介護職をはじめとするタイムシフト制の仕事には、つきものともいえる夜勤。
しかし人間は本来、昼間活動して、夜は休息するようにできています。普段はふつうに生活しているのに、ときどき夜の勤務シフトが入ると、生活のリズムが狂ってしまいます。
すると、夜眠れなくて疲れがとれなかったり、昼間は眠くてだるかったりと、いろいろなつらいことが起こることに・・・。
質の良い睡眠は、健康の基盤。健康であればこそ、介護にも集中し、前向きに取り組めるというものです。
今回は、夜勤があっても生活のリズムをキープして、ぐっすり眠るために気をつけたいことなどをご紹介します。
睡眠のメカニズムを知ろう
人間の体のなかにはあらかじめ体内時計がセットされており、これにしたがって、私たちの体は休息モードと活動モードを切り替えています。
それなのに突然夜中に活動して昼間に休息するなど、体内時計のスケジュール帳に書き込まれていない行動をすると、体は大混乱!勤務中なのに眠くなるホルモンがスケジュール通りに分泌されて、どうしようもない睡魔に襲われてしまったり、仕事を終えて一刻も早く眠りたいのに体が活動モードから切り替わらず、ちっとも寝付けなかったり・・・。
ひどくなると不眠や日中の倦怠感、食欲不振といった睡眠障害につながることも。
こうしたミスマッチを防ぐためには、「光でリセットできる」という体内時計の性質を知って、上手にコントロールしていくことが大切です。
太陽の光を浴びることで体内時計はリセットでき、寝る時は休息モードに、起きている時は活動モードにと、生活に合わせて調整することができます。
夜勤専任の場合は夜活動モードになるように体内時計を合わせていっても良いのですが、日勤と夜勤が混在して交代勤務をすることが多い介護職の場合は、できるだけ体内時計は日勤に合わせておくのが正解です。
これからその具体的な方法を、お悩みのケースごとにご紹介していきます。
夜勤明け、疲れすぎて眠れないとき
くたくたに疲れて足は棒のよう。一刻も早く眠りたいのに、布団に入るとなぜか目が冴えてしまって、ちっとも寝付けない・・・夜勤明けにそんな経験をした覚えはありませんか?
それは、体が活動・興奮モードに入ったまま、休息・リラックスモードに切り替わらないせいかもしれません。
仕事で緊張した状態が続いていると、体は活動モードになっています。活動モードでは、毛細血管を収縮することで末梢の血流を少なくして、脳や肺など活動時に重要な器官に血流が集中するようになっています。そのままではうまく寝付けず、寝付けたとしても体の隅々まで血流がめぐらず、眠りの質は低いものに。
体を休息モードにうまく切り替えてから、布団に入ることが快眠の秘訣です。
質の高い睡眠の取り方として、布団に入る前に気をつけたいことは以下の5つ。
- 就寝直前の食事は避ける(消化器官が働いていているままだと眠りが浅くなってしまうため)
- 強い光やスマホを見ない(ブルーライトを浴びると体が朝だと勘違いしてしまうため)
- カフェイン、アルコール、タバコはNG(覚醒作用があり、深く眠れないため)
- 眠る前にお風呂などで体を温める(体温の落差があると良い眠りにつながるため)
- 午後まで眠らず、午前中で眠りを切り上げる(その日の夜、しっかり眠るため)
おなかがぺこぺこで、何か食べてから眠りたいということもあると思いますが、消化活動は睡眠中の体の負担になります。
「これから眠るぞ!」というときは、なるべく胃の中にものは入れず、ホットミルクやハーブティーなど飲み物くらいにしておくのがおすすめ。どうしてもというときは、揚げ物や肉など消化の悪いものは避け、消化のよいものを軽めに摂ることを心がけましょう。
その日の夜の睡眠に影響しないよう、午前のうちに眠りを切り上げることも重要です。このときのおすすめの睡眠時間は3時間。人は90分〜100分のサイクルで深い眠りと浅い眠りを繰り返すので、眠りについてから3時間ほど後ならちょうど眠りが浅くなっており、スムーズに目覚めやすいからです。
そして目が覚めたら、しっかり太陽の光を浴びておきましょう。これで体内時計をリセットでき、その日の夜もきちんと眠ることができます。
眠りが浅くて、眠りの途中で目が覚めてしまうとき
ぐっすり眠りたいのに、ちょっとしたことで目が覚めてしまい、そうなるともう眠れない・・・こんな悩みもよくあります。
深い睡眠のためには、「暗いこと」「静かであること」「適度な温度・適度な湿度」などが必要です。
夜勤明けの午前中に眠るときは、遮光カーテンやアイマスクでしっかりと光を遮断しましょう。
近所の音が気になるようなら耳栓を使ったり、電話も音が鳴らないように設定したりと対策をしておきましょう。無用なセールスなどで起こされることがないよう、玄関扉に「夜勤明けのため睡眠中です。御用の方は○時以降にお願いします」といった張り紙をしておくのも有効です。
深く眠っているとき、私たちの体のなかでは「成長ホルモン」が活発に分泌されています。この成長ホルモンは、体じゅうの細胞を修復・回復させたり、免疫力を強化したりしてくれる大切なホルモン。浅い眠りが多いとこのホルモンが不足して、肌荒れしたり免疫が落ちて風邪をひきやすくなったりすることにもつながります。
特に周囲が明るく騒がしい午前中に眠るときには、快眠を手に入れるためにひと手間かけられるといいですね。
夜の勤務中、睡魔に襲われてしまうとき
仕事に集中しなくてはいけないのに、眠くて眠くて仕方ない・・・だれしも経験があると思いますが、これもつらいもの。コーヒーを飲んだり、栄養ドリンクを飲んだりしてもなかなか去ってくれない睡魔には、「ちょい寝」がおすすめです。
これは、休憩を利用して15分〜30分ほど仮眠をとること。このくらいの時間ならまだ深い睡眠(ノンレム睡眠)に入る手前なので、起きたとき頭がぼーっとすることもなくスッキリ起きられます。どうしようもなかった眠気もとれて仕事に集中できるので、ぜひ試してみてください。
また、眠くなるメカニズムには、「メラトニン」というホルモンが関わっています。このホルモンは歯磨きをすることで減少することが分かっています。眠くてどうしようもないときは、休憩中に歯磨きをしてみるのもいいアイデア。
いずれにしても、活動中に睡魔に襲われてしまうのは、睡眠の質が下がっていることが考えられます。上に紹介した質の良い睡眠の取り方を試していくことで、勤務中に眠くて仕方ないということも自然に減ってくるでしょう。
ぐっすり眠るといいことたくさん!
睡眠による疲労回復の詳しいメカニズムが、最新の研究によって明らかにされてきました。
リラックスしてぐっすりと眠っているときは、血流が体の隅々までめぐり、栄養を届け、老廃物を回収してくれています。そして多くのホルモンが協力して働いて、疲れた体を修復したり、免疫力を上げたりしてくれています。血行を良くして疲れをとることで、介護職に多い肩こりや腰痛の予防にもつながります。
質の高い眠りによってじゅうぶん休息できた体は調子もよく、イキイキと仕事に取り組むことができ、気持ちも前向きになります。そうなると仕事のストレスも、眠れなかったときに比べて段違いに軽く感じることもあるものです。
夜勤が大きなストレスだと感じるときは、睡眠の質が下がっているのかもしれません。まずは睡眠の質を上げるさまざまな方法を試して、ぐっすり眠ることを目指しましょう。眠りの質が改善すれば、いつのまにか夜勤のストレスも小さくなっていることでしょう。