介護老人保健施設(老健)は、特別養護老人ホーム(特養)のような終のすみかではなく、「在宅復帰を目指し、一定の期間で退所する」ことが前提の施設です。また、多床室(4人部屋)が多く、サービスの対象者は特養ほど介護度は高くない傾向にあります。
慣れない生活のなかでのリハビリ訓練は、利用者さんにとってはとてもハードでストレスもたまりがち。そんななかでレクリエーションは機能訓練だけでなく、生活にメリハリをつけたり、こころを和ませたりする役割も期待されています。そこで今回は、からだの機能回復に役立ちつつ、楽しく盛り上がれるレクリエーションのアイデアをご紹介します。
老健で過ごしたひとときが有意義なものになり、今後の在宅生活にも前向きになれるようなレクリエーションを企画・実行していきましょう。
みんなで楽しむレクリエーション5つ
1.座ってボクシング
座った状態で両手をグーにして、胸の前に構えます。音楽に合わせて、交互に前にパンチを繰り出します。腕の筋力が上がり、長めに行うことで有酸素運動にもなります。気分が高まる音楽に合わせてパンチを連発すると、よいストレス解消になります。
2.足でつかめる?
足の指でつかめるもの、たとえばペットボトルのフタやピンポン球などを用意します。裸足で座って、足の指でそれらをつかみ、隣の箱に移し替えるというレクリエーション。片足ずつ行うと、左右差があることに気づくことも。やりやすい方の足でやってもいいですし、やりにくい方の足でがんばってもOK。1回ずつ小道具の消毒は必要になりますが、足裏感覚が刺激され、足全体の筋力が上がるおすすめレクリエーションです。
3.背中に書いて伝言ゲーム
数人で一つのグループを作り、背中に文字を書いて伝言ゲームをします。このときお題はカタカナ2〜3文字の簡単な単語にするのがコツ。ふだんあまり使わない感覚を刺激でき、集中力のアップにつながります。ときにはまちがえておかしな単語を答えてしまったりして笑いが起こることも。みんなで笑えばストレス解消にも役立ちます。
4.ジェンガ
2人以上で行うゲームです。木のパーツを四角柱の形に積み上げたところから、1人1つずつ抜いていき、抜いたパーツを上に積み上げます。何周かするとパーツが抜けて空洞だらけになり、グラグラとしてきてスリルも満点。集中力のアップやバランス感覚、コミュニケーションの向上が期待でき、スタッフさんの手間もかからないおすすめレクリエーションです。
5.紙コップを棒でシュート
紙コップをいくつか用意して、利用者さんが座っている足元にバラバラに置きます。それを手ではなく、新聞紙を丸めて作った棒で拾い上げ、そのままカゴに向かってシュートしてもらいます。たくさんカゴに入れた人の勝ち!紙コップの色などで、点数を決めておいても良いですね。
自分のペースで楽しめるレクリエーション3つ
6.数独(すうどく)
数字を使ったパズルゲーム・数独(すうどく)は、ルールがシンプルで始めやすく、鉛筆さえあればいますぐできる手軽なゲームです。数独に親しむと、記憶力や頭の回転力がアップするので、認知症予防の脳トレにぴったりですね。
老健の利用者さんのなかには、骨折や脳卒中などでリハビリをしており、認知レベルの高い方もたくさんいらっしゃいます。「童謡やリズム体操はちょっと…」という方にも、自尊心を損なうことなく楽しんでいただけるレクリエーションです。無料で印刷できるサイトもたくさんあるので、手軽に準備ができるのも嬉しいポイントです。
7.クロスワードパズル
こちらも手軽にできる代表的な脳トレ。ヒントの文章から、当てはまる答えを連想するプロセスが脳を活性化します。1人でできるので、集団でのレクリエーションになじめない方にも参加していただきやすいというメリットも。数独と同じく、無料で印刷できるサイトを利用すれば、準備に手間も費用もかかりません。
8.トランプタワー
トランプカード同士を立てかけあっていくつかのMが連なった形にし、その上にトランプカードを渡します。またその上にバランス良くMの形に積み上げていき、タワーを作るゲームです。難易度が高く、障がいのない人でも難しいもの。「簡単なレクリエーションだと面白くない」と感じている利用者さんにも、これなら楽しみながら挑戦してもらえるのではないでしょうか。
リラクゼーションのレクリエーション2つ
9.目元ぱっちり体操
からだのリハビリは、利用者のみなさんが日々がんばって取り組んでおられます。レクリエーションでは少し趣向を変えて、目に着目。目元ぱっちり美人、イケメンを目指してみませんか?
ぎゅっと目を閉じたり開いたり、ゆっくり眼球を左右に動かしたり、寄り目にしたりして目の筋肉をトレーニングします。仕上げにおでことこめかみをていねいにマッサージ。鏡を用意しておき、ビフォーアフターを確認してもらうのも楽しそうですね。
10.肩こり解消プログラム
日々の疲労がたまって、肩や首回りがこって痛む・・・そうなると気持ちまで沈みがちですね。レクリエーションで肩こりをスッキリ解消できれば、利用者さんから喜んでもらえます。
片方の肩を上げて耳につけ、脱力する動作を左右交互に10回ほど。次に両肩をすくめてから肩を落として脱力する動作を10回ほど。手先を腕の付け根につけ、肘を内側・外側に回す動作などは手軽にでき、効果も高い体操です。一緒に働く理学療法士さんなどの専門家に、オススメの肩ほぐし体操を教えてもらうのもいいですね。
最後は目を閉じて、首をぐるっとまわしてリラックス。利用者さんに見本を見せるうちに、介護スタッフさんたちも自分の肩こりケアができてしまうかもしれませんね!
これからの生活を前向きに
老健に入居する利用者のみなさんは、突然の病気やケガで大きなストレスを抱えている人が多いもの。障がいのせいで生活が激変すると、「これからどうなるのだろう…」「自分はやっていけるのだろうか…」などと、不安でいっぱいだと思います。施設でのレクリエーションを通じて、少しでも気持ちを和らげてもらえるといいですね。
新たな趣味を見つけたり、仲間と笑いあったりすることは、今後の生活へ前向きに取り組むための力強いサポートになります。できることをたくさん見つければ、自分に自信を持つことにつながります。ぜひ、それを応援できるようなレクリエーションを企画・実行していきたいですね。