こんなにあった!老人ホームの行事レクリエーションの目的

介護の仕事

介護施設にある折り紙のてまり
春はひなまつりやお花見、夏は七夕や夏祭り、秋は紅葉狩り、冬はクリスマス会・・・老人ホームなどの介護現場では、季節ごとの行事をテーマにしたレクリエーションが定番です。入居者の方々の楽しそうな笑顔を見ていれば、大切なイベントだということはよくわかります。

ただ、改まって「行事レクリエーションの目的」や「行事レクリエーションの効果」について聞かれると、うまく言葉にできないという人も多いのではないでしょうか。

今回のコラムでは、介護職の皆さんに「行事レクリエーションの目的って、実はこんなに深かったんだ」と再認識してもらえるよう、目的ごとに詳しくご紹介していきます。

楽しいだけじゃない、行事レクリエーションの目的

折り紙をする介護スタッフと利用者さん
介護施設における行事レクリエーションの目的は、もちろん楽しむこともあるのですが、ただそれだけではありません。もっと深い目的や効果があります。一つずつ見ていきましょう。

●周囲とのコミュニケーションを活性化する
高齢になると聴力が衰えたり、喉の筋力が弱まって発語がしにくくなるなどの理由で、少しずつ会話が難しくなってきます。行事レクリエーションで他の入居者、スタッフなどが集まると、会話をするきっかけになります。
発声することは喉のトレーニングにもなりますし、会話を楽しむことは脳を刺激するので、認知症予防にも効果的です。

●季節感を感じ、QOLの向上につなげる
老人ホームなどの入居施設では、どうしても生活が単調になりがち。行事レクリエーションはそれを防ぐ役割も果たします。季節を感じさせる行事レクリエーションは、節目ごとに日々を感慨深く振り返ることに役立ちます。

ただ漫然と日々を過ごすのではなく、「ああ、春が来たなあ」「すっかり秋だなあ」など、毎日を味わいながら過ごす・・・こうしたことが、高齢者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=人生の質)を高めることに貢献します。

●美しいものを見て、感動することで脳を刺激する
施設での生活や、一人暮らしで外出しないことなどが続くと、何かを見て感動することも少なくなりがち。そんなときに春の桜、秋の紅葉といった美しい景色や、普段目にしないものを見ることは、すばらしい刺激になります。

感動している時は、脳内にドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が分泌され、脳の働きが活性化します。認知症の方の心の安定につながったり、うつ病などの精神的な病の予防効果も期待できます。

●昔を思い出し語り合うことで、心が安定する
季節の行事には、誰にでも子供の頃や若い頃の思い出があるもの。レクリエーションでそれを取り上げることにより、自然に昔の思い出を回想してもらうことができます。

元気だった頃の自分を思い出すことは、自分に自信を取り戻し、心を安定させることに役立ちます。周囲の人と思い出を語らうことは、楽しいコミュニケーションでもあります。レクリエーションのなかで、お茶を飲みながら語り合う時間を設けるなどしても良いですね。

●役割を担うことで、自尊感情が高まる
行事レクリエーションでは季節感を感じてもらうために、テーマに合わせて装飾を施したりおやつを食べたりゲームをしたりしますね。さまざまな工程のなかでも、「飾りづくり」「おやつづくり」「ゲームの小道具づくり」など、できる工程は入居者の皆さんに担ってもらうことが多いはず。

役割を任されると「自分にできることがある」「期待されている」といった気持ちを持つことができます。これは高齢者が失いがちな自尊感情を取り戻し、意欲を高めることに役立ちます。

●イベントにともなう工作やゲーム等によるリハビリ効果
もちろん、行事レクリエーションにともない工作物を作ったり、ゲームをしたりすることによるリハビリ効果など、物理的な役割も外せません。

行う作業によって、視覚や触覚の刺激、手指の運動、巧緻性(こうちせい=手先の器用さや巧みに指先を使う能力のこと)の向上、集中力のアップ、思考力のアップ、達成感を得るなどの目的を持たせることができるでしょう。

老人ホームの季節行事レクリエーションの例

老人ホームのスタッフと利用者さん
老人ホームでは、どのような季節行事レクリエーションが行われているのでしょうか。その例を見ていきましょう。

1月 七草の節句、しめ縄飾り作り、書き初め展
2月 節分
3月 ひな祭り、お花見
4月 春の小旅行
5月 端午の節句
6月 暑中見舞い作り
7月 七夕祭り
8月 夏祭り、花火
9月 お月見、お彼岸
10月 ミニ運動会、秋の小旅行
11月 紅葉見学ツアー
12月 クリスマス、施設内歌合戦

この例の他にも、将棋の日(11月17日)に将棋大会、ボウリングの日(6月22日)にボウリング大会など、独自の行事を設けている老人ホームも多くあります。

入居者の皆さんの好みや状態に合わせたレクリエーションを使って、その季節の恒例にしてしまうのも良いですね。

高齢者にとっての、季節を味わう意義

散歩をしている介護スタッフと利用者さん
日々忙しくバタバタと過ごしていると「あれ!いつの間にか夏が終わってた・・・」「この半年、ほとんど記憶がないわ〜」なんて経験をしたことはありませんか?なんだか損をしたような気になって、「今からでも夏を楽しまなきゃ」と焦ったり、「少し仕事をセーブして、家族との時間を増やそう」と調整したりしますよね。

また来年やればいい、と思う私たちと違い、人生の終末期にある高齢の入居者の方々は、今このときを味わって過ごすことがとても大切です。「あと何回桜が見れるかな」「来年も元気でお餅が食べられますように」といった切実な思いを胸に持っておられる方も多いはず。

そんなささやかな願いを叶えるために、重要な役割を果たすのが季節の行事レクリエーションです。大きな目的があると思えば、大変な準備も少しはかどりそうですね。

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