介護職同士が確実にバトンを渡していくことで、途切れなく利用者さんの生活を支えるのが介護サービス。ですから、介護の現場ではチームワークが欠かせません。
でも、介護職のなかには人間関係を作るのが難しい人もいて、周囲の悩みの種になっていることがあります。意見を押し付けてくる人、陰で悪口を言う人、嫉妬してくる人・・・同僚や先輩にこんな人がいて、あなたを悩ませてはいませんか?
問題がある人と上手に人間関係を作ることができれば、よけいなストレスがぐっと減り、仕事もスムーズにまわりだします。
そこで今回は、困った介護職との人間関係で悩まないための対処法をご提案。上手なかわし方を具体的な例も交えてご紹介しますので、ぜひ試してみてください。
周囲を困らせる介護職員とは
介護の職場では、いろいろな背景や価値観を持った人が働いています。もちろん仕事に影響しなければよいのですが、「感情的に怒る」「マナーを守らない」「気に入らない人を攻撃してくる」といった場合は、介護職同士のチームワークが乱れ、周囲に迷惑がかかってしまいます。
こうした問題行動を起こすのは、多くの場合プライベートで問題がある人。家族のことや仕事のことなどさまざまな悩みを抱え、思うようにならず傷ついている人が多いのです。
とはいえ、放っておくとその人のペースに巻き込まれ、周りの職員が被害をこうむってしまいます。周囲は対策をとり、トラブルを防いでいきましょう。
派閥を作ろうとする人への対処法
自分に自信がない人は、仲間同士で群れ、派閥を作ろうとする傾向があります。目の前の人を敵か味方かにわけ、味方に対しては尽くす一方、敵に対してはトコトン攻撃してきます。
たとえばこんなケースがあります。先輩介護職のAさんは、上司にとても批判的。あなたに対しても上司の悪口を言っては、同意を求めてきます。あなた自身はどちらの味方でもないのですが、Aさんに従わないと自分も悪口を言われてしまいそう・・・。
対処法
どちらかにつくと敵対関係に巻き込まれてしまうので、自分は中立の立場を守ることが大切です。
まずは休憩時間などに悪口を聞かされたら、同調して自分も悪口を言わないように気をつけて。「へえ、それは大変でしたね」「そうなんですね」「そんなことがあったんですね」など、相手が言っていることを認めるだけにとどめましょう。
ランチや飲み会などに誘われたら、できるだけ参加しないことがコツ。その際は相手に「敵認定」されないよう、ていねいに。「お誘いはとてもうれしいのですが、スケジュールが合わなくて・・・」「試験勉強がぜんぜん進んでいなくて、なんとか終わらせたいので、すみません」「ぜひ行きたいのですが、家族が体調を崩していて、今日は早く帰らないといけないので」など、誘ってもらった感謝を添えて断りましょう。
この2点を守って愛想よく接していれば、そのうちに「この人は敵でも味方でもないらしい」と考えてもらえるようになります。
何かと干渉してくる人への対処法
仕事に関係の深いことならまだしも、関係の薄いことやプライベートのことまで干渉してきたり決めつけたりされると、うんざりしてしまいますよね。
つい「放っておいてください!」と強く言いたくなりますが、ちょっと待って。困った介護職は否定されると感情的になり、激しく攻撃してきます。干渉をはねつけるのではなく、以下の対処法を試してみてください。
対処法
一番大切なのは、相手を否定しないこと。たとえば「なるほど、そういう見方もあるんですね、勉強になります。でもそれだと○○のときに困るかなと思ったので・・・」
いったん相手の主張を受け止め、認めるワンクッションを挟むことで、否定されたと感じさせないようにします。
それでも聞いてくれない場合には「先輩はすごいですね。私も先輩みたいにできたらいいんですけど・・・」「教えてくださってありがとうございます。自分なりにやってみますね」などと、相手を立てつつやんわりとかわしましょう。
いじめや陰口、嫉妬への対処法
ケース1
少し仕事が遅いCさんに対して、ひどい態度をとる介護職のBさん。きつい口調で叱責したり、無視したり、Cさんのいないところで陰口を言って笑ったり・・・これっていじめでは?
対処法
自信のない人は群れたがるものですが、仲間であることを確認するために、同じ人を標的にしてグループで陰口を言ったりすることがあります。Cさんは恰好の標的にされてしまっているようです。
こんなときは、あなたは中立の立場を貫いてください。陰口大会に巻き込まれてしまったら「陰口はやめましょうよ」と言うのではなく、「そんなことがあったんですね、大変でしたね」と、あくまでAさんをねぎらいつつ、Cさんについてはコメントしないように。
「陰口はダメ、Cさんはがんばってますよ」と主張しても、相手が聞く耳をもってくれることはそう多くはありません。逆にあなたが敵認定されてしまい、仕事がやりにくくなる可能性もあります。陰口が盛り上がらなければ、Cさんが仕事を覚えて手際がよくなるうちに、いじめもなくなります。
ケース2
介護職のDさんが、何かと自分をライバル視してくる。挑戦的な態度でつっかかってきたり、嫌みを言ってきたり。気にしないようにしていてもストレスはつのるばかり・・・
対処法
Dさんが持っていなくてあなたが持っているものについて、嫉妬されている可能性があります。それはたとえば仕事のポジションかもしれませんし、ご家族やスタッフからの信頼かもしれません。Dさんの価値観では、人生は勝つか負けるか。あなたに負けることは、あってはならないことなのです。
こういう人に対しては、こちらも誰かに愚痴を聞いてもらいたくなりますが、それはしないこと。相手の悪口を言うと、相手との勝負の土俵に上がることになってしまいます。「いつも負けることを気にしているなんて、かわいそうな人だな」と受け流しましょう。
「私のころは誰も助けてくれなかったものよ。今の人はいいわね」などカチンとくることを言われたら、「Dさんはご苦労されたんですね。本当にすごいですね」「頭が下がります」などと、相手を立てつつ受け流しましょう。
Dさんの挑発に乗らず、Dさん以外の人との人間関係を深めながら、誠実に仕事に取組んでいれば、次第にストレスに感じることも減ってくるはずです。
味方の立場からお願いしてみよう
周囲の職員を悩ませる、こうした介護職に対する対処法は、基本的に戦わないこと。彼らの考え方は、「敵か味方か」なので、敵に分類されると何を言っても反発され、逆に激しい攻撃を受けてしまいます。
行動を変えてもらうには、味方の立場からお願いするスタンスが有効です。「あなたはがんばっているよね、すごい人だよね。だから○○で私を助けてくれませんか?」という具合です。
「なぜ私がここまで気をつかわなくてはいけないの?」と理不尽に思うかもしれません。でも、ここでちょっと賢く自制的にふるまうことで、こうした介護職からも信頼を得ることができます。
いったん助けてあげようと思ってもらえると、ものすごいコミュニケーション力や結束力を駆使して、強力な味方になってくれることも。
「嫌な人、むかつく!」と避けるのではなく、「同じ介護職同士、この人も仲間なんだ」と気持ちを切り替えられたらいいですね。ご紹介した方法を少しずつでも、日々のコミュニケーションに意識して取り入れてみてください。