感染症予防のもっとも基本となるマスク。高齢者である利用者様への感染対策には、どの施設でも十分に気を配っていることでしょう。
しかし、なかには息苦しさからマスクの着用をいやがる利用者様や、認知症のある方が自分ではずしてしまい、大声で話したり、徘徊したりすることも。ただ、本来気をつけるべきは利用者様がマスクを着用しているかではなく、感染を防止すること。
今回は、マスク着用の工夫と、介護における感染予防についてお伝えしていきます。
マスクを生活動作に取り入れる
利用者様がマスクを外されると、神経質になる気持ちは無理もありません。だからといって、責任感から叱ったり、強く注意をすると、高齢者にとって精神的な負担になってしまうことがあります。
ご本人も不安や苦痛を感じていることを理解して、マスクを着用することの理由を何度でも伝えるようにしましょう。
マスクの着用を習慣にしづらい認知症の方などは、日常の生活動作に取り入れてもらうことで着用しやすくなります。身なりを整えるとき、食事を終えたときに、声をかけながら利用者様といっしょにマスクを着用する動作を行うなど、記憶してもらいましょう。
マスクの息苦しさがストレスになっている利用者様には、心身の負担を軽減するために、屋外に出て周囲の人に十分留意しながらマスクを外す息抜きも大切。厚生労働省でも、屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクをはずすことをすすめています。その場合でも、施設内では感染防止のため、マスク着用の必要性を理解していただくことが大切です。
介助のちょっとしたコツで感染を防ぐ
食事やお風呂など、マスクを外さざるをえない介助の場面では、利用者様、スタッフともに感染しないような注意が必要です。
基本的には、利用者様の正面に立たないようにし、体の横から介助するなど動作を工夫しましょう。十分な換気を行い、サーキュレーターや換気扇などを利用することも工夫のひとつです。
食事介助や口腔ケアなどを行う際には、利用者様の斜め後ろ側から、呑み込みの様子を観察します。むせたときは、前掛けやタオルで口元をそっと覆い、介助者は唾液等を浴びないよう体を後ろに引くようにします。食器類の消毒を行うことはもちろん、マスク、手袋、ビニールエプロンなどを使い、なるべく頻繁に交換しましょう。
マスクを楽しむ
マスクを、利用者様がおしゃれを楽しむアイテムにすることもひとつです。お気に入りの柄や色を選ぶことを楽しんだり、お洋服と合わせてコーディネートを楽しむことで、マスクが身近に感じられるようになるかもしれません。
また、レクリエーションに取り入れることで、マスクに愛着が湧くきっかけに。好きな布地やひもを組み合わせたり、アップリケを選んで貼り付けることによって、オリジナルマスクを作ることができます。クリアケースをカットし、好きなシールなどでデコレーションをするだけで、自分だけのマスクケースのできあがり。
マスクを着用することが楽しくなる取り組みもよいでしょう。施設のあちこちで色とりどりのマスクが見られる光景、目にもあざやかで、気分も華やぎます。
利用者様がマスクを着用されたら、「かっこいいですね」「ステキですね」と声をかけましょう。
あわせて対策したいこと
利用者様がどこか見えないところでマスクを外しているかもしれないことを想定し、対策しておくことも、感染予防につながります。
こまめに換気を行い、空気の入れ換えを行うこと。手に触れる食器や手すり、ドアノブなどはこまめに消毒。認知症のある方がマスクをはずして徘徊したりすることを考え、施設内のタッチポイントの清掃、除菌は念入りに行っておきましょう。
マスク着用時の熱中症に注意
マスクを着用することで、していない時と比べ、心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがあります。
こまめに水分補給をすることや、声かけをしながら様子をうかがうことで、利用者様も安心でき、マスクによる息苦しさの不安をやわらげることができます。
利用者様とスタッフの安全のために
施設の利用者様である高齢者は、ひとたび感染すると重症化しやすくなります。また体に触れるスタッフにも感染リスクがないとはいえません。一人ひとりがマスクを着用することで、施設への感染を防ぎたいもの。
とはいっても、一人ひとりに完璧を求めすぎては疲弊してしまいます。お互いにストレス貯めないよう、十分なメンタルケアをしながら、マスク着用とともに感染を防ぐ取り組みを進めていきましょう。