利用が進まない介護休暇制度、公務員の現状は?

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育児・介護休業法書類イメージ

日本の要介護認定者数は年々増加しており、それにともない家族を介護している人も増えています。親を介護するというとき、子の年代の多くは40~50代になります。働きながら介護をしている方の中には、精神的、肉体的に負担を感じている方や、「何度も仕事を休むことは勤め先に迷惑がかかるのでは・・・」と離職を考える方もおられます。

家族の介護・看護を理由に仕事を辞めたという人は、平成29年度の調査では9万9千人、過去10年でみても毎年8~10万もの人が離職していることがわかっています。今まで続けてきた仕事を辞めることは、大きなライフスタイルの変化になりますし、少子高齢化が進む日本にとって、労働人口の減少は大きな問題です。

令和元年版高齢社会白書(全体版) より

みなさんは、働く人が仕事と介護を両立できる介護休暇制度があることをご存知でしょうか?制度を利用した人は15.7%、介護休暇の利用率にいたっては2.3%というデータがあります。(平成28年 改正育児・介護休業法 参考資料集/厚生労働省雇用均等・児童家庭局 職業家庭両立課)介護と仕事の両立は、大きな社会問題であるにもかかわらず、うまく休みを取りながら介護をする社会になっているとはいえません。制度を有効に活用できていないことも理由のひとつかもしれません。
では、その制度を制定した公務員の状況はどうでしょうか。厚生労働省をはじめとする国家公務員、地方公務員向けに、制度をPRするリーフレットなども作成されています。今回は、公務員の介護休暇制度を中心に、介護をしながら働くことについて考えていきましょう。

公務員の介護休暇制度とは?

まず、国家公務員の状況をみてみましょう。国家公務員の常勤職員に対しては、独自に「仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針」が定められています。

制度は、働く人が利用しやすいように、たびたび制度の改正が行われています。現在、さまざまな介護のシーンで活用できる介護休暇制度の大きな要点は、以下の2つです。

●まとまった期間で介護を行いたい場合に、連続した休暇を取得できる
●勤務時間中に、1時間単位で休暇を取得できる

また非常勤職員については、以下のような記述があります。

“一定の要件を満たす非常勤職員は、要介護者である家族を介護するため、介護休暇、短期介護休暇及び介護時間を取得することができる。また、介護を行う非常勤職員は、早出遅出勤務、休憩時間の短縮・延長、深夜勤務の制限及び 超過勤務の免除・制限の制度を利用することが可能である。

>人事院 仕事と育児・介護の両立支援制度の活用に関する指針について 平成30年3月30日(7~9ページ)

教員や消防士、警察など、全国の地方公務員の、介護休暇制度をみていきましょう。地方公務員については、地域によって条例で定められるため、制度の細かい内容は異なりますが、基本的な考え方は国家公務員と同じです。
またすべての労働者向けに定められている「育児・介護休業法」の内容についても、日数などの差はありながら、こちらも基本的な考え方は国家公務員と同じです。

介護休暇制度、公務員の利用状況は?

データレポート資料イメージ

では、公務員はどのくらい制度を利用しているのでしょうか?
まず、一般職国家公務員は、おおまかに常勤社員と非常勤社員に分かれます。在職数は、令和元年7月1日現在で常勤社員は267,425人、非常勤職員は149,683人です。(内閣官房内閣人事局)

人事院の調査によると、40万人を超える職員数に対し、令和元年の介護休暇取得者は246人、非常勤職員では56人でした。介護休暇制度の利用は少しずつではありますが増加しているように見てとれます。

常勤職員 非常勤職員
令和元年 平成30年 増減 令和元年 平成30年 増減
介護休暇 246人 199人 47人増 56人 58人 2人減
介護時間 65人 61人 4人増 15人 14人 1人増

>人事院 仕事と家庭の両立支援関係制度の利用状況調査(令和元年度)の結果について(5ページ)より作成

また、地方公共団体の職員の総数は2,736,860人です。うち、平成30年介護休暇取得者は2,663人、介護時間取得者数は552人でした。(一般職に属する職員(警察・消防・教育公務員含む))

>総務省 平成30年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果 (11~12ページ)

休暇制度を利用したい人がどれだけ利用できているのかを読み取れるデータはありませんが、日本全体で介護を理由とする離職者が9万9千人ということから見ても、働く人が制度を利用している人はまだ少数のように見えます。
政府が「一億総活躍社会」に向けて「介護離職ゼロ」を掲げたのは2016年。介護を理由とした離職に歯止めをかけることができていないのは前にお伝えしたとおりです。1時間から取得できる休暇取得なら、ちょっとした手続きやケアマネジャーとの面談といった用事にも、職場に遠慮することなく利用できるはず。介護をしながら働きたい人にとって、介護休暇制度はとても利用価値がある制度であるはずです。

休暇制度の職員への認知が十分に行われているとすれば、まずは制度を定めた公務員の職場で活用を進めることで、社会全体へと広げていくべきなのかもしれません。

休みづらさを軽減し、介護も仕事も気持ちよく

官民を問わず、これらの制度利用が進んでいないのはなぜでしょうか?
介護をしながら働く人に、介護休暇制度を利用していない理由を聞いてみると「介護に係る両立支援制度がないため」という回答が最多となっていて、とくに離職者では45.3%。勤め先の制度がない、またはあっても知られていないために、やむを得ず離職を選ばざるを得ないケースも少なくないようです。

>「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」49ページ(平成24年度厚生労働省委託調査:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

では、勤め先である事業者側はどうでしょうか。

調査によると、「仕事と介護の両立で悩んでいる従業員がいても課題が顕在化してこない」との回答が43.8%、「仕事と介護の両立について、社員との間にどのようなニーズがあるのかわからない」との回答が30.4%あり、必要性を認識しながらも従業員の悩みが見えておらず、制度を導入することに踏み切っていないのが実態のです。

>「仕事と介護の両立に関する企業アンケート調査」結果概要27ページ(平成24年度厚生労働省委託調査:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

介護を理由に離職した人の変化を見ると、経済的、精神的負担が増えたという人が半数以上にのぼっています。介護による離職は、本人はもちろんのこと、事業所にとっても経済的損失となります。「ほんとうは仕事を続けたかった」「ほんとうは仕事を続けてほしかった」従業員と事業者の間にすれちがいが起きているなら、とても残念なこと。介護休暇制度をしっかり活用していくことで、お互いにとってハッピーな結果となりそうです。

>「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」29ページ(平成24年度厚生労働省委託調査:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)

協力しあい理想的な働き方を

ワーク・ライフ・バランスの関係イメージ

働く人にとって、「職場で私的な事情を話しづらい」という方もいらっしゃるでしょう。しかし、家族を介護することも仕事をすることも、何もうしろめたいことはないはずです。一人でかかえるよりも周りの方と助け合うことで、お互いに介護を含めた働き方を見直すチャンスになります。家族の介護は、だれもが直面する可能性があるからです。

そして、休みをいただく際には、周囲への感謝の気持ちや配慮は忘れずにこころがけたいものです。上手に利用することで、大切な家族の介護と、やりがいのある仕事の両方がかなう、今までよりも充実した日々が待ち受けているかもしれません。互いに理解しあいながら、よりよいライフスタイルを築きたいものですね。

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