「老健(介護老人保健施設)」は、要介護高齢者にリハビリなどを提供することで、在宅復帰や在宅療養を支援する施設です。
長期入院していた病院から自宅へ復帰する際などの通過点となることが多く、終の住処として長く住み続ける「特養(特別養護老人ホーム)」などとは異なる性格を持っています。
しかし実際には、看取り期を迎えた利用者様本人やご家族から、看取りを希望されるケースも増加中。その場合は施設の多職種が連携し、安らかな最期を迎えられるようターミナルケアが行われます。
今回は、老健で行われるターミナルケアについて詳しくお伝えしていきますので、興味のある方はぜひチェックしてくださいね。
こちらのコラムも参考に≫「介護職が知っておきたい「特養」と「老健」の違いとは」
ターミナルケアとは
ターミナルケアは「終末期医療」ともいい、終末期に入った人に対し行われる医療・ケアを指します。日本医師会によると、終末期は「患者がそう遠くない時期に死に至るであろうことに配慮する時期」とされています。
医師により終末期と判断されると、徐々に治療を目的とした積極的な医療は終了し、代わりに苦痛を緩和するための「緩和ケア」が主体となっていきます。
緩和ケアでは、本人が困っていること、苦痛に感じていることに合わせて鎮痛剤を用いたり、傾聴して気持ちに寄り添うなどの精神的なケアが行われます。身体的なつらさだけでなく心のつらさにも目を向け、最期まで自分らしく生活してもらうためのサポートを行うのが緩和ケアです。
老健で行われるターミナルケア
老健は、長く住み続けることを前提とした施設ではありませんが、実際には終末期を迎えた入居者にターミナルケアを行うことも増えてきています。
たとえば地方などで介護施設の数が少なく、施設側も空きがあるなど受け入れ可能であれば、老健に長期入居するケースがあります。
また老健を経て在宅復帰した後も、老健の訪問リハビリやショートステイを利用したり、通所リハビリに通いながら過ごし、徐々に老衰が進行して終末期を迎え、家族では対応できない場合に再度老健で受け入れるケースもあります。
入居者が医師により回復の見込みがなく終末期に入ったと判断された場合、看取りを視野に入れたケアプラン(介護サービス計画書)が作られ、それに従いケアが提供されます。ケアプランは施設ケアマネジャーが本人や家族から看取りに関する希望を聞き取り、意思を尊重して作成します。
家族や本人からの要望としては、たとえば「痛くないようにしてほしい」「コーヒーを飲みたい」、「他の病院への転院、胃瘻の造設、延命治療は望まない」「老健で看取って欲しい」といったものが考えられます。
日々のケアはこれらを反映したケアプランに従って、「痛みが出ないように小さいクッションで体位を微調整する」「コーヒーを綿棒に含ませて吸ってもらう」「こまめな清拭で全身の清潔を保つ」など、本人の状態に合わせてケアを行っていきます。
このように老健でのターミナルケアは、通常の介護と大きく異なるわけではなく、その人をよく知る多職種の職員が連携・協力しながら、普段の介護の延長線上で行われます。
平行して医療面では、ニーズに応じてつらい症状を緩和するための投薬や、体調を維持するための点滴での栄養維持などが行われます。老健では医師・看護師が常駐しているため、日常的に必要な医療を提供できるというメリットも大きいのです。
ターミナルケア加算について
老健でターミナルケアを行った場合、介護報酬に「ターミナルケア加算」が加算されます。算定要件としては、医師により回復の見込みがないと診断されていることや、本人や家族に対して十分な説明を行い、合意をしながら支援することなどがあります。
本人が判断を下せる状態になく、家族と連絡がつかない場合でも、職員間の相談日時や内容等をしっかり記録に残しておくことで算定が可能です。
老健のターミナルケア加算【単位数】※
死亡日 | 単位/日 | |
45日前~31日前 | 80単位/日 | 令和3年度新設 |
30日前~4日前 | 160単位/日 | |
前々日、前日 | 820単位/日 | |
死亡当日 | 1,650単位/日 |
※参考:「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(厚生労働省ホームページ)
老健に期待される看取りの役割
「老健」というと、「長く入所し続けることはできず、数ヵ月したらその後は在宅復帰しなくてはならない」というイメージがあるかもしれません。確かに老健が第一に目指すのは、リハビリで回復し在宅復帰することなのですが、利用者の状態や希望に合わせてターミナルケアも行っています。
多くの人にとって理想の死は、「病院ではなく住み慣れた場所で安らかに」というものではないでしょうか。医療ケアが充実している老健では、身体の痛みや精神的なつらさと正面から向き合わなくてはならない終末期に、馴染んだ環境のもとで医療と介護の両面から手厚いケアができるという強みがあります。
令和3年の政府統計※をみると、ここ十数年で急増している死因は「老衰」でした。与えられた寿命を生ききり、苦しむことなく親しい人に囲まれて旅立つ・・・そんな安らかな看取りのために老健が果たす役割は、今後も大きくなっていくことが予想されます。
こちらのコラムも参考に≫「介護職のための看取りの知識。不安を払拭して前向きに!」
※参考:「令和3年(2021) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」(政府統計)より
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