介護士・介護職員と看護師。関係を良好に保つコツを聞く

介護の現場から

ハートマークを出し合う様子

介護の現場では、介護職だけでなく看護職やリハビリ職など、さまざまな職種が日々協力しあいながら業務を進めています。しかし立場や視点が異なる職種間では、意見の相違も起きやすいもの。とくに「看護職と介護職の連携がうまくいかない」といったケースは多いようです。

実際のところはどうなのか、今回かいごGarden noteでは、現役介護職員の方にヒアリングを行いました。業務内容が異なる2つの職種が、関係を良好に保ちながらサービスの質を上げていくために大切なものは何なのか、お話から学んでいきたいと思います。

看護師と介護職員は対立しやすい?

互いに背を向ける女性同士

利用者様の近くで生活を見守る介護職員は、いかにその人が自分らしく生きられるかを重視します。いっぽう看護師は、医療の専門知識を活用し、病気の治療や予防という視点から利用者様をサポートしています。利用者様の生活を支えるという目的は同じでも、このようにアプローチの方法が違うため、ケアに関して意見が食い違うことがあるのです。

それでもお互いの視点を尊重し合い、利用者様にとってよい結論が導き出せれば良いのですが、真剣に仕事に取り組むがゆえにこじれてしまうこともあり、異職種間の連携は奥の深いテーマとなっています。

かいごGarden noteでは今回、宮城県仙台市の特別養護老人ホームに勤める、20代女性介護職員の方にヒアリングを行いました。実務経験を8年持つこの方の勤める施設では、介護職員と看護職員の関係は良好で、スムーズな連携ができているそうです。そこにはどのような要因があるのか、以下でさっそくみていきましょう。

「入居者様のことは、常にそばで介護している介護職員が一番詳しい」

Q. お勤めの施設での普段のお仕事内容と、人員体制について教えてください。

A. 1ユニット10名の特別養護老人ホームで、入居者様の食事介助・排泄介助・入浴介助・移乗などの介護業務全般を行っています。施設全体で介護職員は75名、看護職員は9名在籍しており、1フロア(入居者様42名)に1名の看護師が常勤しています。19時以降に何かあれば、介護職員はオンコール当番の看護師に連絡し指示を仰いでいます。

Q. 看護師と介護職員の関係が悪化している介護施設もあると聞きます。お勤めの施設ではいかがですか?

A. 私の勤めている施設は、介護職員と看護師の仲がとても良いと思います。「介護と看護の差」があまり感じられないのです。それは、看護師の方々が介護の実情重視・現場重視で介護職員への困りごとに真剣に耳を傾けてくれるからだと思います。

たとえば、看護師の方から「こういうケースは今、ユニット対応できるかな?」と聞いてもらえたり、「このケア(処置)は何時だと都合がいい?」など普段のケアについても介護職員の意見を大事にしてくれたり。もし看護師の意見が介護の実情に即していないと感じれば話し合って解決できるので、不満が残ったままになるということがないのです。

看護師が「入居者様のことは、常にそばでケアをしている介護職員が1番詳しい」と信頼してくれているのが言葉や態度で伝わってくるので、私も「もっと入居者様の変化に敏感になろう」という意識につながっています。

感謝の言葉は欠かさない

形にした「ありがとう」

Q. すばらしいですね!看護師と介護職員との間でそのような良好な関係ができているのには、どんな要因があると思われますか?

A. 介護職・看護職関係なく、職員同士のコミュニケーションがよくとれていることは実感しています。普段から「そのマスク可愛いですね!手作りですか?」など、仕事と関係ない話もよくしているので、報告や相談もしやすい環境ができているのかもしれません。

Q. ご自身で何か気を付けていることはありますか?

A. 挨拶や感謝の言葉など、基本的なコミュニケーションは欠かさないようにしています。「お疲れ様です」「ありがとうございます」をきちんと言う。とくに感謝の言葉は大切ですよね。私の施設ではいつもどこかで「ありがとうございます!」「助かります!」の声が聞こえているほどです。

それから、相手の方を名前で呼ぶこと。「ナース」よりも「〇〇ナース」と名前で呼んだ方が、お互いに気持ちいいですし、雑音のなかでも振り向いてくれるなど反応もよいですよ。先輩方が必ず名前呼びしているのを知って、「これが良好な関係づくりのコツなんだ」と気づかせてもらいました。私は名前を覚えるのが不得意なので、ナースの名前を書いた紙を自分のネームプレートの裏に入れています(笑)

こちらのコラムも参考に≫「介護のチームワークを高めるコツとチームリーダーの心得」

看護師の的確な判断に助けられる

Q. 看護師からのアドバイスや意見が、介護現場で役立った具体例を教えてください。

A. 以前、足がむくんでいる入居者様がおられました。看護師に相談すると「みそ汁少なめ、お茶は1日1000CCまで、足を挙上して様子観察」の指示をくださり、そのようにしたところ改善しました。また、目や鼻がぐずぐずしている入居者様が、風邪かどうかの判断がつかないときに「既往歴・バイタル・本人の様子」から花粉が原因と見抜いてくださったこともありました。

Q. 医療の視点ならではですね。そのほかに看護と介護の連携がうまくいった成功例があれば具体的に教えてください。

A. 以前、入居者様で「眠れない・日中も夜間時もコールに敏感・落ち着いて過ごすことができない」という方がおられました。介護職員側としては、日中できるだけ起きていただいて職員と話したり、散歩をしたり歌を聴いていただいたりと手は尽くしたのですが、それでも落ち着かず、ご本人もぐったりしていました。

その様子を細かく申し送りに入力し、看護師へも共有したところ、看護師は水分量のチェック、排便の回数、トイレの回数、薬の飲み合わせなどを見て、医師に様子を伝えてくれました。その後看護師は、「落ち着かないのはスッキリしていないからかも」と予想し排便コントロールを実行。この見立てがみごと的中し、入居者様にも介護職員にも穏やかな日々がもどったということがありました。

看護師は医療の視点で「原因と結果」を見抜く目があってすごいと思います。もちろん介護職員側も判断できるだけの材料(記録)を集め、お互いに入居者様のために協力しています。

良好な関係がサービスの質を上げていく

手を合わせ一致団結する様子

Q. 看護師と介護職員の連携、良好な関係は「理想的な介護」につながると思いますか?

A. はい、他職種の連携や協力は、理想的な介護にとってとても重要なものだと思います。1つの眼差しだけで個人をみてしまうと、必ずどこかにへだたりができてバランスが悪くなってしまうからです。看護職員のもつ「医療の眼差し」、介護職員のもつ「介護の眼差し」。この2つの視点のバランスがとれてこそ、ベストな健康、環境、ケアをご提供することができると思いますし、それが「理想的な介護施設」のあり方ではないかと考えています。

もちろん私たち職員にとっても、長い時間をともに過ごす仲間なのですから、スタッフ同士の関係は良好な方がいいことは言うまでもありません。また実際、そのほうが入居者様も落ち着いて過ごされることが多いです。穏やかな空気感で入居者様がリラックスできることも、質の良いサービスをつくる環境要因のひとつだと捉えています。

お互いの仕事を知ることも大切

Q. お勤めの施設で、互いの視点を認め合う雰囲気が浸透しているのはなぜだと思われますか?

A. 普段のコミュニケーションを通じて、お互いに信頼、尊敬しあえているからではないでしょうか。看護職員は介護職員を信頼・尊重してくれますし、また介護職員も看護職員のことを尊敬しています。だからこそ、お互いに「ありがとうございます」と感謝の気持ちが自然に伝えられているのだと思います。

もうひとつ、良好な関係作りには互いの仕事を知ることも有効ではないかと思っています。以前、介護職員から看護師になった方がいらっしゃいました。介護の現場を経験されているので、こちらの相談ごとをすぐ理解してくださり、スムーズに解決したことがありました。

個人的には、「介護職員と看護職員の仕事をお互いに1日付き添ってみたらいいのにな」と思っています。ひとつの立場しか経験したことがないと、どこがどう大変なのかがわかりにくいこともあると思うのです。

現実的にはきびしいかもしれませんが、お互いの仕事の大変なところを知ることができれば、さらにサポートしやすいのではないでしょうか。

連携のカギはプロ同士認め合い、尊敬し合うこと

笑顔で並ぶ介護士と看護師、シニア女性

介護職員の方は、看護職の方と互いに対等な立場で認めあいながら、気持ちよく働けているとのこと。その要因は、普段から感謝の言葉や挨拶などを通じ、コミュニケーションがしっかりとれていることが大きいようです。

今、異職種間の連携がうまくいかず悩んでいるなら、まず職員間のコミュニケーション量を増やすことから取り組んでみてはいかがでしょうか。また、「お互いに一日の仕事に付き添って、どこがどう大変なのかを知る」というアイデアも出てきました。シフトをやりくりして、そのような研修を取り入れてみるのも良いかもしれません。

互いに命を支えるプロ同士、わかり合えれば後の話は早いはず。あなたの施設でも、連携がスムーズになることを願っています。

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