認知症介護基礎研修は2024年から完全義務化!メリットは?費用は?

資格・スキル

笑顔でみつめる介護職員

これまではまったく介護の経験がなく、資格を持っていなくても、介護の仕事に就くことができました。しかし2024年からは、認知症ケアについての基礎的な研修である「認知症介護基礎研修」が義務となります。

義務化が決まったのは2021年4月の介護報酬改定。2024年3月までは経過措置がとられていますが、2024年4月からは完全義務化となります。ただし「介護職員初任者研修」などの介護・福祉系資格、医療系資格を持っている人は免除されます。

義務化の対象となる人や研修のカリキュラム内容、かかる時間、費用などをご紹介していきますので、これから介護の仕事を始めようと思っている人は、ぜひチェックしてくださいね。

認知症介護基礎研修とは

手を重ねる介護職員

「認知症介護基礎研修」は、認知症本人を尊重した介護を行うための基礎的な知識や技術、理念を身につけることを目的とした新任介護職向けの公的研修です。

研修内容は基礎的なもので、かかる時間も6時間程度とハードルは低め。受講するために必要な資格や経歴などはなく、誰でも申し込めば受講することが可能です。

上位資格として、中堅介護職向けに「認知症介護実践者研修」→「認知症介護実践リーダー研修」→「認知症介護指導者養成研修」の順に研修が用意されています。

認知症介護基礎研修のメリット

入居者とレクリエーションを行う介護職員

介護の仕事を始めたばかりで認知症のことをまったく知らなければ、認知症の利用者様に対してどう接して良いか分からず、戸惑うことも多いはず。その点、この研修には認知症ケアに必要な基本知識がコンパクトにまとめられています。

認知症の人がどんな困難を抱えているのか、どんな心理状態にあるのかなどを知っていれば、「ものを盗まれた」「私の家はここじゃない」といった対応に困る訴えにも、相手の気持ちに寄り添った対応がしやすいもの。

気持ちを受け止めてもらうことで、認知症の方がうそのように落ち着きを取り戻すことは多く、ケアをする人とされる人両方の不安やストレスが軽減できます。介護の仕事に慣れるまでの負担を軽くすることができ、仕事を楽しむ心の余裕につながると考えられます。

義務化の対象者は?

パソコンで研修を受講する介護職員

認知症介護基礎研修は、下記の介護系や医療系その他の資格のいずれかを持っていれば免除となります。

  • 《介護系》介護福祉士、実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程修了者、訪問介護員養成研修(一級・二級)修了者、認知症介護実践者研修修了者、認知症介護実践リーダー研修修了者、養成施設で認知症の科目を受講した人や福祉系高校の卒業生(認知症の科目を履修していることを証明できる書類が必要)
  • 《リハビリ系》理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
  • 《相談職》社会福祉士、精神保健福祉士、介護支援専門員
  • 《医療系》医師、歯科医師、薬剤師、看護師、准看護師
  • 《その他》管理栄養士、栄養士

上記に挙げた資格のいずれも持っておらず、身体介護(高齢者の身体に直に触れる介護)の仕事を行う人は、2024年4月以降、1年以内に「認知症介護基礎研修」を受講する必要があります。

介護職員として無資格の人を配置している介護サービス事業者は、採用後1年以内にこの研修を受講させなくてはならず、違反すると行政処分の対象となる可能性があります(直接介護に関わる可能性がない職員は受講の必要はありません)。

参照:介護保険最新情報Vol.934令和3年3月16日(厚生労働省老健局)

カリキュラム内容、時間、費用

自宅のパソコンで勉強する女性

多くの自治体で採用されているのが、認知症介護研究・研修仙台センターが運営するeラーニングのカリキュラム。スマートフォンやタブレットで動画を視聴し、○×式の確認テスト、自己ワークを終えれば修了証書が発行されます。この場合の費用は3000円で、カリキュラム内容は下記の通りとなっています。

  • 研修の目的、学習前の確認問題
  • 序章:認知症を取り巻く現状
  • 第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方→《確認テスト》
  • 第2章:認知症の定義と原因疾患→《確認テスト》
  • 第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解→《確認テスト》
  • 第4章:認知症ケアの基礎技術→《確認テスト》
  • 修了証書発行

動画を視聴し、確認テストをクリアすると次の項が視聴できます。視聴時間はトータルで150分程度ですが分割して視聴することもでき、途中のテストも難易度は高くないため、気負わず取り組むことができます。

お住まいの自治体によって、eラーニング形式ではなく講義・演習形式である場合もありますが、その場合もだいたい6時間ほどで修了できるカリキュラムとなっています。かかる費用は無料~5000円ほどで自治体によって異なります。

都道府県・指令都市の認知症介護研修情報一覧(DCnet認知症介護情報ネットワークホームページ)

せっかく取るなら初任者研修がおすすめ

笑顔でほほ笑む2名の介護職員

2024年4月以降、まったく資格を持っていない介護職の方は1年以内に働けなくなってしまうため、何かしら介護系の資格を取る必要があります。

認知症介護基礎研修は短時間で取得できる点が魅力ですが、評価もやはりそれ相応。どうせ取るなら先を見据えて、認知症介護基礎研修が免除される下記の研修も検討したいところです。

生活援助従事者研修(カリキュラム時間:59時間)

ホームヘルパーとして生活援助サービスを行えるようになる。初任者研修のカリキュラムが59時間分免除される。

介護職員初任者研修(カリキュラム時間:130時間)

介護職としての基本的な知識と技術を身につけることができる。ホームヘルパーとして身体介護サービスを行えるようになる。無資格に比べて給与が高くなり求人数も多い。実務者研修のカリキュラムが130時間分免除される。

介護福祉士実務者研修(カリキュラム時間:450時間)

国家資格である介護福祉士を受験するために必要な研修で、介護職としての実践的な知識と技術を身につけることができる。たんの吸引など医療的ケアの基礎技術も学べる。サービス提供責任者になることができる。給与面や就職面で有利になる。

上記の3つのうち、どれを取得しても認知症介護基礎研修が免除になります。これらを修了しておくと、給与や就職などで目に見えるメリットが得られるだけでなく、国家資格である「介護福祉士」資格が取りたくなったとき、学んできたことが効率良く活かせます。

なかでもとくにおすすめなのが介護系資格のファーストステップといわれる「介護職員初任者研修」です。ポピュラーな資格なので多くのスクールから選べますし、修了者の求人も多く、持っていない人に比べて給与水準も高くなります。また上位資格である実務者研修では重複するカリキュラムが免除されるため、効率良く学ぶことができます。

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介護職としての第一歩を踏み出す研修

認知症介護基礎研修は、介護職にとってどうしても必要な知識をコンパクトにまとめた、初めの一歩となる研修です。

さほど負担なく修了できる点は魅力ですが、これからも長く介護の仕事を続けていきたいという思いがある方は、より実質的なメリットの大きい介護職員初任者研修等もぜひ、前向きに検討してみてくださいね。

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