後期高齢者こそ歯科検診を!健康長寿の秘訣は「歯」

介護職の保健室

「健康な歯」イメージ

75歳を境に線引きされる、前期高齢者と後期高齢者。後期高齢者になると多くの人が現役を退き、同時にいくつもの病気にかかったり、治療が長引くことも珍しくありません。

そんな後期高齢者の健康維持には、バランスのよい食事や運動が大切だということはよく知られていますが、「歯」の健康の重要性は、一般にはまだそれほど浸透していないかもしれません。実は、歯周病などでお口の中の環境が悪くなると、認知症や肺炎、脳卒中など、さまざまな病気の原因になることが分かっているのです。

しかし後期高齢者のなかには、年齢を重ねるにつれ歯医者さんに足を運びづらくなる人が多いのが現実。そこで今回は、歯科検診の重要性と、歯科検診を受ける際に役立つ情報をお届けします。大切な人にいつまでも元気で長生きしてもらうために、ぜひ「歯の健康」に着目してくださいね。

健康な歯は、高齢者を病気から守る

なぜ「歯」がそれほど大切なのか、高齢者の健康を脅かす病気ごとに詳しくみていきましょう。

  1. 1.認知症
    アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」という物質が脳に蓄積されることで発症すると考えられています。このアミロイドβは、歯周病菌が作り出す毒素によって増えてしまうことが分かっています。また、歯の残存数も認知症と深い関係があります。ある研究では、残存歯数が1~9本の人を5年ほど追跡調査したところ、20本以上ある人に比べて認知症のリスクが1.81倍になったということです※1。歯の本数が少なくなると、噛んだときの刺激が減り、脳に送り込まれる血流量も少なくなることが影響すると考えられています。
  2. 2.誤嚥性肺炎
    食べたり飲んだりしたものが、食道ではなく気道に入ってしまうことを「誤嚥(ごえん)」と言います。誤嚥したとき、唾液に歯周病菌が含まれていると、それが肺に入って炎症をおこす「誤嚥性肺炎」になる危険性がアップ。肺炎は高齢者の主要な死亡原因のひとつで、とくに気をつけたい病気です。口の中を清潔に保ち、歯周病を予防することで、そのリスクを下げることができます。
  3. 3.糖尿病
    歯周病になると、歯周病菌が出す毒素によって「サイトカイン」という炎症物質が増え、それが体中をめぐります。すると、血糖をコントロールしてくれるはずのインスリンが効きにくくなり、糖尿病の発症や進行につながる危険性が指摘されています。
  4. 4.脳卒中
    脳の血管が詰まったり破れたりすることで、深刻な結果につながりやすい「脳卒中」。この発生にも歯周病菌が影響します。歯周病菌が出す毒素によって増えるサイトカインの影響で、血管にも炎症が起き、動脈硬化を起こしやすくなるのです。歯周病の人はそうでない人に比べ、脳卒中になるリスクが2.63倍だったという調査結果※2もあります。

引用文献

※1:Takeuchi K, et al. Tooth Loss and Risk of Dementia in the Community: the Hisayama Study. J Am Geriatr Soc. 2017; 65: e95-e100

※2: Sfyroeras GS, Roussas N, Saleptsis VG, et al: Association between periodontal disease and stroke. J Vasc Surg 55: 1178– 1184, 2012

後期高齢者は歯科受診率が低い

このように、“歯は高齢者の健康の土台になる”といっていいほど重要なもの。定期的に歯医者さんに通い、良い状態をキープしていきたいですね。実際にどのくらいの人が歯科を受診しているかを示す受診率を年齢層別に見てみると、65~74歳の層がピークとなっています。75歳を過ぎ後期高齢者になると、受診率がぐっと下がってしまうのです※3

その理由としては、高齢のため通院が困難になり、歯科を受診したくてもできなくなっていることが想像されます。高齢になるほど歯の健康の重要性が高まってくるのに、きちんとした治療が受けられていない人がたくさんいるのが現実なのです。

※3:歯科医療(その1)( 厚生労働省)
{https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000166451.pdf}

後期高齢者の歯科検診を推進中

正しい歯磨きについて教える様子

そこで今、国を挙げて推進しているのが、後期高齢者の歯科検診です。国から補助金が出るため、ほとんどの都道府県の広域連合では年に1回、歯科検診を無料で受けることができます。

入院中の方や、老人ホームなどの施設入居者は対象外となりますが、自宅で生活している方で、後期高齢者医療制度に加入している方は利用できます。また、デイサービスなどの施設で、訪問歯科に依頼し、利用者の方の集団検診を行うケースもあります。慣れた場所で知っている人たちと一緒に受けられるので、リラックスできるところが良いですね。

「歯科診療を受けたいけれど、体が不自由で通うのが難しい」という方は、お近くの訪問歯科を利用するのも手です。自宅や介護施設まで歯医者さんが来て診療してくれる訪問歯科は、慣れた環境で治療を受けることができ、お年寄りの体の負担も少なくすみます。認知症の方は、事前に相談すれば経験のある歯科医やスタッフが来てくれることもあります。

下記のサイトではお近くの訪問歯科を手軽に検索できます。費用の目安を調べられる料金シミュレーターも便利。通院がネックになって歯科受診をあきらめていたという方は、ぜひ利用してみてくださいね。

>訪問歯科ネット{https://houmonshika.net/}

プロの手を借り歯を守ろう

健康な歯は笑顔のしるし

後期高齢者の健康維持に、歯のケアは欠かせないもの。毎日歯磨きはしていても、やはり自己流ではうまく磨けていないところもあるでしょう。定期的に歯医者さんや歯科衛生士さんにすみずみまで見てもらい、適切な指導や治療を受けたいですね。

また、入れ歯の不具合を直したり、虫歯を治療するなどお口のケアを行うと、「食べられない」という悩みが解消することがあります。そうすると、それにともない栄養状態が改善したり、介護度が下がったりと、いいことが連鎖して起こってきます。本人にとっても介護をする人にとっても、日々のケアをグンと楽にすることができますね。

費用負担は気にすることなく検診を受けられるので、長らく受けていない後期高齢者はすぐに受けられるよう、周囲がサポートしていきましょう。また、お口の中のトラブルで困っている場合は、訪問歯科の利用も検討してみてくださいね。

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