今注目を浴びる「混合介護」。そのメリットと課題とは?

介護の仕事

高齢者と支える介護スタッフ
混合介護とは、介護保険の対象に含まれるサービスと、対象から外れるサービスを組み合わせて提供することです。一見簡単そうにみえても利用者保護や公平性の確保などの問題があり、ルールもあいまいなものしかなかったため、積極的に取り組むことが難しくなっていました。

それでも混合介護には、利用者の便利や安心に役立ち、介護事業者にとっても経営の効率化につながる魅力があります。そんななか2018年9月、厚生労働省から「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」が公表され、はじめて体系的な混合介護の統一ルールが提示されました。

まだスタートラインに立ったばかりですが、今後の普及が期待される混合介護。どのような内容のサービスなのか、メリットやデメリット、抱えている課題についてしっかり理解しておきましょう。

混合介護とは?

料理を準備する介護スタッフ
日本の介護保険制度では、対象となる介護サービスを1~3割の費用負担で利用することができます。しかし対象外のサービスや限度額を超えた分については、全額が自己負担となります。この2つを併用することを「混合介護」といいます。

たとえば訪問介護では、部屋の模様替えやペットの世話など本人のケアに直接かかわらないことや、日常生活の範囲を超える援助は介護保険の範囲に含まれません。しかし、自分でできないことは誰かに頼むしかありません。そうした援助をホームヘルパーが保険範囲内の業務に加えて利用者様の望むサービスを行い、その分の費用だけを全額自己負担してもらう場合などがそれにあたります。

デイサービスなどの通所介護では、たとえば施設内でヘアカットや健康診断、予防接種などを行ったり、買い物代行を担う場合などが保険外サービスとして区分されています。これらを通常のサービスと組み合わせて利用すると、混合介護となります。

混合介護のメリット

混合介護は、利用者と事業者の双方にメリットをもたらします。まず利用者の側は、保険制度の枠組みにとらわれずに必要なサービスを受けることができ、生活の利便性がアップします。ホームヘルパーさんに頼めることが増えれば、それまで頼めないことを補っていた家族の負担もグンと軽減されるでしょう。さらに介護事業者が独自のサービスを工夫できるようになれば、競争が促され、業界全体のサービスの質が向上することも期待されます。

いっぽう事業者側にとっては、これまでのサービスに上乗せするかたちで効率よくサービスを提供できるため、収益のアップが見込めます。介護業界で働く人にとっても、収益が上がったり競争が起きたりすることで、優秀な人材がしっかり評価されるようになるため、給料などの待遇面や働く環境の改善につながります。

混合介護のデメリット

混合介護にはデメリットもあります。利用者側のデメリットで一番大きいのは、やはり「お金がかかる」こと。混合介護は、認められる範囲が広がれば広がるほど利用者の費用負担が増えやすくなります。お金持ちしか利用できないということになれば、介護保険制度の公平性が損なわれることにもなりかねません。またサービスが多様化するため、たくさんのサービスのなかから自分に合ったものを選ぶのが難しくなることも心配されています。

事業者側のデメリットとしては、業務の線引きや管理に手間がかかることや、利用者に個別に対応することが求められるため、現場の負担が増えるのではないかということが懸念されています。

混合介護のルール

混合介護が一気に普及しない大きな理由は、上記のような懸念が現実化しないようバランスをとって進めていくことがとても難しいから。それでも、少しずつ議論と取り組みが進むなかで、2018年に厚生労働省から通知されたのが「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて※」でした。これである程度明確に、混合介護のルールが示されることになりました。

通知のポイントとしては、「介護保険サービスと保険外サービスの同時一体的な提供は不可」とされた点をおさえておきましょう。これはたとえば、利用者本人のための食事を用意する際、同時に同居家族のための食事も作っておく、というようなサービスはできないことを表します。ひとつの鍋で料理を作ったら、どこまでが介護保険の対象内で、どこからが対象外かを線引きするのが難しいためです(介護保険対象サービスの前後や合間に、同居家族の部屋の掃除をしたり、同居家族のための買い物をしたりすることはOK)。

また、「特定の介護職員への指名料、繁忙期・繁忙時間帯の時間指定料など、上乗せ料金の徴収は不可」ともしています。これは介護保険制度の公平性を保つための規制と考えられます。

ただし、現時点では不可としたものの、厚生労働省では引き続き検討を続けていくとのこと。今後これらの規制が緩和される可能性も考えられ、そうなれば業務の効率化や価格設定の自由化につながっていくかもしれません。今後に期待したいところですね。

通知ではそのほかにも、混合介護を提供する際に事業者が対応すべき事項が挙げられています。主なものをいくつかご紹介しておきましょう。

  • 介護保険対象のサービスと対象外のサービスを明確に区別すること
  • 介護保険サービスとは別に、基本的な指針と利用料を定めること
  • 混合介護に関する事項について、契約締結前に文書で利用者に同意を得ること
  • 介護保険適用のサービスから保険外サービスに移行するタイミングをていねいに説明するなど、別サービスであることを利用者が認識できるようにすること
  • 介護保険対象のサービスと、保険外サービスの会計を明確に区別すること
  • 認知機能が低下している利用者に、高額な商品等の販売は行わないこと

「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」(厚生労働省)

課題を乗り越え介護の未来を明るく

ガッツポーズをする介護スタッフ
常に公平性が求められる介護保険制度ですが、いっぽうで利用者の利便性や収益性も無視することはできません。もちろん、高齢になるにつれて認知機能が衰える人も多いなか、利用するサービスはなるべくシンプルでわかりやすいことも望まれます。

たくさんの課題を抱え、まだまだ議論を重ねてよりよい形を模索していくことが求められる混合介護。それでも利用者と事業者の双方にもたらされるメリットは魅力的です。課題は多くてもひとつずつ乗り越えて、未来のスタンダードへと育てていきたいですね。介護業界の将来を変えるポテンシャルを持った混合介護に、今後も注目していきましょう!

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