洗う手、さする手、支える手・・・手から伝わるやさしさや温かさが、周りのみんなを元気にするお仕事――それが介護職です。
ただ避けられないのが「手」への負担。毎年乾燥する季節になると手荒れがつらくて・・・という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、介護職の手荒れ問題にスポットを当ててご紹介します。まずは介護職の手荒れを引き起こす原因や、症状に合ったハンドクリームの選び方を知るところから始めましょう。
さらにいますぐできる手荒れケアのコツや、時間があるときのスペシャルケアの方法、皮膚科へ行くべき症状など、詳しくご紹介していきます。
介護職が取り入れやすい手荒れ対策を行って、今年の冬は手荒れ知らずのすべすべ手肌で過ごしてみませんか?
介護職の手荒れの原因
手荒れのおもな原因は乾燥です。冬に手荒れしやすいのは、空気が乾燥しているせいもあるのです。
手肌を乾燥させてしまう介護業務としてまず挙げられるのが、入浴介助や洗髪。洗剤やお湯で、手肌を守るはずの皮脂や潤い成分が洗い流されてしまうからです。
また着替えの介助やおむつ交換、シーツ交換なども、乾燥の一因に。紙や布類が手肌の水分を奪ううえ、たび重なる摩擦などの刺激も肌にとってはダメージです。
さらに介護職は、感染症を防ぐために洗浄剤を使った手洗いやアルコール消毒などをよくしますが、これも手肌にとっては刺激になります。その他にも、薬剤などによるアレルギーで手荒れすることもあります。
荒れた状態の手は、健康な手よりも細菌が繁殖しやすい状態になっています。またアルコール消毒がしみたりすると、どうしても積極的に消毒できないこともありますね。こうなると自分自身の衛生にも、施設利用者の衛生にも、悪影響が出てしまうかもしれません。
手荒れがひどくなる前に、ハンドクリームで効果的にセルフケアする方法をご紹介しましょう。
方法1:ハンドクリームは成分で選ぼう
ハンドクリームは、それぞれ配合されている成分によって特徴があります。
ただ「なんとなく効きそう」で選ぶのではなく、パッケージをよく見て成分をチェックしましょう。あなたの手荒れの状態に合ったものを選ぶことが、すべすべ手肌への第一歩です。
手荒れ予防や軽い乾燥に
・ヒアルロン酸、セラミド
ヒアルロン酸は、肌の奥深くで水分をよく含んで弾力性を保ちます。セラミドは、肌の外側近くでスポンジのように油分と水分を含み、肌細胞を接着しています。
どちらももともと人の肌にある保湿成分で、協力して手肌の潤いを保つ働きをします。
・シアバター
シアバターは、西アフリカの「シアーバターノキ」の種子から作られた植物性脂肪です。血行をよくして肌細胞の再生(ターンオーバー)を促すビタミンEも含まれています。
・グリセリン
高い保湿力から、化粧品にもよく配合されている成分。人間の体内にも存在し、安全性が高いのが特徴です。
ひび割れやアカギレができてしまったら
・ビタミンE
末梢神経の血行を良くして、ターンオーバーを効果的に促すために配合されています。
・ワセリン
介護施設でもよく使われているワセリン。油膜で肌にバリアを作り水分の蒸発を防ぎ、ひび割れを保護します。少しべたつきますから、仕事中よりも自宅でのケアにおすすめします。
皮膚がごわごわしてきたら
・尿素
皮膚のごわつきがあるときは、保湿しながら角質をやわらかくする尿素配合のクリームを。
ただ尿素は角質を溶かす働きもあるため、炎症を起こしている部分には使用しないようにしましょう。ごわつきを感じる部分にだけ使用して、そのほかには別のハンドクリームを使う方法もあります。
赤く炎症を起こしてしまったら
・ヘパリン類似物質
「ヘパリン類似物質」は乾燥肌治療成分で、保湿、炎症を鎮める作用、血行促進の3つの効能があります。かゆみを感じるときや炎症を起こした手荒れには、保湿成分だけではなく、こうした成分が入ったハンドクリームを選ぶと回復が早くなるでしょう。
ただ、ヘパリン類似物質には血を固めない作用があるため、出血しているときや血友病などの出血性疾患があるときは使えません。不安があるときは薬剤師などに相談するようにしましょう。
どのハンドクリームも体質によって合わないときがありますので、刺激を感じたときは使用を中止してください。
方法2:ハンドクリームの効果的な塗り方を知ろう
・よく水分を拭き取ってから
手洗いは油分を取りすぎず汚れも落ちやすい、ぬるま湯がベスト。洗ったあとはすぐに水気を拭き取りましょう。水分が残っていると、蒸発するときに皮膚の水分も一緒に蒸発させてしまうのです。
肌への刺激を考えるなら、手をこすって乾かすエアータオルより、自前のタオルハンカチでやさしく水分を拭き取るのがおすすめです。
・ハンドクリームは手洗いのたびに
手を洗うたびに塗るのが理想的です。とくに水仕事のあとと、就寝前は忘れずに。仕事中もポケットに入れておいて、こまめに塗り直すようにしましょう。
・ハンドクリームの量の目安
一回あたりの量の目安は、チューブタイプなら、人差し指の先から第一関節くらいまでの長さ、ボトル入りならサクランボ1個くらいの大きさです。少なすぎると肌を摩擦してしまい、かえって角質を痛めてしまいます。
・塗る前に体温で温めて
手のひらにクリームを出して、軽くこすり合わせて温めます。これはクリームも手も温かい方が、浸透が良くなるから。
次に、手の甲をそっとおさえるようにクリームをなじませ、浸透させていきます。全体になじんできたら、両手を組んで指の間にもなじませます。親指は塗り忘れやすいので気をつけてくださいね。
最後に指先や爪のまわりに、手に残ったクリームをもみ込みます。
・自宅でのセルフケア
家でのセルフケアは、少し時間をかけて。ハンドクリームを塗る前に蒸しタオルで手を温めると、保湿成分がより浸透しやすくなります。蒸しタオルは絞ったタオルを電子レンジ500Wで1分前後加熱するだけ。
化粧水を先に塗り、ハンドクリームで潤いを閉じ込めるのもいい方法です。
方法3:生活に手荒れケアを組み込もう
手荒れのケアは、乾燥させない、外からの刺激を避ける、潤いを浸透させる、の3つが大切。ふだんの生活のなかのちょっとした工夫で、手荒れの予防やケアができますよ。
まず湿度の低い室内では手も乾燥します。加湿器などで50%程度の湿度を保つようにしてください。
また刺激から手を守るために、手袋を活用しましょう。外出するときの防寒用手袋は外気からの保護になりますし、水仕事のときは炊事用手袋が強い味方。ゴム製の手袋はかぶれることがありますので、プラスチック製の方が安心です。
寝るときはハンドクリームを塗ってから、薄手の綿やシルク素材の手袋をすると、保湿成分をよく浸透させることができます。これを応用すると、自宅で水仕事をしながら「手肌パック」もできます。
やり方は、まずハンドクリームをたっぷりめに塗り、使い捨てのビニール手袋とプラスチック手袋を重ねます。そして水仕事をすると、クリームがよく浸透します。蒸れすぎないように、作業が終わったら手袋を外してください。
ラップで覆ってもいいのですが、クリームを塗った手ではラップは扱いにくいもの。すぐに使えて指が動かしやすい使い捨てビニール手袋がおすすめです。
ひどい手荒れの場合は皮膚科へ
手荒れがひどくなると、かゆみが出たり、手のひらや指が赤くなって炎症を起こします。さらに悪化すると水ぶくれができたり、ひび割れて痛んだり、皮がめくれてジュクジュクすることも。これらはすべて皮膚炎の症状です。あまりひどくならないうちに、皮膚科を受診しましょう。
皮膚科では、炎症を鎮める、かゆみを鎮める、乾燥を改善する、この3つの方向から薬で治療します。炎症を鎮めるにはステロイド剤の塗り薬、また必要に応じて抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤なども処方されます。さらに保湿剤も使って、体の内側と外側から治療していきます。
症状がつらい時は、怖がらず医療の力を借りて。医師の指示通り正しくケアしていけば、つらい症状から抜け出すのも早くなります。
働き者の手をケアしてあげよう
自分の手は何をしていても目に入るもの。手がボロボロだと、なんとなく気持ちまで沈んでしまいますね。
逆に生き生きとしたきれいな手なら、仕事に取り組む姿勢も自然に前向きになっていきます。それに介護してもらう側だって、しっとりとしたすべすべの手で触れられれば気持ちがよいもの。
冷えてしまった利用者の手を握って温めたり、落ち込んでいる利用者の背中をさすったり・・・あなたの手はたくさんの「安心」や「心地よさ」を生む働き者。なのにその労をねぎらってもらえる機会は、あまり多くはありません。
忙しいとつい後回しにしがちな自分ケアですが、この冬、まずは手先から、自分ケアを始めてみませんか?