
少子高齢化が進行する日本では、高齢者を支える介護人材の確保が急務となっています。そうしたなか、新たに介護業界への転職に興味を持つ方が増えてきています。
一方で、セカンドキャリアを考え始めた中高年層の方のなかには「50代未経験でも介護職に就けるのか」「介護職に興味はあるけれど、自信がない…」と悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、50代未経験の方の介護転職についてお話します。50代から介護業界に入職するメリットや必要な心構え、転職活動に取り組む際のポイントも併せて紹介します。
50代未経験でも介護職に転職できる?
50代未経験の方でも、介護職への転職は可能です。介護業界は、全産業のなかでも人材が不足しており、職歴や年齢不問で応募されている求人も多く見られます。
また、介護は「利用者やご家族の人生に寄り添う」仕事となることから、これまでの人生経験や社会人として培ったマナー・スキルが転職の大きな武器になります。
まずは介護業界の年齢構成や採用率について解説します。
介護職員の年齢構成
介護業界は幅広い年齢層の方が活躍しており、特に30~50代は現場を支える中核的な存在となっています。厚生労働省がまとめた資料によると、介護職員として働く50代の方は施設内職員が25.0%、訪問職員が28.4%となっています。
▼介護職員の年齢構成(性別・職種別)
画像引用元:厚生労働省『介護人材確保の現状について』
特に男性よりも女性のほうが50歳以上の割合が多くなっています。この結果を踏まえると、50代であっても介護職へ転職できる可能性は十分にあると考えられます。
出典:厚生労働省『介護人材確保の現状について』
年代別の採用率
次に、介護事業所における年代別の採用率について解説します。
公益財団法人介護労働安定センターの『令和6年度 介護労働実態調査』によると、介護職員・訪問介護職員の採用率は「29歳以下」がもっとも多くなっています。
しかし、50代の採用率においても「介護職員が13.5%」「訪問介護員が12.9%」と一定数で見られています。
▼年齢階層別の採用率
| 介護職員 | 訪問介護員 | |
| 29歳以下 | 30.6% | 36.2% |
| 30~39歳 | 14.1% | 22.9% |
| 40~49歳 | 13.2% | 16.9% |
| 50~59歳 | 13.5% | 12.9% |
| 60~69歳 | 11.6% | 8.3% |
| 65歳以上 | 9.3% | 6.4% |
このような結果を踏まえると、50代未経験でも介護職で採用される可能性は十分にあると考えられます。
出典:公益財団法人介護労働安定センター『令和6年度「介護労働実態調査結果」の概要について』
50代でも介護業界への転職が可能な理由
一般的な転職市場では、若年層ほど採用されやすいと言われていますが、介護業界では50代の中高年層でも門戸が開かれています。
50代でも転職しやすい理由には、人材需給のバランスや国による手厚いバックアップ体制が関係しています。
介護人材が不足している
1つ目の理由は、介護人材が不足していることです。現在、介護業界は慢性的な人手不足に直面しており、人材の確保に課題を持つ事業所も少なくありません。
『令和6年度 介護労働実態調査結果』によると、介護職員が「大いに不足」「不足」「やや不足」と回答した事業所は65.2%と半数以上に及んでいます。
▼介護職員の過不足状況(一部抜粋)
| ①大いに不足 | ②不足 | ③やや不足 | ①②③の合計 | |
| 事業所全体 | 10.0% | 21.2% | 34.0% | 65.2% |
| 介護職員 | 13.5% | 23.0% | 32.6% | 69.1% |
| 訪問介護職員 | 29.8% | 28.3% | 25.3% | 83.4% |
特に「訪問介護職員」については83.4%と多くの事業所で人材不足が深刻化している状況です。今後も高齢化が進むと予測されるなか、多くの地域・事業所において介護職員の確保は急務となっており、中高年・未経験層の採用も積極的に行われていると考えられます。
出典:公益財団法人介護労働安定センター『令和6年度「介護労働実態調査結果」の概要について』
ほかの職業と比べて有効求人倍率が高い
2つ目の理由は、介護職はほかの職業と比べて有効求人倍率が高いことです。
有効求人倍率とは、求職者1人に対する求人数の比率を指します。この数値が1.0倍を上回る場合には、求職者よりも求人数が多い「売り手市場」と判断されます。
2025年3月時点での全産業介護職の有効求人倍率は1.16倍ですが、介護関係の職種では3.97倍と大きな差が生じています。
▼全職業と介護関係職種の有効求人倍率の推移
画像引用元:厚生労働省『介護人材確保の現状について』
介護職は有効求人倍率が高く、転職市場における人材需要も高いことから、50代未経験でも採用してもらえる可能性があります。
出典:厚生労働省『介護人材確保の現状について』
中高年層・未経験者への支援を活用できる
3つ目の理由は、中高年層・未経験者への就職支援が行われていることです。
自治体や介護事業所では、中高年層や未経験の方が安心して介護職へチャレンジできるようにさまざまな就職支援を提供しています。
▼就職支援の具体例
- 介護職員養成研修・介護福祉士実務者研修
- 職場見学・職場体験の実施
- 職業訓練期間中の生活支援給付 など
これらの支援制度を活用することで、50代未経験でも介護職への転職に向けた就業準備や基礎スキルの習得を進められます。
50代から介護業界に転職するメリット
50代から未経験で介護業界にチャレンジすることに不安を感じる方も多いかもしれませんが、この年代だからこそ発揮できる強みもあります。
これまでの人生経験で知恵を活かせる
50代の方が介護職に就くメリットといえるのが、これまでの人生経験で得た「生活の知恵」を現場のケアに活かせることです。
食事の準備や掃除、洗濯といった基本的な家事スキルや、さまざまな人との交流を通じて培ったコミュニケーション力は、介護の現場にも大いに役立てられます。
また、利用者の年齢層が親の世代と同じくらいになるため、利用者が歩んできた時代背景を理解しつつ、人生の先輩となる方に敬意を持って接することができると考えられます。
社会人経験で培った接遇・マナーを役立てられる
これまでほかの仕事に就いていた方は、長年の社会人経験で培った接遇・マナーを介護現場でも発揮できる強みがあります。
例えば、「正しい敬語の使い方」「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の徹底」「挨拶やクレームの対応方法」などは、一朝一夕で身につくものではありません。
このような接遇・マナーが備わっている50代の方は、利用者やご家族との信頼関係をスムーズに築きやすく、若年層の職員からも頼りにされる存在となることが期待できます。
利用者やその家族に寄り添いやすい
50代の方は、利用者の子ども世代にあたることも多く、世代的な近さによる親近感を覚えてもらいやすいこともメリットの一つです。昔の話題で会話をしたり、利用者が不安・悩みを打ち明けやすくなったりすることが期待できます。
また、50代になると、親の介護や自身の老後について考え始める時期でもあるため、利用者やご家族が抱える悩み・不安にも共感を持ちやすくなります。利用者の立場に立ち、心からの寄り添いができることは、深い信頼関係を築くうえで欠かせない要素となります。
親族の介護が必要になった際にスキルを活かせる
50代から介護職としての経験を積むことで、親族の介護が必要になったときにスキルを活かせるメリットがあります。
例えば、正しい介助の手順や介護保険制度の仕組み、介護施設ごとの特性などを理解しておくと、親族の介護においても迷わずに対応・判断できるようになります。
介護職を通じて得られた知識・技術がそのまま実生活での助けになることは、50代で介護職にチャレンジする価値の一つといえるでしょう。
50代未経験で介護職を目指す方が知っておきたいこと
50代未経験で介護職を目指す方は、現場で直面しやすい問題についても正しく理解しておくことが大切です。「こんなはずではなかった」という後悔を防ぐために知っておきたいことには、以下が挙げられます。
身体的・精神的な負担を感じることがある
介護職は、入浴やトイレの介助などの身体的な介護が必要になるため、「体を持ち上げる動作がきつい」「腰痛が生じる」などといった問題が生じることがあります。
また、認知症のケアでは、利用者とうまく意思疎通を取れなかったり、心ない言葉を吐かれたりすることもあり、精神的なストレスを感じてしまう方も少なくありません。
介護の仕事に対する理解を深めるとともに、事前に「身体的な負担を軽減する介助用具があるか」「悩んだときに相談できる管理者や教育担当者がいるか」などを確認しておくことが重要です。
前職より収入が下がる可能性がある
介護職は、人材の定着化・採用促進に向けて職員の処遇改善が進められています。しかし、未経験からスタートするとなると、前職よりも給与が下がってしまう可能性があります。
厚生労働省が実施した『令和6年 介護従事者処遇状況等調査結果』によると、2024年9月の介護従事者の平均基本給(月給・常勤の者)は、25万3,810円(※)となっています。
給与アップを目指すには、「処遇改善に積極的に取り組んでいる事業所を選ぶ」ことや「介護福祉士の資格を取得して基本給や手当を増やす」といった方法が考えられます。
※介護職員等処遇改善加算を取得している事業所での平均基本給
出典:厚生労働省『令和6年 介護従事者処遇状況等調査結果』
50代で介護職に転職する際の心構え
50代からの転職は、人生において大きな転機となります。特に未経験で介護業界に飛び込む際は、さまざまな心構えが必要です。
健康維持と体力づくりに気を配る
介護職員として利用者の生活を支えるには、まずは自分自身の健康管理を徹底することが求められます。介護の仕事は、移乗や入浴介助などを行う場面があるほか、施設内を歩き回ることから、体力づくりが欠かせません。
また、夜勤がある施設では生活リズムが崩れやすく、精神的な不調を招きやすい環境といえます。規則正しい生活習慣に整えたり、心身をリフレッシュするセルフケアの習慣を身につけたりすることも重要です。
▼健康維持・体力づくりの取り組み例
- 足腰の筋力トレーニングを行う
- 腰痛予防のストレッチをこまめに行う
- 正しい姿勢での介助方法を身につける
- 栄養バランスの取れた食事と睡眠をしっかりとる など
尊厳を守り、自立支援をサポートする意識を持つ
介護の仕事は、身の回りのお世話をすることだけではありません。できないことが増えても、一人の人間としての尊厳を守り、その人が持っている能力を活かして自立した生活を支援することが、介護の本質といえます。
介護職員に求められるのは、「何でも代わりにやってあげる」のではなく、「利用者の意思や能力を尊重して支える」姿勢です。介護に対する正しい意識と姿勢を持つことが、介護職で活躍するための第一歩といえます。
積極的に学ぶ姿勢をもつ
50代未経験で介護職に転職する方は、「新人として一から学び直す」という姿勢を持つことが大切です。50代で転職すると、教育担当者や管理者が自分よりも若い職員になることも珍しくありません。
また、社会人経験が豊富な方でも、介助のやり方や業務の進め方、チームでの動き方など、分からないこともたくさん出てくると考えられます。
介護の現場で活躍できるようになるには、「先輩職員の指導やアドバイスにしっかりと耳を傾ける」「分からないことは積極的に聞く」といった学ぶ姿勢を持つことが大切です。
チームワークを大切にする
介護職は、介護職員や看護師、リハビリテーションスタッフなどの複数の職種から成るチームで連携して業務を遂行するため、協調性が必要です。
自分一人で業務を進めようとせず、チームワークを意識して取り組むことが欠かせません。例えば、「職員への報告・連絡・相談を徹底する」「自分と異なる意見や価値観を頭ごなしに否定しない」などといった対応が求められます。
また、「自分にできることがあれば積極的に手を貸す」「自分が忙しいときは適切に助けを求める」ことも、チーム全体の質を高めるポイントになります。
50代未経験で介護職への転職を成功させるポイント
50代未経験で介護職への転職を成功させるには、自分の軸を持って取り組むとともに、事業所とのマッチ度合いを見極めることが重要です。
押さえておきたいポイントには、以下の4つが挙げられます。
①介護職に就く目的や希望の働き方を明確にする
「なぜ介護の仕事に就きたいのか」「どんな働き方がしたいのか」といった目的や働き方を明確にすることから始めましょう。
介護職と一口にいっても、施設の形態や事業所によって介護職員に求められる役割や働き方は大きく異なります。「社会貢献がしたい」「定年後も長く働けるスキルを身につけたい」など、介護職を選んだ目的を明確にすることで、転職活動で何を重視するべきか軸を定めることができます。
また、家庭との両立や体調管理も踏まえたうえで、無理なく働き続けられる条件を決めておくことも必要です。これにより、「想像していたよりも負担が大きく、続けられない」といった問題を防げます。
②教育体制が充実している事業所を選ぶ
未経験で介護職に転職する方にとって大きな不安要素といえるのが、「十分な研修や教育がないまま実務に就かされる」ことではないでしょうか。
転職先を選ぶ際は、「未経験OK」という条件だけでなく「具体的にどのような教育体制が整っているか」をチェックしておくことが重要です。自分のペースを尊重して育ててくれる事業所を選ぶことで、早期離職を防ぐことができます。
▼教育体制について確認すること
- 初心者向けの研修プログラムが用意されているか
- 教育担当者が配置されているか
- 入職から独り立ちまでの段階的な教育制度が用意されているか など
③職場見学で人間関係や雰囲気をチェックする
介護職の転職において重要なのは、職場見学で人間関係や雰囲気をチェックすることです。
▼チェックすること
- 職員同士で挨拶が行われているか
- 利用者やご家族に対して丁寧な声かけができているか
- 自分と同じ年齢層や家庭環境の人が働いているか など
同じ中高年層の職員が活躍している職場を選ぶことで、悩みや不安を相談しやすくなったり、日常的なコミュニケーションを取りやすくなったりする人もいます。
求人票だけでは介護施設の内部事情を把握できないことも多いため、職場見学をお願いして「ここで一緒に働きたい」と思える職場を選ぶようにしましょう。
④介護職員初任者研修を受けて基礎知識を身につける
未経験・無資格で介護職を始めると、聞き慣れない専門用語やケアの方法に戸惑いやすく、自信を失ってしまう方も少なくありません。
事前に介護職の入門資格となる「介護職員初任者研修」を受けておくことで、介護に関する基礎知識を理解でき、仕事を始めてからの理解度が高まりやすくなります。
また、選考を受ける際に初任者研修を受けたことを伝えることで、50代未経験の方でも働く意欲があると判断され、事業所によい印象を与えられることも期待できます。
50代からの介護職はセカンドキャリアを輝かせる選択

50代からの介護職への転職は、決して遅すぎることはありません。これまでの人生経験で得た知恵や社会人として培ったスキルは、介護業界でも大いに役立てられます。
「地域社会のためになる仕事がしたい」「一生もののスキルを身につけたい」とお考えの方は、介護職での新たなキャリアに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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