介護の仕事とひと口に言っても、介護職員をはじめさまざまな職種があります。これから介護の仕事に就こうと考えている方は希望する職種の給料がどの程度がご存じでしょうか。どのようにキャリアを積み重ねていけばよいか、具体的にイメージできていますか?
本記事では、厚生労働省が公表した令和3年度最新調査結果から、介護職員をはじめとする介護の代表的な職種の給料についてご紹介します。また、給料アップの方法についてもお伝えしますので、ぜひ今後のキャリアデザインやお仕事探しにお役立てください。
介護職員の給料|前年比で月額7,380円の増額!
介護業界は人手不足が常態化しており、その大きな原因のひとつが給料の低さです。国の処遇改善の取り組みにより、介護職員をはじめ介護従事者の給料は上昇を続けています。
下の表は、令和3年度介護従事者等の平均給与額等(常勤・月給の者)についてまとめたものです。
※厚生労働省令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果、第79表 介護従事者等の平均給与額等(月給の者),職種別,勤務形態別(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)より抜粋、作成。
引用
平均年齢 (歳) |
平均勤続年数 (年) |
実務労働時間 (時間) |
平均給与額 (円) |
平均給与額(円)内訳 | |||
平均基本給額 (円) |
平均手当額 (円) |
平均一時金額 (円) |
|||||
介護職員 | 44.7 | 8.7 | 163.6 | 316,610 | 187,180 | 81,110 | 48,320 |
看護職員 | 51.1 | 9.8 | 159.2 | 369,210 | 236,640 | 74,320 | 58,250 |
生活相談員 支援相談員 |
44.7 | 10.5 | 164.4 | 338,370 | 218,110 | 67,240 | 53,030 |
理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 機能訓練指導員 |
39.3 | 7.7 | 159.7 | 350,080 | 230,340 | 65,060 | 54,680 |
介護支援専門員 | 49.8 | 11.8 | 162.7 | 353,560 | 220,720 | 78,280 | 54,560 |
事務職員 | 47.1 | 10.7 | 161.9 | 301,940 | 205,860 | 45,580 | 50,500 |
調理員 | 47.1 | 9.1 | 162.0 | 259,270 | 182,530 | 33,100 | 43,650 |
管理栄養士 栄養士 |
40.6 | 9.5 | 160.8 | 311,190 | 210,550 | 44,840 | 55,800 |
平均年齢 (歳) |
平均勤続年数 (年) |
実務労働時間 (時間) |
平均給与額 (円) |
平均給与額(円)内訳 | |||
平均基本給額 (円) |
平均手当額 (円) |
平均一時金額 (円) |
|||||
介護職員 | 44.7 | 8.7 | 163.6 | 316,610 | 187,180 | 81,110 | 48,320 |
看護職員 | 51.1 | 9.8 | 159.2 | 369,210 | 236,640 | 74,320 | 58,250 |
生活相談員 支援相談員 |
44.7 | 10.5 | 164.4 | 338,370 | 218,110 | 67,240 | 53,030 |
理学療法士 作業療法士 言語聴覚士 機能訓練指導員 |
39.3 | 7.7 | 159.7 | 350,080 | 230,340 | 65,060 | 54,680 |
介護支援専門員 | 49.8 | 11.8 | 162.7 | 353,560 | 220,720 | 78,280 | 54,560 |
事務職員 | 47.1 | 10.7 | 161.9 | 301,940 | 205,860 | 45,580 | 50,500 |
調理員 | 47.1 | 9.1 | 162.0 | 259,270 | 182,530 | 33,100 | 43,650 |
管理栄養士 栄養士 |
40.6 | 9.5 | 160.8 | 311,190 | 210,550 | 44,840 | 55,800 |
表をみると、介護職員は他の職種と比較して平均基本給額は高くありませんが、平均手当額が高いことがわかります。これは、介護職員は処遇改善手当※・特定処遇改善手当・夜勤手当の取得率が他の職種よりも高いからです(同調査142表より)。
※処遇改善手当、特定処遇改善手当:サービス利用料に介護報酬を加算し、その利益を賃金として介護職員に還元する仕組み。要件を満たした施設が取得(届出)できる。
また、介護職員の平均給与額は前年比(令和2年)で月額7,380円増となり、他の職種も5,630~8,300円の増加となっています。特定処遇改善加算を取得(届出)している施設に限定すると、介護職員の平均給与額は7,780円の増額、未取得の施設では5,460円の増額となっています。令和3年度に新たに特定処遇改善加算を取得(届出)した施設では、前年比13,410円と、大きく増額しています。
調査では、特定処遇改善加算を取得している施設は「経営やケア方針の明確化」「スキルアップに向けた研修支援」「生産性向上のための業務改善」が、未取得の施設と比較して高い割合で実施されていることもわかっています。
このことから、特定処遇改善加算を取得(届出)している施設は、未取得の施設よりも平均給与が高いことに加え、働きやすい環境整備にも力をいれているといえます。
給料を上げる方法
介護従事者の給料が全体的に上昇していることは調査でわかりましたが、それは国の取り組みによるものです。では、給料を上げるために自分でできることは何でしょうか。ここでは4つの方法をご紹介します。
資格をとる
資格を取得すれば基本給があがったり資格手当がついたりするため、給料を上げることができます。
下の表(※)は、保有資格別(複数回答)介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者)です。
平均年齢 (歳) |
平均勤続年数 (年) |
実務労働時間 (時間) |
平均給与額 (円) |
|||
保有資格 あり |
||||||
介護福祉士 | 45.0 | 9.5 | 163.2 | 328,720 | ||
社会福祉士 | 39.9 | 8.9 | 164.0 | 363,480 | ||
介護支援専門員 | 49.2 | 13.0 | 163.6 | 362,290 | ||
実務者研修 | 45.0 | 7.7 | 165.6 | 307,330 | ||
介護職員初任者研修 | 46.7 | 8.1 | 164.6 | 300,510 | ||
保有資格なし | 40.6 | 5.2 | 164.2 | 271,260 |
平均年齢 (歳) |
平均勤続年数 (年) |
実務労働時間 (時間) |
平均給与額 (円) |
|||
保有資格 あり |
||||||
介護福祉士 | 45.0 | 9.5 | 163.2 | 328,720 | ||
社会福祉士 | 39.9 | 8.9 | 164.0 | 363,480 | ||
介護支援専門員 | 49.2 | 13.0 | 163.6 | 362,290 | ||
実務者研修 | 45.0 | 7.7 | 165.6 | 307,330 | ||
介護職員初任者研修 | 46.7 | 8.1 | 164.6 | 300,510 | ||
保有資格なし | 40.6 | 5.2 | 164.2 | 271,260 |
表にあるように、資格の有無で平均給与に大きな差があります。なかでも社会福祉士や介護支援専門員といった難関資格は、「保有資格なし」と比較して10万円近く平均給与が高くなっています。介護職の基本資格である初任者研修でも、「保有資格なし」と3万円近い差があるため、資格取得の際に負担はあるものの、長い目でみれば収入に大きな差が出てきます。施設によっては資格取得支援制度があり、金銭的な負担なく資格を取得することも可能です。就職先を選ぶときにはそのような支援制度があるかどうかもポイントにするとよいでしょう。
また、国や自治体にも介護職で就職する方に向けた補助金や給付金などの支援制度があります。自治体によっては全額支給というところもあるため、制度を上手に活用することも検討しましょう。
※厚生労働省令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果、第98表 介護職員の平均給与額等(月給・常勤の者),サービス種類別,保有資格別(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)より抜粋。
【表内の資格について】
以下で紹介していない、他の介護の資格についてはこちらのコラムを参考にしてください。
介護福祉士(国家資格)
介護福祉士の資格は介護系の資格のなかで唯一の国家資格であり、介護の専門的な知識と技術を保持している証となります。国家資格ですが合格率は70%前後と高く、比較的とりやすい資格。ただし、受験資格が細かく定められている点に注意が必要です。
介護福祉士の資格を取得した後は、さらなるステップアップとして認定介護福祉士(民間資格)という資格もあります。
介護福祉士の資格取得に関するコラムはこちらからご覧いただけます。
社会福祉士(国家資格)
社会福祉士は、福祉相談援助のスペシャリストです。身体上、精神障害のある方や日常生活に困難のある方の福祉に関する相談に応じ、助言・指導します。また、福祉サービス提供者との橋渡しなどの援助もおこないます。定められた受験資格を満たした方が受験可能で、合格率は30%前後と介護福祉士と比較して難易度が高い資格です。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
特定の国家資格を有している方や5年以上かつ900日以上の相談援助などの実務経験がある方が受験可能な資格です。介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネジャー試験)に合格して実務研修を修了したのちに、介護支援専門員証が交付されます。2021年度の合格率は23%と、難関の試験です。
介護職員初任者研修
介護職としての基本的な知識や技術を身につけられる研修です。受講費用は5~10万円と地域やスクールによってさまざまです。130時間の課程を終えた後、修了試験に合格すると資格取得となります。介護職未経験の方でも安心して進められる講義と実技演習があり、介護職キャリアの第一歩ともいえる資格です。修了試験は学んだことをしっかり復習していれば難しくありません。万が一不合格でも追試を受けられます。
介護職員初任者研修に関するコラムはこちらからご覧いただけます。
実務者研修
介護職員初任者研修の上位資格が実務者研修で、より実践的・専門的な知識と技術を習得できます。介護福祉士国家試験の受験に必要な資格でもあり、受講費用は5~10万円と幅があります。初任者研修とはちがい、修了試験の実施は義務付けられていないため、受講機関よっては修了試験がない場合があります。
夜勤帯の勤務日を増やす
夜勤帯に勤務した場合、時間外割増賃金と深夜帯割増賃金が適応されるため、日中に勤務するよりも給料が高くなります。加えて夜勤手当が支給される施設もあります。ただし、2交替制夜勤を採用している施設が多く、その場合は16時間の勤務となります。勤務時間が長いうえに生活リズムが乱れるため、精神的にも身体的にも負担が大きい働き方といえます。とはいえ、基本的には夜勤明け当日とその翌日は休みとなるため、日中のプライベート時間を確保しやすいというメリットがあります。
キャリアアップして管理職に就く
介護主任(リーダー)、介護施設管理者(管理者もしくは施設長)など、キャリアアップするごとに業務上の責任は大きくなります。その分、基本給があがり職務(役職)手当も支給されるため、給料がアップします。令和3年度の管理者の所定内賃金※は、平均370,087円、平均賞与額は818,485円でした。
※所定内賃金:基本給や交通費、役職手当など毎月定額が支給される税込み賃金額。月によって変動がある残業代、夜勤手当などは含まない。
続いて、管理職になる方法をご紹介します。
介護主任(リーダー)
介護主任は、介護職員の人員調整、指導、働きやすい職場づくり、会議への出席などの業務を担います。介護主任になるために特別な資格は必要なく、実務経験の期間など細かなルールが定められているわけではありません。しかし、高い介護スキルや対応力はもちろん、現場をまとめるマネジメント力が必要です。
介護施設管理者(管理者もしくは施設長)
施設の管理・運営をおこなう介護施設管理者になるためには、クリアすべき要件があり、その内容は施設の種類によって異なります。
特別養護老人ホームの場合、次のいずれかを満たす必要があります。
①社会福祉主事の要件を満たす者
②社会福祉事業に2年以上従事した者
③社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者
グループホーム・小規模多機能型居宅介護事業所の場合は、次の①②両方を満たす必要があります。
①特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設、デイサービス、認知症対応型共同生活介護事業所などの従業者または訪問介護員として、認知症高齢者の介護に3年以上従事した経験を持つ者
②厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業者管理者研修」を修了した者
デイサービスや有料老人ホームなど、特に要件が定められていない施設もある一方で、介護療養型医療施設の管理者になれるのは「医師」のみと定められています。将来的に施設管理者を目指す方は、その点に注意してください。
条件の良い施設に転職する
介護従事者の給料は施設の種類によっても差があります。
全施設の平均給与は316,610円で、施設の種類では介護老人福祉施設(345,590円)と介護老人保健施設(338,390円)が高い平均給与となっています。※
また、介護職員の処遇改善のための「介護職員等特定処遇改善加算」に届出をしている施設は、届出をしていない施設よりも平均給与が高いということが調査により明らかとなっています。この取り組みは令和4年9月までとされていますが、10月以降も同様の措置を継続するとされています。
お仕事探しをしている方は、ぜひその点にも注目して検討してみてください。
※厚生労働省令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果、第82表 介護職員の平均給与額等(月給の者),サービス種類別,勤務形態別(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)より。
今後も処遇改善は続く!地道に資格と経験を積み重ねよう
介護職員の処遇改善措置は今後も継続される予定のため、給料の底上げが期待できます。また、介護の職種では、基礎的な資格であっても保有していたほうが無資格よりも高い給料を得られる傾向にあります。難易度の高い資格であれば、給料の差はより広がる傾向にあるため、収入アップを目指すなら積極的に資格を取得することをおすすめします。
収入アップのためにキャリアアップを目指すことは、結果として利用者によりよい介護サービスを提供できるということです。自分なりのキャリアプランを立てて、コツコツと知識や経験を積み重ねていきましょう。