
2024年の介護報酬改定では処遇改善加算が大きく見直され、2025年度から本格的に適用が開始されました。国は介護職員の賃上げを確実に進める方針を掲げていますが、「本当に給与は上がるの?」「自分の職場には反映されるの?」と疑問をもつ介護職員の方もいるでしょう。
本記事では、国の方針や給与への影響、給与アップのためにできることなどをお伝えします。賃上げの動向に興味がある方や転職すべきか悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
国の方針「新加算で確実に賃上げ」
政府は2025年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)」で、「賃上げこそ成長戦略の要」と位置づけ、医療や介護などの分野においても、従来のコストカット型から賃上げ重視へ転換する方針を明確に示しました。
具体的には、2024年導入の介護職員等処遇改善加算(新加算)を軸に、2024年度で平均2.5%、2025年度にはさらに2.0%のベースアップ実現を掲げています。新加算では、新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の底上げに充てることが義務化され、賞与などの一時的な対応ではなく、給与水準を確実に引き上げる仕組みが導入されました。また、事業所が加算を取得しやすいよう、要件や手続きも見直されました。
そもそも処遇改善加算って?仕組みをおさらい
「介護職は他産業よりも給与水準が低い」という課題を改善するため、2009年に介護職員処遇改善交付金が導入され、2012年に介護職員処遇改善加算へ移行しました。事業所が国に加算を申請して認可されると、介護報酬に上乗せされ、事業所を通じて介護職員の給与に充てられるという仕組みです。
従来の3つの加算(介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算・介護職員等ベースアップ等支援加算)は見直され、2024年6月から介護職員等処遇改善加算(新加算)として一本化されています。
新加算には4区分あり、要件(キャリアパス要件・月額賃金改善要件・職場環境等要件)を満たすほど加算率が高くなります。
【加算率:訪問介護の場合】
- 新加算Ⅰ:加算率24.5%
- 新加算Ⅱ:加算率22.4%
- 新加算Ⅲ:加算率18.2%
- 新加算Ⅳ:加算率14.5%
また、旧加算では加算の種類ごとに配分ルールが細かく分かれていましたが、新加算では介護職員への配分を基本としつつも、事業所の裁量で柔軟に対応できるようになりました。そのため、介護職員以外の職員や非正規職員なども配分の対象になる可能性があります。
いつ給与へ反映される?いくら上がる?
現在の新加算は2024年6月にスタートしていますが、その要件の中には猶予期間を経て2025年度から適用されたものもあります。「月額賃金改善要件Ⅰ:新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善にあてる」も、そのひとつです。いずれかの新加算を取得・届出している事業所は全体の95.5%にのぼるため、程度の差はあれ、多くの事業所ではすでに賃上げが実現していると思われます。
ただし、新加算では配分ルールが緩和され、誰にどのように分配するかは事業者にゆだねられているため、実際に支給される金額は事業所それぞれです。職員に均等に配るケースもあれば、勤続年数や役職に応じて差をつけるケースもあるため、人によっては「思っていたほど給与が上がらなかった」と感じるでしょう。
給与アップのためにできることは

いまの勤務先で賃上げが実感できない場合、転職を考える人もいるでしょう。例えば、最も加算率の低い新加算Ⅳの事業所に勤務している場合、加算率の最も高い新加算Ⅰの事業所へ転職するのも、給与アップの有効な方法のひとつです。要件の厳しい新加算Ⅰを取得している事業所は、評価制度や昇進制度が整っていて、経営基盤が安定している法人が多く、安心して働ける可能性が高いです。ただし、加算額の配分方法は事業所に裁量があるため、必ずしも期待通りに給与アップにつながるとは限らないことを念頭に置いておきましょう。
転職以外で給与アップを目指すなら、短期的な方法としては夜勤で手当を増やしたり高時給の副業をしたりする、長期的には上位資格の取得や昇進といった方法があります。
とくに、資格の有無は平均給与額に大きく影響します。2024年9月の介護職員の平均給与額の状況(月給・常勤の者、保有資格別)をみると、「介護福祉士」は350,050円であるのに対し、「保有資格なし」は290,620円と6万円近くの差があります(①)。介護職の入門資格である「介護職員初任者研修」は324,830円なので、保有資格がない人はぜひ取得することをおすすめします。
給与アップのためには、「どこで働くか」だけでなく「どんな働き方をしたいか」「どうキャリアを積みたいのか」という視点も持っておきましょう。
①出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」介護従事者等の平均給与額の状況(月給・常勤の者、職種別)
賃上げは進むも、まだ先は長い。自分で動くのも手
介護職の給与は確かに年々上昇しています。処遇改善に重点をおいた改定があった2009年の介護職員の賃金は25万円でしたが、2024年は30.3万円まで上がっています(②)。この上昇率は全産業の平均賃金の1.5倍です。しかし、全産業の平均賃金は2009年35.1万円、2024年38.6万円と、この15年間で両者の差は縮まってはきているものの、まだ8万円以上の開きがあります。国は定期的に処遇改善をおこない、2025年も「+2.0%のベースアップ」という方針を掲げていますが、両者の差が埋まるまでにはまだ長い年月がかかるでしょう。
とはいえ、賃上げは確実に進んでおり、今後も積極的な処遇改善は続くでしょう。その効果を待つだけではなく、資格取得や働き方の工夫によって、キャリアを少しずつ自分で底上げするのもひとつの手です。場合によっては転職という選択肢も視野に入れながら、納得のいく働き方を選んでいきましょう。
②出典:厚生労働省「介護職員の処遇改善について」賃金構造基本統計調査による介護職員の賃金の推移









