「生活支援コーディネーター」という職種を聞いたことがありますか?2015年の介護保険制度改正で、「地域包括ケアシステム」を推進するために設けられた新しい職種です。仕事内容を簡単にいうと、地域の困りごとの相談に乗り解決につなげる活動を行う業務。
マニュアルに従ってどんどんこなすような仕事ではなく、お年寄り一人ひとりの思いに寄り添いながらオーダーメイドでサポートするお仕事なので、しっかり人と関わっていきたい思いを持つ人にはピッタリです。福祉の仕事に興味があるという方は、ぜひ生活支援コーディネーターについてもチェックしてみてくださいね!
生活支援コーディネーターとは
国民の4人に1人が75歳以上になる2025年に向けて、国は今、高齢者が住み慣れた土地で暮らし続けられる仕組み=「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。「生活支援コーディネーター」は、「協議体」という組織と同時に設置が進められており、このケアシステムの構築において重要な役割を担っています。
生活支援コーディネーターの仕事は、地域の高齢者一人ひとりの悩みや希望に合わせて提案を行い、自宅を離れることなく生活し続けられるようにすること。そして「協議体」は、行政機関やNPOなど、地域包括支援ネットワークを支える職種・機関の代表者レベルを集めた組織で、コーディネーターの活動を補完します。
生活支援コーディネーターは、実際に自分が利用者を介助するわけではなく、地域高齢者のニーズを把握し、それに応える支援策とのマッチングを行います。特徴は、既存の制度的なサービスだけでなく、住民同士の支えあいなどインフォーマルな取組みも積極的に取り入れていくこと。別名「地域支え合い推進員」とも呼ばれ、地域住民が主体となって問題を解決できるように、老人クラブや自治会、近隣のボランティアなどを巻き込んで活動します。
具体的な仕事内容
それでは生活支援コーディネーターの仕事をもう少し詳しく、具体例のなかでみていきましょう。
【ケース1】
一人暮らしの男性Aさんは、腰痛があり要支援1の認定を受けています。身の回りのことはほぼ自分でできていますが、近所づきあいがなく話し相手がいないことを家族が心配しています。
人付き合いが苦手なAさんの場合、ただ近所の人が集まっておしゃべりを楽しむような場は合わないだろうと考えた生活支援コーディネーターは、まずさりげなくAさんの趣味や関心、仕事歴などを聞き出すところから始めます。
Aさんの得意なことが生かせそうな地域のサロン活動を紹介し、自分の居場所づくりに役立ててもらうと同時に、近所に声かけをしてもらえる人がいないかを調べ、時々様子を見てもらうように依頼。傾聴ボランティアを派遣するときにも、Aさんと話の合いそうな人を選ぶなど、きめこまかくその人に合わせた支援を行います。
【ケース2】
地域の自治会で住民に生活の困りごとを聞いてみると、「買い物やゴミ出しで困っている」「一人暮らしの高齢者は会話の機会が少ない」といった問題が明らかに。こうした「ヘルパーさんを頼むほどではない困りごと」を、地域住民で支えあって解決できる仕組みをつくるため、住民が気軽に集えるサロン活動を始めることが決まりました。
さっそく生活支援コーディネーターは、チラシや掲示板などをつかってPRし、担い手となるボランティアを募集。また地域をまわって活動内容の説明や周知を行い、立ち上げを手伝います。少しずつサロン活動が軌道に乗り発展していくと、地域の有志で新たなサロンが立ち上がったり、今まで独自に活動していた老人クラブとつながったりと、新たな動きが生まれてくることも。
このように生活支援コーディネーターは、住民同士の交流を活性化し、参加を広げる活動もしていきます。目標とするのは「地域の福祉力を高めること」です。
支援はどれも、対象となる人や地域の個性・特性に合わせたオーダーメイド。たとえば買い物好きだけれど重い荷物が持てない人に、安易に買い物代行サービスを勧めるのは避けた方がよいかもしれません。買い物の楽しみやできることまで奪わないよう、買い物を手伝ってくれる人を探すなど、その人に合わせて考えます。
本人や周囲の話をよく聞き問題を探ることが必要なので、マニュアルに沿った一律の対応はできないところが難しい点。ただその分、一人ひとりとしっかり関わり合うことができ、よい結果に結びついたときのやりがいと喜びはひとしおです。
必要資格・向いている人
生活支援コーディネーターになるための資格は、とくに定められていません。しかし地域の生活支援サービスに精通していることが求められる相談業務ですので、正職員の場合は「社会福祉士」や「ケアマネジャー」等の資格を募集要項にしているところが多いようです。
ただしパート・アルバイトの場合は、とくに資格を問わない募集も多く存在しています。無資格で生活支援コーディネーターとして活躍する人は、以前から地域に根ざした活動をしていてネットワークを持っている方、地域での助け合いや生活支援サービスの経験のある方などが想定されています。
生活支援コーディネーターの担い手には、上記に加えて国や自治体が行う「生活支援コーディネーター養成研修」を修了することが推奨されています。この研修は無料で受講でき、また生活支援コーディネーターになってから受けることも可能です。
そのほか、地域のあちこちに出向くことが多い職種なので、普通自動車運転免許が必要である場合も多くなっています。外出が好きな人、人と会って話すのが好きな人、フットワーク軽く出かけられる人が向いているでしょう。
活躍の場・待遇は
生活支援コーディネーターの活躍の場は、多くは「地域包括支援センター」など自治体によって設置されている高齢者のサポート機関。自治体の規模が小さいところでは、市役所や役場の福祉関係の部署内に配置されることもあります。
市町村が地域包括支援センターの機能を、社会福祉法人やNPO団体、民間企業などに委託することもあり、その場合は委託を受けた施設で活動します。
基本的には窓口での相談業務ですので、決まった時間での日勤となり夜勤などは発生しません。ただし地域の自治会に出席する必要があるため、日曜祝日や夜間に自治会が開催される場合は出勤になります。
給料や待遇は所属する施設によって異なりますが、正職員の場合は資格手当があることが多く、保有している資格(社会福祉士、ケアマネジャーなど)での職の平均的な額に準ずることが多いようです。経験に応じた昇給もあり、安定して収入を得ることができる職種です。
地域をイキイキ輝かせる仕事
生活支援コーディネーターは、2025年問題を控えた超高齢化社会において重要な働きをするお仕事です。すでにあるサービスを活用するだけでなく、地域に新しくネットワークを構築することも求められるので、日々新しい発見があり、自ら創意工夫する喜びも得られます。
思い入れのある地域で多くの人と関わり、毎日たくさんの刺激を受けて成長していくことができる「生活支援コーディネーター」。やりがいは、地域の方々のイキイキとした笑顔です。人と関わることが好きな方、地域のために役立ちたいという思いを持つ方は、ぜひ検討してみてくださいね。