認知症の徘徊に、模擬訓練で備えて安心できる社会へ

使えるハウツー

高齢者を支えながら歩く介護スタッフ
認知症の方がひとりで外出し、そのまま外を歩き続けてしまう「徘徊」。ただウロウロしているだけに見えても実は、多くの場合本人なりの目的を持っているため、最近は「ひとり歩き」「無断外出」などと言い換えられることが増えてきています。

認知症の方が外出して帰れなくなると、熱中症や低体温症、交通事故や行方不明など、大きなトラブルにつながることも少なくありません。しかしこれらは、早期に発見することさえできれば防ぐことができます。そのために全国各地で行われているのが、街で認知症が疑われるお年寄りが困っている場面に遭遇したときの模擬訓練。

模擬訓練では、相手をスムーズに誘導するための声かけ方法や、その後の対応について学ぶことができます。今回はこの模擬訓練について詳しくお伝えしていきます。

模擬訓練の目的

街中で困っていたり挙動不審な高齢者を見つけたら、あなたならどうしますか?認知症かもしれないと思ってもうまく声かけができるか心配で、そのままスルーしてしまうこともあるのではないでしょうか。「認知症徘徊模擬訓練」に参加すると上手な対応方法を学ぶことができ、いざというとき勇気を出して「声をかけてみよう」と思えるようになります。

座学だけではなく、シミュレーションで実際に体験することができる点もポイント。参加した人からは「ただの学習会ではなく模擬体験できたのがよかった」「実際の場面に遭遇したときにどのように対応したらよいかイメージがわいた」といった声が寄せられています。

また、プログラムには地域の行方不明者情報配信システムの説明があることも多く、その周知も目的のひとつ。これは事前に認知症で行方不明になる恐れのある人を登録しておくと、いざ行方不明になって捜索願を出したときに捜索協力者に情報メールが配信されるというものです。地域に協力者が多ければ多いほど効果的ですが、まだまだ浸透していないのが現実。訓練に参加して声かけの方法が分かれば、「私も登録しておこう」という人が増えることにつながります。

最終的には、認知症の方に必要な助けの手を差し伸べられる人を増やし、誰もが安心して暮らしていける地域をつくることが大きな目的です。

模擬訓練の内容

地域によって内容には多少の差がありますが、多くの場合下記のような流れで行われます。

  1. 参加者集合
  2. 始めのあいさつ
  3. 地域の認知症行方不明者情報配信システムの説明
  4. 声かけのポイントや注意事項の説明
  5. 実地訓練開始
  6. 訓練終了
  7. 参加者意見交換
  8. 終わりのあいさつ
  9. 解散

実地訓練の前には、認知症の方への声かけのポイントについて話を聞きます。認知症の方は視界が狭くなっていたり、判断力が低下しているため、急に後ろから声をかけると驚かせてしまったり、早口で話しかけても理解してもらえなかったりすることがあります。スムーズにコミュニケーションをとるには、まず驚かせないこと、ゆっくり話すこと、また本人の話を否定しないといった接し方のコツを知っておくことが役立ちます。

その後はいよいよ街に出て、だいたい1時間程度の模擬訓練を行います。訓練では、認知症の本人役を演じるスタッフが地域を歩き回り、参加者がそれを探して声をかけます。認知症の方は「子どもを迎えに行く」「自宅へ帰って洗濯物を取り込む」といった明確な目的を持っていることが多く、なかには幻覚を見て興奮しているケースも。実際に多く起きているケースをスタッフがリアルに演じてくれるので、具体的な対応方法をわかりやすく学べます。シミュレーション形式になっているので、大人はもちろんお子さんも参加できます。

最後には参加者同士で意見交換をする時間があります。みんなで出し合った意見や感想は次の訓練に生かされます。人の意見を聞くことで新たな気付きがあったり、認知症がもっと身近に感じられるようにもなるでしょう。ふだんあまり顔を合わせることのない地域の方と交流する良い機会にもなりますね。

模擬訓練はどこで実施されている?

前を向く人々の様子
模擬訓練の多くは、地域の「社会福祉協議会(社協)」や「地域包括支援センター」などが主体となり、地域の老人ホームやデイサービスなど介護事業者の協力を得ながら実施されています。

ちなみに「社会福祉協議会(社協)」は、地域住民が主体となってさまざまな社会福祉活動を行う団体です。また「地域包括支援センター」は、各自治体によって管理される高齢者のためのサポートセンター。高齢者の困りごとを解決する何でも相談窓口のような役割を担っています。

参加は無料ですが、一部事前申し込みが必要となることも。お住まいの地区でもきっと開催されているはずですので、興味のある方はぜひ問い合わせてみてください。

いろいろな名称で呼ばれる模擬訓練

冒頭でお伝えしたように、認知症本人は明確な目的を持って外出していることが多く、「目的なくふらふら歩き回る」といったニュアンスのある「徘徊」という言葉を使わないようにしようという流れがあります。

きっかけとなったのは認知症本人の方々の「自分なりの理由や目的がある」「外出を過剰に制限しないでほしい」という訴え。家に帰れなくなって必死に道を探している状態であり、「徘徊」と呼ばれるのは受け入れられないといいます。

たしかに「徘徊」という言葉には、認知症になると何もわからなくなるという偏見が隠れているようにも思えます。そのため模擬訓練の名称も、自治体によって「認知症徘徊模擬訓練」ではなく「認知症一人歩き模擬訓練」や「声かけ模擬訓練」などいろいろな呼び方で呼ばれていることがあります。インターネットなどで情報検索する場合には、少し注意してみてくださいね。

誰もが安心して年をとれる社会を

手を取り合う高齢者と介護スタッフ
いくつかある認知症の周辺症状のなかでも、困る症状の代表格として扱われている徘徊。しかし無断外出しても早期に周囲から助けの手が差し伸べられ、スムーズに自宅や施設に帰ることができれば、大きな問題にはならないはずです。

そうなればむやみに外出を制限しなくてもよくなり、認知症高齢者本人にとっても施設や在宅でお世話をしている介護者やご家族にとっても、もっと暮らしやすい社会になっていくのではないでしょうか。

しかし社会全体を変えていくには、本人や家族といった当事者だけの努力だけではとても足りません。地域のあらゆる世代の人々が自分ごととしてとらえ、行動を起こすことが必要です。模擬訓練に参加することは、その第一歩になるかもしれません。

年をとり、病と付き合いながら生きていく・・・それはいつか誰もが通る道。安心して年をとれる社会を、みんなで実現していきたいですね。

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