介護職員に求められる観察眼とは?見るべきポイントと活かし方

介護の仕事

介護職員と車椅子に座った女性介護における「観察力」は、介護施設の利用者様に対してスタッフが常に関心を持って接し、異常に気付いていく力のこと。それに必要になるのが「観察眼=どこをどのような視点で見るか」です。

利用者様の様子は日々刻々と変化しており、すべてに振り回されていては業務になりません。介護職員ならではの観察眼によって、注意すべき変化とそうでない変化を見分け、そのとき必要とされているケアにつなげる技術が必要です。

今回はそんな介護における観察眼の磨き方と、観察で気付いたことのケアへの活かし方について、詳しくご紹介していきます。介護職員としてもう一歩スキルアップしたいと考えている人は、ぜひチェックしてみてくださいね。

介護職員に求められる観察眼とは

介護職員がパルスオキシメータで測定介護職員に求められる観察眼とは、利用者様の小さな変化に気付き、ケアに活かす視点のことです。介護の観察で見ておきたいポイントについて、主要なものをご紹介します。

介護の観察で見るべきポイント

  • バイタル(比較できるよう普段の血圧が高め・低めといった情報を把握しておく)
  • 顔色(紅潮している、血の気がないなど)
  • 息づかい(荒い、ゼーゼー等の異音があるなど)
  • 話しかけたときの反応(ぼーっとしている、反応が鈍いなど)
  • 水分摂取の状況(脱水の可能性はないか)
  • 食事の様子(普段通り食べられているか、むせなどがないか)
  • 排便、排尿の様子(頻度、量、色など)
  • 部屋の様子(散らかっている、ものが普段と違い場所に置いてあるなど)
  • その他、いつもよく話す人が口数が少ないなど普段と違った様子がないか

そもそもその人にとってどんな状態が通常かを知らなければ、変化があっても気付きようがありません。ですから普段から上記のポイントについて見ておくこと、本人とコミュニケーションをとりその人の性質や傾向を知っておくこと、介護記録に目を通しておくことなどは大切です。

観察時に注意することとしては、じろじろと探るような目で見ないこと。相手を怖がらせたり警戒させてしまわないよう、目元はやさしく柔和に、世間話でもしながらさりげなく観察を行うことができれば理想的です。

自分の主観で偏った見方をしてしまわないように、なるべく自分の感情(好き/嫌い、同情など)は排除し、客観的な視点で見ることも重要です。バイタルや食事量、水分摂取量など数値で表せるものは数値で記録や報告を。

そしてこれがもっとも大切なことですが、観察で得た情報は自分一人のなかにとどめておかず、周囲のスタッフと共有していくこと。関係するスタッフが観察で得た情報を出し合い、それをもとに調整や改善を重ねていくことで、ケアの質を高めていくことができます。

観察眼を磨くメリット

点滴のイメージ利用者様の観察をケアに活かすことができると、さまざまなトラブルに先回りして対処できるというメリットがあります。

たとえば、いつもと違う様子から感染症の可能性に気付き、いち早く医療的ケアにつなげて悪化を防ぐことができた。またケアを嫌がる利用者様を観察することによって、嫌がる理由について仮説を立てることができ、それを考慮した声かけをすることによって受け入れてくれるようになった、といった例が挙げられます。

利用者様を観察することがなければ、感染症に気付くのが遅れて重症化や蔓延につながってしまったかもしれません。またケアを嫌がる利用者様はそのままになり、いつまでもケアを受けてもらえないままかもしれません。

観察から得た情報を活用することでトラブルを回避したり、問題が大きくならないうちに先回りして対処できれば、利用者様の快適性や介護の質という視点においても、介護スタッフの業務負担軽減という視点においても、大きなメリットが得られます。

こちらのコラムも参考に≫「介護スキルのアップに欠かせない「観察力」、どう磨く?」

優れた観察に欠かせないものとは

優れた観察を行うために欠かせないもの、それは「相手に対する関心」と「相手の心に寄り添う気持ち」です。

そもそも人は興味のないものをじっくり見ようと思いません。たとえば皆さんも、好きな人のことなら小さな変化にもすぐ気がつくのに、関心のない人の変化にはなかなか気がつかないことってありませんか?

ちょっとした変化に気付くことは、相手に関心を持っていることの表れ。なにも利用者様を好きにならなくてもよいので、自分の大切な人に接するような気持ちで、利用者様にも接してみてください。急にいろいろなことが見えてくることに驚くかもしれません。

もうひとつ、「相手の心に寄り添う気持ち」も大切です。「なんだか体がだるい」「なんとなく気分が優れない」といった小さな訴えも、スルーせずまずは「そうなんですね」と認め、辛い気持ちに寄り添うこと。

共感されて利用者様が安心すると、そこから「実はこんなことがあって・・・」「そういえば薬が変わってから・・・」等々、新しい情報が出てくることもあります。優れた観察のために、ぜひ心がけてみてくださいね。

観察眼が活かせる職場の特徴

女性が男性に相談いくら観察ができていても、職場がそれを活かせる体制になっていないと、より良いケアにつなげることはできません。観察眼が活かせる職場とは、普段からスタッフが意見を言いやすい雰囲気があり、報告・連絡・相談が活発に行われている職場のこと。

せっかく観察で小さな変化に気がついたとしても、「その程度のこと気にしすぎ」「余計な仕事を増やさないで」といった雰囲気があったり、実際に言われたりしてしまうと、次から報告することをためらってしまいます。

人の意見に耳を傾ける雰囲気ができている職場では、「こんなことを言ったらバカにされるんじゃないか」「拒絶されるんじゃないか」と心配することなく、誰もが安心して発言することができます。リーダー職などスタッフから報告を受ける立場にある人は、ぜひこのことも頭の隅に入れておいてくださいね。

誰でも初めから、本当に危険な兆候とそうでないものを的確に見分けられるわけではありません。経験を積み、少しずつ肌で感じ取れるようになっていくもの。観察の報告を受けたら、まずは「ありがとう、よく気がついてくれたね」と、歓迎する姿勢をはっきり示していきましょう。

それほど緊急性はないと考えられたときも、「引き続きよく見て、○○のような変化があればすぐまた報告してください」などと具体的なポイントを添えて返すと、また新たに観察の視点を学んでくれるはず。こうした職場では新人介護職員の成長スピードも速いことでしょう。

相談しやすい雰囲気づくりを大切に

笑顔の女性利用者様の表情が暗い、食事を残されている、血圧チェックで普段より高めの数値が出たetc・・・いつもと違うことに気付くことは、介護職員にとって実はそれほど難しいことではありません。難しいのはその小さな引っかかりをそのままにせず、周囲のスタッフと情報共有して日々のケアに活かすこと。

集めた情報すべてに対応することは時間的にも不可能であり、見極める目が必要です。またその気付きをどのように活かし、具体的な改善につなげるのかも簡単な問題ではありません。

慣れないうちは上記の観察ポイントを中心に、寄り添う気持ちを忘れず観察を行って経験を積んでいきましょう。気になることがあれば先輩スタッフや同僚にどんどん報告、相談して。そのなかには当然空振りもありますが、それもまた貴重な経験です。

先輩スタッフも温かい目で見守ることで、後輩職員の観察眼を育てることができます。一朝一夕では身につかないのが介護における観察眼。あせることなく、相談や報告がしやすい雰囲気作りからぜひ取り組んでみてくださいね。

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