「利用者様がなかなか本音で話をしてくれない」「前は○○したいと言っていたのに、聞くたびに言うことが変わる」「家族の要望を聞くだけで、ご用聞きみたいになっている」・・・ケアマネジャーにありがちなその悩み、もしかしたらアセスメントの際の「質問力」に問題があるのかもしれません。
このコラムでは、ケアマネジャーに欠かせない技術=「上手な質問の仕方」について解説していきます。正しい質問の方法を身につければ、利用者様やご家族との関係も円滑になり、ケアマネジャーの負担は大きく軽減されるはず。
さまざまな質問のパターンや、質問を始めるときや終わるときなどに使える、具体的な聞き方の例も挙げています。ぜひ参考にしてくださいね。
アセスメントの下準備
アセスメントでスムーズに質問に答えてもらうためには、まず下準備が必要です。アポイントをとるときに、「どんな話を聞かせてほしいのか、何を見せてほしいのか」を、前もって大まかに伝えておきましょう。また、あわせて「どのくらい時間がかかりそうか」についても伝えておくこと。これにより、利用者様の方も心の準備をすることができます。
訪問の際には、パンフレットや筆記具、名刺など、説明で使う準備物を忘れず持参します。また、被保険者証など利用者様側で準備しておいてほしいものがあれば、それも忘れず伝えておくようにしましょう。こうした下準備をきちんとしておくことが、スムーズなアセスメントにつながります。
質問を始めるとき
1.目的を伝える
まず始めに、質問の目的をしっかりとお伝えしておきましょう。相手の方がみんな、介護保険に詳しいわけではありません。「ケアマネジャーって何?」「アセスメントって何をするの?」という人に対しては、質問の目的を理解してもらうところからスタートしましょう。
例:「これから、○○さんが不自由を感じてらっしゃるところや、ここが大変だなと感じてらっしゃることをお伺いしますね。これは、どうしたらこれまで通りに暮らせるかとか、これ以上大変な思いをしないですむにはどうしたらいいかなどを、一緒に考えさせていただくためにする質問ですので、気になることは遠慮なくおっしゃってくださいね」
ほかにも、「介護保険のサービスを上手に使っていくための質問になります」など、相手の介護保険の理解度に応じて目的を説明しましょう。
質問の目的が十分に伝わっていないと、「なぜこんなことを聞いてくるのだろう」と疑問に思われたり、正直に答えていただけないこともあります。必要な情報を得るためには欠かせないプロセスです。
2.クッション言葉で配慮を伝える
質問の中には、あまり人には言いたくないものや、すぐには答えが出ないものなどもあります。そうした質問をするときは、事前に相手に対して配慮を伝えておきましょう。
例:
「答えにくいことをお聞きしますが・・・」
「今すぐでなくても、後日でもよいのですが・・・」
「無理のない範囲でよいですよ」
「お話いただける範囲でけっこうですので・・・」
このように冒頭にクッション言葉を入れることによって、相手の緊張がほぐれて話しやすくなります。
オープンクエスチョン、クローズドクエスチョンの使い分け
相手が自由に答えられるような質問を、オープンクエスチョンと言います。
例:
「実際にご自宅で過ごしてみて、気づいたことを教えていただけますか?」
「お食事に関してはどうされていますか?」
こうした質問に対しては、決まった答えがないので、答える側の自由度が高くなります。自由に話していただけるメリットがある一方、「どうって聞かれても・・・何を答えたらいいんだろう?」と戸惑われる方もいらっしゃいます。そんなときにはクローズドクエスチョン(閉じた質問)=イエスorノーで答えられる質問を交えて聞いていくとよいでしょう。
例:
「○○について、使いにくい点はありましたか?」
「お部屋の間を移動するとき、不安な点はありましたか?」
クローズドクエスチョンに「はい」か「いいえ」で答えてもらったうえで、「それはどんなところですか?」とオープンクエスチョンへつなげていくと、より深く掘り下げて聞き出すことができます。
なかなか話を引き出せない利用者様に対しては、クローズドクエスチョンの応用編として、いくつか選択肢を示して答えやすくする方法もあります。
例:
「ほかに何か気づかれたことはありますか?たとえば、お風呂場が使いにくいとか、トイレが使いにくいとか」
「お掃除とお洗濯を比べると、どちらが大変ですか」
「お食事の内容のほうはいかがですか?糖尿病をお持ちとのことですが、メニューや量の管理でお困りのことはありますか?」
このように、いくつかの選択肢の中から選べるようにすると、「言われてみれば・・・」と話を引き出せることがあります。
質問を終えるとき
1.簡潔にまとめる
誤解や認識のズレを防ぐために、最後に簡潔にまとめて、了解をとっておくとよいでしょう。
例:
「では、今日おうかがいしたことを簡単にまとめてみますね。もし間違っていたり、追加することがあれば、遠慮なくおっしゃってください。まず○○に関してですが・・・・という方針でいきたいと思います。次に○○に関しては・・・。最後に○○に関しては・・・されるご予定ということでよろしいですか?」
「漏れや私の勘違いはなかったでしょうか?」
このように話し合いを要約することで、「そんなつもりはなかった」「思っていたのと違う」といったトラブルを避けることができます。
2.訂正や追加、質問がないかを確認する
最後に、訂正や追加があれば相手が言い出せるよう、こちらからお聞きしておきましょう。
例:
「今日は以上になりますが、何か他におっしゃっておきたいことやご質問などはありますか?」
「今すぐ思いつかなければ、後日お電話でお聞きいただいても大丈夫ですよ」
「わからないことがあれば、いつでもご連絡くださいね」
このように伝えておくと、相手も「わからないことがあればまた聞くことができる」と安心できますし、「話をちゃんと聞いてもらえた」という満足感にもつながります。
ていねいな質問で、利用者様の思いを引き出そう
ケアマネジャーが忘れてはいけないことは、ケアプランは利用者様本人のためにあるということ。利用者様本人が「この介護サービスを利用して○○したい」「○○できるようになりたい」と目標を持つことから、ケアプランが生まれます。
それには、利用者様本人でさえ気づいていないかもしれない本当の思いに気づき、プランに反映していくことが必要です。質問力を磨くことは、そのために欠かせないスキル。
「この人は○○だから○○だろう」というケアマネジャーの決めつけや、発言力の強いご家族の意見ばかりで作られたケアプランでは、利用者様は本当の満足を得られません。ご本人の思いに沿っていないプランでは、急な変更が多くなったり利用拒否につながることもありえます。
ていねいな質問が、本人さえ忘れていたり押し殺していた思いを呼び起こすことがあります。質問力を磨いて、ぜひそうした思いを汲み上げていってくださいね。