国家資格である「介護福祉士」を取得して実績を積んだら、次の目標にはどんなものがあるでしょうか? その選択肢のひとつが、介護福祉士の上位資格とされる「認定介護福祉士」資格です。取得のハードルは高いですが、そのぶん現場で役立つ知識が幅広く得られ、リーダーの役割も自信を持って果たせるようになるのがメリット。
介護福祉士のキャリアアップとしては、その他にも「ケアマネジャー」資格を取得してケアマネ業務に携わる道、「喀痰吸引等研修」や「介護予防運動指導員」などの資格を取得して給与アップを目指す道などがあります。
「認定介護福祉士」を中心に、それぞれ下記で詳しくご紹介していきますので、ぜひ今後のキャリアプランの参考にしてみてくださいね。
認定介護福祉士とは
「認定介護福祉士」は、介護福祉士の上級資格として「認定介護福祉士認定・認証機構」という団体が認定している民間資格です。あらゆる介護知識に精通し、介護現場でのトップリーダーとして活躍できる人材を育成することが、この資格の狙いです。
認定介護福祉士になるためには、下記の受講要件を満たしたうえで、「認定介護福祉士養成研修」を受講・修了しなくてはなりません(項目によっては受講要件のないものもあります)。また一度資格を取得すれば終わりではなく、5年ごとの更新制になっていることも特徴です。
【受講要件】
・介護福祉士資格を持っている
・介護福祉士を取得後5年以上の実務経験がある
・介護職員を対象とした現任研修※の100時間以上の研修歴がある
・研修実施団体の課すレポート課題または受講試験で一定水準の成績を修めている
・介護職の小チームのリーダーとしての実務経験がある
・居宅サービス、居住(施設系)サービスの両方で生活支援経験がある 等
※介護福祉士資格取得後2年未満を対象とする「介護福祉士基本研修」、介護福祉士資格取得後2年程度の実務経験者を対象とする「介護福祉士ファーストステップ研修」など
【研修内容と時間】
●認定介護福祉士養成研修Ⅰ類(13科目)
医療、リハビリ、福祉用具と住環境、認知症、心理・社会的支援、他職種との連携・協働、介護の小チームリーダーに対する指導法などを講義・講習形式で学ぶ。345時間(このうち143時間は課題学習で学ぶことも可)。
●認定介護福祉士養成研修Ⅱ類(9科目)
根拠に基づく介護の指導力、応用力、地域の介護力を高める力等を講義・講習形式で学ぶ。255時間(このうち121時間は課題学習で学ぶことも可)。
【取得にかかる費用】
カリキュラムは項目ごとに申し込むことができる。実施団体によって異なるが、1日の講義で介護福祉士会の会員であれば8,000円、非会員であれば16,000円ほど。全カリキュラムの費用を合計すると、会員は30万円ほど、非会員は60万円ほどの費用が必要となる。
【取得にかかる期間】
I類とⅡ類合わせてカリキュラムは全600時間だが、そのうち264時間は事前課題や事後課題の提出でもOK。すべてのカリキュラムを修了するには1年半以上が必要。
認定介護福祉士を取得するメリット
上記でご紹介したように、認定介護福祉士は受講要件が厳しいうえにかなりの費用と労力を要する資格です。ハードルの高さを考えると、かけた労力にメリットが見合うのかが気になるところですね。
実際のところ、認定介護福祉士は公的資格ではなく民間資格なので、取得が直接収入アップにつながるパターンは多くありません。純粋に自己研鑽の一環として学びを深めたい人や、同じ志を持つ介護福祉士の仲間を作りたい人にとっては期待通りのメリットを得られますが、かかった費用や労力をペイできるほどの給与アップは難しいようです。
ただし、認定介護福祉士は高度な技術と知識でチームを率いることができるので、資格取得をきっかけに主任やリーダーといった役職へと昇進し、それによって待遇が良くなる可能性は十分考えられます。
また介護業界内で転職を考えた時には、現場でリーダーの役割を果たせる実力ある人材は常に高い需要があるため、理想の転職を叶えるための大きなプラス材料になるでしょう。
認定介護福祉士養成研修は、全カリキュラム一括ではなく学びたい項目だけを選んで受講することも可能。感染症対策としてオンライン方式を採用した講座も多くなっており、思ったよりも手軽に受講できますので、興味を持った方は検討してみてくださいね。
その他のキャリアプラン
それでは「認定介護福祉士」以外のキャリアアップの道筋もご紹介していきましょう。
◆ケアマネジャーを目指す
介護福祉士として5年以上の実務経験を積んでいれば、「介護支援専門員実務研修受講試験」を受験・合格したうえで「介護支援専門員実務研修」を修了することで、「ケアマネジャー」として活躍することができます。
厚生労働省の調査によると、介護職員等特定処遇改善加算を取得している事業所でのケアマネジャーの平均給与額は362,510円で、介護福祉士の325,550円より1割ほど高くなっています※。
またケアマネジャーになれば日勤中心で働けることもメリット。介護現場からはやや離れますが、培った介護の知識を活かして活躍することができます。
※参考:令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要(厚生労働省)
◆ダブルライセンスで専門性を身につける
介護福祉士に加えてもう一つ資格を取得することで、自分の得意分野をつくり専門性を磨くことができます。事業所によっては資格手当が出る場合もあり、収入アップが目指せる可能性も。
喀痰吸引等の実地研修・届出
実務者研修で喀痰吸引等研修を受けていても、それだけでは喀痰吸引は行えない。就業先の登録喀痰吸引等事業所で実地研修を受け、修了証明書を発行してもらい、社会福祉振興・試験センターへ届出をすることで、喀痰吸引等を行えるようになる。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護の指導や、チームケアの推進を担える人材を育てる研修。受講の対象者は、おおむね5年以上の実務経験があり、認知症介護実践者研修を修了して1年以上経過していて、チームリーダーになる予定がある人。研修修了者を配置することが認知症ケア加算の要件になっていることもあり、職場での評価につながりやすい。
認知症ケア専門士
3年以上の認知症ケアの実務経験があれば受験可能。民間資格ではあるが介護業界での評価は高く、認知症ケアのスキルを高めたい人におすすめできる資格。
ガイドヘルパー(移動介護従事者)養成研修
ガイドヘルパー資格を取得するには各都道府県等が指定する研修を受講する必要があるが、介護福祉士資格を持っていると科目が一部免除になる。介護福祉士資格だけでは視覚障害の方や全身性障害の方の外出サポートができないため、この資格を持っておくと仕事の幅を広げられる。
介護予防運動指導員
介護福祉士の有資格者は、31.5時間の講義・演習を修了し、試験に合格することで「介護予防運動指導員」資格を取得できる。利用者様に合わせた介護予防プログラムの作成や、トレーニング、口腔ケア、生活習慣へのアドバイス等を行えるようになり、仕事の幅ややりがいがアップ。
福祉レクリエーションワーカー
150時間ほどのカリキュラムで、介護施設などの福祉の現場で役立つレク支援の技術を身につけられる。介護福祉士の有資格者はレポートの一部免除や費用割引あり。ただし令和4年度は新規受講受付を休止中。
なりたい自分にキャリアアップしよう
介護福祉士として経験を積み自信もついて、次に何かに挑戦したくなったら・・・そんなときに目標にすることができる「認定介護福祉士」資格についてご紹介しました。ケアマネジャーを目指す、ダブルライセンスで専門性を身につけるといった、ほかの選択肢とぜひ比較検討してみてくださいね。
もちろん介護福祉士のままでも、勤めている事業所でサービス提供責任者になったり、管理職を目指すなどの道も考えられます。自分の得意なこと、やりたいこととじっくり相談しながら、ぜひ納得できる道を歩んでくださいね。