施設内通貨で娯楽にお酒も?ユニークなデイサービス

介護の仕事

赤ワインと高齢者
高齢者が日中に通い、必要な介護サービスを受ける通所介護施設「デイサービス」。入浴や昼食、おやつ、レクリエーションや機能訓練などのサービスを提供するのが定番のスタイルです。しかし最近デイサービスの数が増えたことで、利用者が比較検討して選べるようになったため、個性的なサービスで差別化を図る施設も増えてきています。

差別化の方向性はいろいろですが、高齢者にレジャー要素を提供し、楽しんでもらうことで意欲を引き出そうとする「娯楽型」や、質の高いリハビリを提供し結果を出そうという「リハビリ型」などが代表的。

今回は、特色ある取り組みや新しい試みをしている全国のユニークなデイサービスをご紹介していきます。ぜひ参考にしてみてくださいね。

娯楽型デイサービスのユニークな取り組み

介護度の低い高齢者向けに、「進んで来たくなるような楽しいデイサービス」として提供されるようになったのが「娯楽型デイサービス」です。カジノの要素を取り入れることで評判を呼んだ「デイサービス ラスベガス※1」は有名ですね。

そのほか、全国のデイサービスではカジノ以外にもさまざまなユニークな娯楽が提供されています。実際に採用されている例をいくつか挙げてみましょう。

・天然温泉、足湯
・カラオケ
・麻雀、パチンコ
・マッサージチェア
・喫煙部屋
・お酒が飲めるバー(医師の許可がある人のみ)
・パソコン&タブレット
・豪華客船風のおもてなし

まるでホテルやレジャー施設と見間違えるかのような内容で、介護のイメージとはかけ離れているように感じるかもしれませんね。しかしこうした取り組みは、折り紙や合唱といった、従来からよく行われているレクリエーションには興味が持てない、楽しめないといった利用者様から、好評を得て人気となっています。

また「学ぶ楽しみ」にスポットを当てたデイサービスもあります。たとえば関東を中心に展開する「通所介護施設おとなの学校※2」では、時間割を設定して学校の授業風にカリキュラムを組むことで、高齢者の学習意欲にアプローチ。学ぶ喜びが、自立意識や生活意欲の向上にもつながっています。

※1:デイサービス ラスベガス

※2:おとなの学校

施設内通貨で意欲がアップ

通貨
高齢者に向け、遊ぶ楽しみや学ぶ楽しみを提供する形のデイサービスでは、施設内だけで使える「施設内通貨」を導入している施設も少なくありません。リハビリやお手伝い、レクで入賞するなどの報酬として通貨をゲットし、施設内でのレジャーやコーヒーなどの嗜好品に使うなどして楽しむことができます。

通貨を導入するメリットには、「報酬系が刺激されて脳が活性化する」「お金を数えるときに手の機能訓練や頭の体操になる」といったものがあります。「貯めた通貨で孫に○○をプレゼントしたい」「スタッフにコーヒーをおごってあげたい」など、具体的な目標をもってレクやリハビリに取り組めるようになると、結果にもつながりやすくなるようです。

ただ、通貨を増やしたいといった気持ちが大きくなり、一日の大半を麻雀やパチンコなどの遊技に費やすことになると、それはそれで問題に。税金が使われている介護保険の主旨にそぐわない、ギャンブル依存症につながりかねないといった意見もあり、実際に兵庫県では、繰り返し遊技を行うことを助長するような疑似通貨を規制対象としています。

もちろん、楽しくデイサービスに通うこと自体は良いことですので、遊技ばかりになるのでなく、リハビリなどのさまざまな機能訓練メニューと適切に組み合わされて提供されるなら問題はありません。

ムリにやらされることより、自分から「やりたい」と思うことのほうがずっと身につきますし、効果も期待できるもの。今より自立した生活を送るためにがんばらなくてはならないものと、楽しみながらできるものを組み合わせるのはいいアイデアではないでしょうか。

参考:条例における「賭博や風俗営業を連想させる介護保険サービスに対する規制」の解釈について(兵庫県ホームページ)

リハビリ型デイサービスの新しい取り組み

娯楽型とは異なる方向性で進化しているのが、「リハビリ型デイサービス」です。こちらはさまざまな機器やメソッドを活用して、介護度を改善する「結果」を重視したデイサービスになります。

全国のリハビリ型デイサービスで採用されているメソッドとして、専用のトレーニングマシーンによる軽い負荷で筋群を再活動化させる「パワーリハビリテーション※3」があります。「寝たきりの人が自分でトイレに行けるようになった」「歩けなかった人が歩けるようになった」といった多くの実績があり、採用しているデイサービスも多くなっています。

新しい取り組みとしては、VR(バーチャル・リアリティー=仮想現実)を使ったリハビリもユニークです。特許出願中のVRリハビリキット「RehaVR※4」は、利用者がVRゴーグルを着用し、トレーナーと一緒にゴーグル内に映し出される360度動画を見ながら、足こぎペダルで散歩運動を行います。

ペダルをこがないと前に進めないので、単調なトレーニングにエンタメ性が加わり、興味を持って自主的に取り組めるようになるのがメリット。全国各地の名所を巡るコースが用意されており、高齢者の「旅行がしたい」というニーズにも応えるものとなっています。2019年時点では全国10施設に導入されており、今後も増えていくことが予想されます。

※3:パワーリハビリテーションとは(一般社団法人日本自立支援介護・パワーリハ学会HP)

※4:リハビリVRキット RehaVR | VRで楽しくリハビリテーション

その他のユニークな取り組み

高齢者の見守りを中心に時を過ごす従来スタイルのデイサービスも、それぞれが生き残りをかけて進化しています。なかでも多いのは、全員が一斉に同じことをする集団レクではなく、それぞれが興味のあることに取り組めるよう、個別レクリエーションに力を入れる取り組みです。

陶芸やカメラ、パソコン、囲碁に将棋、手芸や絵画など、利用者が自分の興味に合わせて何をするかを選べれば、主体性をもって取り組むことができます。腕に覚えのある利用者様に講師役を務めてもらったり、講師に出張してもらう出前講座などが人気です。

そのほか、独自のサービスで特色を打ち出しているデイサービスは全国にたくさんあります。たとえば、利用者様の大きな楽しみである食事にこだわり、おいしさや栄養面で付加価値をつける事業所。あえて食事やおやつの用意などの仕事を利用者様に任せることで、主体性や意欲アップをねらう事業所。高齢者以外に学童や保育など、近隣住民のニーズを受け入れ、異世代が家族のように過ごせるデイサービス等々。

またデイサービスといえば通常は日中のみの営業ですが、最近は利用できる時間帯で差別化を図る施設も増えてきました。20時半~21時頃まで利用できる「夜間デイサービス」や、介護保険適用外とはなりますが「お泊まりデイサービス」といったサービスを展開している事業所など。逆に早朝から昼過ぎまで営業する朝型のデイサービスでは、夕方はゆっくりしたいという高齢者のニーズと、主婦層が働きやすい時間帯とがマッチし、人材を集めやすいというメリットもあるようです。

高齢者が増加したことで、そのニーズも多様化が進んでいます。趣味・嗜好、叶えたい目標、在宅で介護する家族の都合など、人によってその背景はさまざま。複雑化するニーズに応える形で、受け入れる施設側も多様化が進んでいます。

利用者様の意欲を高めるために

高齢者が楽しむ様子
食事や入浴など、スタッフにやってもらう受け身のケアだけでは、なかなか介護度改善といった結果には結びつきにくいものです。心身の状態を良くしていくためには、本人が意欲を持って積極的に取り組むことが欠かせません。しかし「やってみたい」という好奇心のスイッチは、誰でも同じ場所についているわけではないのがやっかいなところ。

全国のデイサービスではさまざまな工夫をこらし、その人に合ったやり方で好奇心にアプローチしていることがわかりました。比較的介護度が低い人には、娯楽や個別レクで楽しみや学びを提供し、身体機能を取り戻したいという明確な目標を持っている人には質の高いリハビリで期待に応える、といった具合です。

ユニークな取り組みで好評を得ているデイサービスは、ターゲットの志向を分析し、それにアピールする方法を考えているようです。あなたの施設にはどんな利用者様が多いでしょうか?ぜひ普段からアンテナを立てておき、隠れたニーズや差別化のヒントを見つけてみてくださいね。

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