能が低下している高齢者の場合は、長時間のマスク着用が体に負担をかけることも。感染症対策が必要な場合は、呼吸をさまたげないフェイスシールドが適切なこともあります。判断に迷うときは、かかりつけの医師に相談してみると良いでしょう。

脱水を防ぐ水分補給のポイント

高齢者は体に蓄えておける水分量が少ないうえ、持病や薬の影響などで、体内の水分が不足する脱水状態になりやすくなっています。これを防ぐには、こまめな水分補給が欠かせません。

水分をスムーズに補給してもらうには、入浴前とお風呂上がり、おやつの時間、トイレに立つたびなど、喉が渇いていなくても定期的に飲み物を飲んでもらうことが大切。食事に含まれている水分も重要なので、食事も抜かないようにしましょう。

飲み物はお茶だけでなく、コーヒーや紅茶など、本人の好みを考えて数種用意しておくと、口にしてもらいやすくなります。カフェインが含まれていても大量でなければ問題ありませんが、スポーツドリンクは糖分が多いので、過剰摂取にならないよう注意しましょう。

その他、おやつにゼリーや水ようかん等、水分をたっぷり含んだものを提供するなどの工夫も有効。食欲がない、飲み込むのが辛いという方には、効率よく塩分と水分が補給できる経口補水液に、とろみをつけて飲んでもらうのも良いアイデアです。

エアコンの使い方

例年、エアコンの設定温度は28度が推奨されていますが、今年の夏は新型コロナ対策で、換気もしなくてはなりません。窓やドアの解放によって部屋の温度は上がりがちになるため、エアコンの設定温度は例年より低めにしておくのがおすすめです。また、サーキュレーターや扇風機を併用し、室内の空気が停滞しないように注意しましょう。

介護スタッフのマスクの使い方

高齢者のケアにあたる介護スタッフは、常にマスク着用が求められます。しかし、入浴介助などで汗だくになる場面ではとくに、熱がこもって暑さを感じることでしょう。介助に入る前後には積極的に水を飲み、たくさん汗をかいた場合は塩飴などで塩分とミネラルを補給しましょう。職場で許可されるなら、排気弁付きマスクを使用するのも有効です。

室内でも、周囲に人がおらず、換気が十分ならマスクを外して休憩しても大丈夫。屋外なら周囲2メートル以内に人がいなければ、マスクを外してもOKということです。かしこく休憩をとり、体への負担をやわらげましょう。

>「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント(厚生労働省)

そのほか、夏の介護の注意点

日光を浴びる高齢者

蒸れによる肌トラブル

梅雨から夏場にかけては、高い湿度と汗による蒸れで皮膚がふやけバリア機能が低下し、オムツかぶれや床ずれが起こりやすくなります。オムツが汚れていなくても定期的に交換し、かぶれを防止しましょう。拭き取りは肌に刺激を与えないよう、ゴシゴシこすらず、やさしくなでるように。最後に撥水クリームなどの保護剤を塗っておくと、ふやけの防止になります。

床ずれは一度起きてしまうと治りにくいため、予防が重要。清拭を行ったら最後に乾いたタオルでしっかり水分を拭き取り、スキンローションや保湿剤を塗布して皮膚を保護するようにしましょう。

睡眠の質の低下

長雨や暑さで外出の機会が減ると、昼間の刺激や運動量が減少してしまいます。夜も蒸し暑くなってくるため、夏は睡眠の質が低下しがちな季節。夜中に何度も目が覚めると、睡眠の満足度が下がりQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)が低下してしまいます。老人ホームなどの介護施設では、夜間はスタッフが手薄になるため、利用者様が眠れないことは介護スタッフ側にとっても大きな負担です。

夜にしっかりと睡眠をとるためには、朝は日の光をあびて、眠気をさそうホルモン=メラトニンの分泌を抑制することが大切です。天気が雨や曇りであっても、窓際で光を浴びるだけで十分効果が期待できます。朝は部屋のカーテンを開け、外の光を部屋に取り入れるようにしましょう。

メラトニンは、良い睡眠のためには不可欠なホルモン。夜になるにつれてだんだんと分泌が増え、夜中に最大となります。メラトニンをたくさん分泌させるためには、その元となるセロトニンというホルモンを日中にしっかり蓄えておく必要があります。昼間はセロトニン、夜間はメラトニン、そして朝は太陽を浴びてメラトニンの分泌をおさえる、この流れが良い睡眠をもたらします。

また、日中はリズム運動を取り入れ、セロトニンの分泌を促しましょう。セロトニンの原料になる栄養素は、肉や魚、大豆製品や乳製品などに豊富。バランスの良い食事を摂り、レクリエーションで楽しく体を動かすようにしましょう。

カビ・ダニによるアレルギー症状

湿度・気温が高い梅雨から夏にかけては、カビやダニが急激に増える時期。これらがアレルゲンとなり、ぜんそくや鼻炎、アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が増加します。

これを防ぐには、こまめに掃除機をかけたり、換気を良くしたりして湿気をためないこと。空気清浄機の使用も有効ですが、定期的なフィルター掃除は忘れないようにしましょう。

気圧の変化による体調不良

低気圧が続く梅雨時期は、気圧の変化による体調不良が出やすい季節です。自律神経のバランスが崩れることで、頭痛や関節痛、体のだるさなどの不調を引き起こすことを「気象病」といいます。最近の調査では、発達した低気圧の通過後に認知症のBPSD(周辺症状)が悪化したという報告{※}もあり、認知症との関連も指摘されています。

高齢者の様子を観察して、天気によって調子が悪そうなら気圧の変化が関係しているかもしれません。施設では、天気予報を見て準備や心づもりをしておくと良いでしょう。

一般社団法人日本認知症予防学会
【症例報告】認知症周辺症状に気圧変動による影響が示唆されたアルツハイマー型認知症一例

介護スタッフ自身の体調管理も大切

笑顔で前を向く介護スタッフ
ジメジメと蒸し暑い季節は利用者様の体調管理も大変ですが、それ以上にスタッフ自身の体への負担も大きいですね。暑さで夏バテしてしまわないように、自らの体調管理も大切な仕事です。

疲れがたまっていたり睡眠不足だったりすると熱中症になりやすくなるので、あまり根をつめずしっかり休息をとるようにしましょう。朝食抜きや二日酔いも熱中症リスクが高まるので、翌日がお仕事ならお酒はほどほどにしておくのがオススメです。

あなたの笑顔で元気が出るという利用者様がたくさんいます。暑さに負けず、しっかり休んで栄養をとり、お仕事頑張ってくださいね。

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