
介護職員が作成する自己評価シートは、自分の働きや得られた成果を振り返り、キャリアアップを目指すための大切なツールです。
上司や管理者から提出を求められた際に「何を書けばよいのか」「自分の努力をどのようにアピールすればよいか分からない」などと悩む方も多いのではないでしょうか。 この記事では、介護職員が作成する自己評価シートの基本構成やキャリア段階別の例文、説得力を高めるための書き方のポイントなどをまとめました。
介護職における自己評価シートの目的
介護職における自己評価シートには、自身の成長を促進して、成果に応じた正しい人事評価を受ける目的があります。
課題や今後の目標を明らかにする
数ヶ月ごとに自己評価シートを作成することで、日々の業務を振り返り、客観的に見つめ直すことができます。
「何ができるようになったか」「何が足りないか」を整理するプロセスを通じて現状の課題を明確にすることで、次に進むための目標を具体化できるようになります。これにより、スキルアップの促進や仕事に対するモチベーションの維持・向上につながります。
正しい人事評価を受ける
自己評価シートは、自身の努力・成果を管理者や人事担当者にアピールする資料にもなります。介護事業所のなかには、職員が作成した自己評価シートの内容を考慮して、昇進や昇給の判断を行っている職場も多くあります。
日々のケアで培ったスキルや取り組みの成果、チームに貢献した事実などを客観的に示すことで、納得感のある正しい人事評価を受けることができます。
介護職員の自己評価シートに何を書く?基本の構成を理解しよう
自己評価シートを作成するには、基本の構成に沿って情報を分かりやすく整理することが必要です。一般的に、以下の5つの項目で構成されています。
①個人目標の達成状況
前回設定した目標に対してどのような結果になったか、個人目標の達成状況を記載します。
「できた・できなかった」の報告だけでなく、目標達成のプロセスにおいて現在自分がいる位置を具体的に示すことが必要です。
▼目標達成状況の記載例
- 目標以上の成果を出せた
- おおむね達成できた
- 70%程度達成できた など
②目標達成のための取り組み
目標を達成するために自身が取り組んだ行動を記載します。
管理者や人事担当者が読んだときに「いつ・どこで・何を・どのようにしたのか」が伝わるように、具体的に書くことが必要です。「頑張った」「うまくいかなかった」といったような主観的な表現にならないようにしましょう。
▼取り組みの記載例
- 介助拒否の多い〇〇様の入浴介助の前に雑談を交える習慣を取り入れた
- 認知症ケア研修で学んだユマニチュードの技法をケアで実践した など
③得られた成果・成長できたこと
自身の行動を通じて得られた成果や自己成長につながったことを記載します。
定量的な成果については、具体的な数字も入れるようにします。また、利用者の生活の質やコミュニケーションに関すること、内面的な成長などの定性的な内容については、エピソードを添えると具体的な状態・変化がイメージしやすくなります。
▼定量的な成果の記載例
- ヒヤリハット件数を前回から〇件削減した
- レクリエーションの参加率が〇%増加した
- ○○様が食事を完食される日が〇日増加した など
▼定性的な成果の記載例
- ○○様に趣味に関する質問をこまめに行い、笑顔で会話していただける機会が増えた
- 介護技術研修で学んだことを実践し、移乗介助を円滑に行えるようになった など
④現状の課題
成果だけでなく、新たに直面した課題や反省すべき点なども記載します。
自分の課題や弱点を正直に記載することは、マイナス評価ではなく「成長の可能性がある」「自己分析をしっかりできている」というプラス評価につながります。
日々の業務やケアの場面などで感じた問題を具体的に記載することが必要です。
▼課題の記載例
- 事故防止のための安全管理に意識が向き、傾聴の姿勢が足りなかった
- レクリエーションの満足度を高める企画の工夫が必要と感じた など
⑤今後の目標や改善策
自己評価シートの最後には、「現状課題をどのように解決して、新たな目標に向けてどのようなアクションを起こすのか」をセットで提示します。
具体的な目標と行動を記載することで、前向きに成長しようとする姿勢をアピールできます。目標設定に活用できるフレームワークに「SMARTの法則」があります。
▼SMARTの法則
| 要素 | 目標設定の基準 |
| Specific(具体性) | 抽象的や大まかな目標ではなく、誰が読んでも理解できる具体性がある |
| Measurable(計測可能性) | 取り組みの成果を客観的に把握できる、数値として定量化できる |
| Achievable(実現可能性) | 現実的に達成できる可能性がある |
| Relevant(関連性) | 自身が目指す理想像や現場の目標に関連している |
| Time-bound(期限) | 目標を達成するまでの明確な期限を設定している |
例えば、「介護事故を減らす」「資格をとる」ではなく、以下のように具体的な目標を設定する必要があります。
▼目標の記載例
- 転倒事故をゼロにするため、介助前後の声かけや環境整備に関するチェックシートを3ヶ月間徹底する
- 今年の〇月までに介護福祉士の資格を取得して介護技術・知識の専門性を高める など
【例文あり】キャリア段階別の自己評価シートの書き方
介護職のキャリア段階によって、職員に求められる役割や能力は異なります。自分の今の立ち位置と求められる人材像とのギャップを分析したうえで、自己評価シートを作成することが重要です。
ここからは、キャリア段階別の自己評価シートの書き方と例文を紹介します。
新人職員|業務の基礎スキルに関すること
入職して1~3年の新人職員は、介護に関する基本的な知識・スキルやビジネスマナーの習得に加えて「主体的に学ぶ姿勢」が求められます。
「何ができるようになったか」だけでなく、「分からないことや課題に対してどう向き合ったか」まで記載すると成長意欲が伝わりやすくなります。
▼新人職員が自己評価シートに書くとよいポイント
| 項目 | ポイント |
| 習得プロセス | どのような努力・工夫でできるようになったのか |
| エピソード | 自分の行動によって利用者の反応や現場業務への影響などにどのような変化があったのか |
| 学ぶ意欲 | 自分の弱点や課題を解消するための資格取得や勉強法など |
▼自己評価シートの例文
| 【目標達成度】 入浴介助をひとりで対応する目標を達成しました。 【取り組み】 先輩職員の介助動作や声かけの様子をメモに取り、分からないことへの質問やイメージトレーニングを行うようにしました。 【成果】 先輩職員の補助がなくても入浴の介助を任せてもらえるようになり、利用者から「ありがとう」という感謝の言葉をいただけるようになりました。 【現状の課題】 認知症の方への入浴介助では、意思表示されることが多くありました。スムーズに受け入れてもらうための声かけや接し方を工夫する必要があると考えます。 【今後の目標】 先輩職員の接し方や声かけのタイミングを観察して、3ヶ月後には認知症の方の入浴拒否を減らせるように取り組みます。 |
中堅職員|介護技術やチームワークなどに関すること
施設で働いて4~9年目ほどの中堅職員は、自分自身のスキル向上に加えて「業務の効率性」や「チームへのよい影響」などが評価の対象となります。
現場の業務を円滑に回すための具体的な工夫や、介護の専門性を高める自己学習の取り組みなどを記載しましょう。
▼自己評価シートに書くとよいポイント
| 項目 | ポイント |
| 専門性の向上 | 研修参加、資格取得、専門分野の技術習得など |
| 業務やケアの改善 | 業務効率化やケア品質向上に向けてどのような工夫をしたか |
| チームへの貢献 | チームの連携やフォロー、多職種との情報共有において自分がどのような役割を果たしたか |
▼自己評価シートの例文
| 【目標達成度】 ユニット全体の「介護事故件数の20%削減目標」に対して、10%の削減にとどまった。 【取り組み】 ヒヤリハット報告を分析して、食事中と自由時間の見守り配置を増やすように提案しました。また、食事の姿勢やペースに関する声かけによる誤嚥防止や、滑り止めマットの設置による転倒防止策を実施しました。 【成果】 転倒事故件数が1件削減、誤嚥事故はゼロに抑えることができました。 【現状の課題】 新人職員の配置が多い日程において見守りが不十分になることがあったため、見守りや食事介助のスキルの強化が必要と考えます。 【今後の目標】 食事介助の手順や見守りのポイント、声かけの方法などを指導する実務研修を提案し、3ヶ月間で前回目標の介護事故件数20%の達成に取り組みます。 |
リーダー職|マネジメントや運営に関すること
リーダー職は、個人が持つ介護技術よりも「チーム全体としての成果」や「ほかの職員の育成」に関する能力や取り組みが評価されます。
介護施設の課題をどのような取り組みによって解決しようとしたか、論理的に伝えることでマネジメント能力をアピールできます。
▼自己評価シートに書くとよいポイント
| 項目 | ポイント |
| 実績 | 事故率・離職率・利用者向けアンケートの結果など |
| 職員の成長 | 育成計画に基づいて介護職員が習得したスキル |
| 組織課題に対する解決策 | 現場の業務・ケア体制の課題を解決するための仕組みづくりや研修体制の整備 |
▼自己評価シートの例文
| 【目標達成度】 平均残業時間の「5時間以下」の目標をおおむね達成できました。 【取り組み】 介護記録の管理ツールを導入して、事務作業や情報共有の効率化を図りました。 【成果】 職員の記録業務時間(1日当たり)を70分から40分に短縮でき、1ヶ月の平均残業時間が約5時間に削減されました。 【現状の課題】 職員によって記載内容や所要時間にばらつきがあり、記録業務の標準化が必要です。 【今後の目標】 ツールのフォーマットを修正して記録業務を標準化し、修正件数を月10件以下にできるようにします。 |
自己評価シートを書くときに押さえておくポイント

自己評価シートを書く際は、表現方法に配慮して内容の整合性を確保することで、読み手に正しく内容が伝わりやすくなります。
押さえておきたいポイントには、以下の3つが挙げられます。
ポイント1.言葉選びに配慮する
自己評価シートでは、介護の現場やビジネスシーンで使われる言葉を使用することがポイントです。同じ内容でも、言葉選び一つで評価者の印象がよくなります。
□頑張った→「~に注力した」「~を徹底した」
例文「利用者さまの声かけに注力して信頼関係の構築に努めた」
□できるようになった→「習得した」「習熟度が向上した」
例文「移乗介助の習熟度が向上し、一人でも安全かつスムーズな対応が可能になった。」
□相談した→「~との連携を図った」「~の指示を仰いだ」
例文「観察時に看護師との連携を図り、感染症の早期発見につなげた」
□気を付けた→「~に注意を払った」「~を習慣化した」
例文「食事中の観察に注意を払い、誤嚥性肺炎の予防に努めた」
ポイント2.数字や具体的な行動を入れる
「たくさん取り組んだ」「概ねうまくいった」といった抽象的な表現は、読み手によって捉え方が異なるほか、単なる感想文のように映ってしまう可能性があります。
説得力を高めるには、数字や具体的な行動を盛り込むことがポイントです。成果や取り組みを記載するときに盛り込む内容には、以下が挙げられます。
▼盛り込むとよい内容
| 項目 | 内容 |
| 取り組みの状況 | 回数・頻度・時間・割合などの数字 |
| 具体的な工夫 | ツールの使用、マニュアルの修正、チェックシートの活用、声かけの実施など |
| 行動の結果 | 業務ミスの削減、残業時間の削減、レクリエーションの参加率の向上など |
具体的な書き換え例には、以下が挙げられます。
□事故防止・リスク管理について
「安全管理に気を付けた」
↓
「毎朝の環境整備をチェックリスト化してフロアでの転倒事故を〇%削減できた」
□業務効率・チームワークについて
「申し送り時間を削減できた」
↓
「申し送りフォーマットを作成して、シフト交代時の引継ぎ時間を10分短縮した」
□新人指導・教育について
「独り立ちのための指導を行った」
↓
「新人用の習熟度チェックシートとフィードバック導入して、入職3ヶ月以内で食事・入浴・排せつ介助の独り立ちをサポートした」
ポイント3.目標と結果の整合性を確保する
前回に設定した目標に対して、「記載している成果や実績が噛み合っているか」を確認するようにしましょう。目標と関係のない取り組みや成果を記載しても、努力や達成状況を正しく評価することができません。
自己評価シートを作成する際は、「設定した目標」を軸にして「何に取り組んだか」「結果はどうなったか」「今後はどうするか」といった流れで構成することがポイントです。
自己評価は成長の道しるべ。目標達成に向けて日々取り組もう
自己評価シートは、介護職員としての自分の成長過程を見える化して、次のステップを歩むための道しるべになります。
介護施設の管理者や人事担当者に対して「自分が培ったスキル」や「業務やケアへの貢献度」などを分かりやすく示すことで、キャリアアップにつながることも期待できます。 スキル向上の促進や正しい人事評価につなげるために、今回紹介した自己評価シートの構成や書き方のポイントをぜひ参考にしてみてください。









