「重度訪問介護従業者」養成研修の内容、取得しやすさ

資格・スキル


介護・福祉業界には、様々な資格や研修が存在していますが、「重度訪問介護従業者養成研修」は、重度の肢体不自由者に対して、より専門的な介護サービスを提供できるようになる研修です。

障がい区分には段階があり、段階に応じて提供できる介護サービスの内容が異なるため、重度訪問介護従業者の養成研修にも、それぞれ異なる課程があります。

重度訪問介護従業者養成研修の資格を持っていないと、訪問介護ができないというわけではありませんが、今後高齢化社会が進み、優秀な介護従業者が求められるであろう現代において、ぜひチェックしておきたい資格でもあります。

今回の記事では、そんな重度訪問介護従業者の養成研修について、お話していきます。

重度訪問介護従業者養成研修の内容


重度訪問介護従業者の養成研修は、大きく2つの過程に分けられています。

  • 基礎課程
  • 追加課程

さらに都道府県によっては、喀痰吸引等研修などが含まれる「統合過程」がある場合もありますので、事前に確認しておきましょう。
以下では、重度訪問介護従業者 養成研修の「基礎課程」と「追加課程」、そして「統合過程」のそれぞれの内容について、さらに詳しくみていきます。

<参考>
大阪府「重度訪問介護従業者養成研修の指定要項等」

重度訪問介護従業者 養成研修「基礎課程」について

重度訪問介護従業者 養成研修「基礎課程」を習得する目的は、重度の肢体不自由者であって、常時介護を要する障がい者等に対する入浴、排せつ及び食事等の介護、調理、洗濯および掃除等の家事、ならびに外出時における移動中の介護に関する基礎的な知識・技術を習得することとされています。

<参考>
熊本県障がい者支援課「重度訪問介護従業者養成研修の研修事業者の指定について」(PDF)

~重度訪問介護従業者 養成研修「基礎課程」の内容の例(東京都の場合)~

東京都の場合、重度訪問介護従業者 養成研修「基礎課程」は、講義が3時間・実技が7時間の、計10時間の研修となります。

<基礎課程研修の講義の例>

  • 重度の肢体不自由者の地域生活等に関する講義(2時間)
  • 基礎的な介護技術に関する講義(1時間)

<基礎課程研修の実技の例>

  • 基礎的な介護とコミュニケーションの技術に関する実習(5時間)
  • 外出時の介護技術に関する実習(2時間)

ここで挙げているのはあくまで一例であり、「基礎課程」研修の細かい内容は、実施する自治体によって違いがありますので、事前に確認しておくことが必要です。

<参考>
厚生労働省「重度訪問介護の現状等について」(PDF6ページ目)

重度訪問介護従業者 養成研修「追加課程」について

基本的に重度訪問介護従業者養成研修「追加研修」の受講対象者は、「基礎課程」をすでに修了していることが条件となります。

「追加課程」を習得する目的は、基礎課程において修得した知識及び技術を深めるとともに、特に重度の障がい者に対する、緊急時の対応等に関する知識・技術を修得することとなっています。

<参考>
熊本県障がい者支援課「重度訪問介護従業者養成研修の研修事業者の指定について」(PDF)

~重度訪問介護従業者 養成研修「追加課程」の内容の例(東京都の場合)~

東京都の場合、重度訪問介護従業者 養成研修「追加課程」は、講義が7時間・実技が3時間の計10時間の研修となります。

<追加課程研修の講義の例>

  • 医療的ケアを必要とする重度訪問介護利用者の障がい及び支援に関する講義(4時間)
  • コミュニケーションの技術に関する講義(2時間)
  • 緊急時の対応及び危険防止に関する講義(1時間)

<追加課程研修の実技の例>

  • 重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習(3時間)

重度訪問介護従業者養成研修「追加研修」の内容も、「基礎課程」と同様に、実施する自治体によって違いがありますので、事前にしっかりと確認しておきましょう。

<参考>
厚生労働省「重度訪問介護の現状等について」(PDF6ページ目)

重度訪問介護従業者 養成研修「統合課程」について


都道府県によっては、重度訪問介護従業者 養成研修において「統合課程」を実施しているケースがあります。

<統合課程研修の講義の例>

  • 重度訪問介護の制度とサービス(1時間)
  • 重度訪問介護利用者の理解(1時間)
  • 基礎的な介護技術に関する講義(1時間)
  • 人権啓発に関する知識(2時間)
  • コミュニケーションの技術に関する講義(2時間)
  • 抱きかかえ方及び移乗の方法(1時間)
  • 車椅子の移動介助(2時間)
  • 生活行為の介助(3時間)
  • 喀痰吸引を必要とする重度障がい者の障がいと支援に関する講義、緊急時の対応及び危険防止に関する講義1(3時間)
  • 経管栄養を必要とする重度障がい者の障がいと支援に関する講義、緊急時の対応及び危険防止に関する講義2(3時間)

<統合課程研修の実技の例>

  • 基礎的な介護と重度の肢体不自由者とのコミュニケーションの技術に関する実習(3時間)
  • 外出時の介護技術に関する実習(2時間)
  • 喀痰吸引等に関する演習(2時間)
  • 実習オリエンテーション(計1時間)
  • 重度の肢体不自由者の介護サービス提供現場での実習(4時間)

<参考>
社会福祉法人「大阪重症心身障がい児者を支える会」研修スケジュール
熊本県障がい保健福祉ホームページ「重度訪問介護従業者養成研修について」

重度訪問介護従業者養成研修がどう役立つのか?


事前に、重度障がい者介護・福祉に関する専門的な知識や技術が無いまま、業務を行うことは、想像以上に心身への負担が大きく、相手の気持ちを理解できないまま、仕事を進めてしまうことがあります。

しかし、重度訪問介護従業者養成研修を修了しておくことにより、“障がい者福祉とは何なのか?”という基礎から学ぶことができるので、実際の仕事で戸惑うことが少なくなります

また、重度の障がいを持つ利用者への接し方や、対話の仕方も学べるので、必要な援助を行いながらコミュニケーションをとることにも役立つことでしょう。

重度訪問介護従業者養成研修は介護報酬の加算対象なので就職にも有利!?

岩手県盛岡市を例に挙げますと、重度訪問介護従業者養成研修の資格を取得しておくと、重度障がい者包括支援対象者を介護した場合には報酬が15%加算され、障がい支援区分6対象者の場合は8.5%が加算されます。

あくまでも事業所に対して、報酬が加算されるということなのですが、「重度訪問介護従業者養成研修」を修了している人材がいないと、該当報酬が加算されませんので、必要な人材として事業所から求められやすくなります。

その他、転職がしやすくなったり、キャリアアップの結果、年収アップに繋がったりする可能性もあるでしょう。

<参考>
岩手県盛岡市HP「訪問系事業従業者資格一覧」(PDF)

重度訪問介護従業者は今後注目しておきたい資格


現在、障がい者福祉の制度も見直されてきており、様々な分野で事業所に対して報酬が減額・増額されている状況にあります。

この記事で説明してきた、「重度訪問介護従業者養成研修」は必須の資格ではないですが、数日間の授業で介護に関する深い知識が学べますので、介護士としてのスキルアップ・キャリアアップには適していると言えるでしょう。

重度訪問介護従業者養成研修は、介護の仕事をまだ始めたばかりの人も、始めようかなと思っている人も、ぜひ注目していただきたい研修の1つなのです。

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