
特別養護老人ホーム(以下、特養)は、介護を必要とする方が安心して日常生活を送れる場所として運営される入所型の介護保険施設です。
近年、この特養の新たな施設形態として「ユニット型」が登場しています。「特養で働きたいけれど、ユニット型と従来型で何が違うのか」「自分はどちらの施設で働くのが向いているのか」と気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、介護業界で働く方や就職・転職を検討している方に向けて、ユニット型特養の基本的な施設形態や従来型との違い、働くうえでの魅力・やりがいなどを解説します。
ユニット型特養とは
特養は、原則として要介護3以上の高齢者が長期にわたって入所し、日常生活の介助や身の回りの生活援助、機能訓練、社会活動の機会を提供する介護保険施設です。
そのうち「ユニット型特養」とは、10人前後の入居者で1つのユニットを組み、各ユニット専任の職員がケアを提供する施設を指します。
入居者を少人数のグループに分けて専任の職員を固定配置することで、一人ひとりの生活リズムやニーズに合わせたきめ細かな個別ケアが可能になることが特徴です。近年、新たに建設や改修が行われた特養では、このユニット型の施設形態が主流となっています。
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特養の仕事はきつい?仕事内容・働くメリット・やりがいを紹介従来型特養との違い
ユニット型特養は、従来型の特養とはケアのあり方や日々の業務体制が大きく異なります。ここからは、それぞれの違いを4つの視点から解説します。
1.提供するサービスの内容
ユニット型特養で提供する介護サービスは、基本的に従来型の特養と大きく変わりません。
どちらの特養も、介護を必要とする方に生活の場を提供して、入居者の自立した生活を支援する目的があります。施設内で提供する主なサービスは、以下のとおりです。
▼特養で提供するサービスの内容
- 食事・入浴・排せつ・着替えなどの身体介助
- 掃除や洗濯などの日常生活の援助
- 観察やバイタル測定による健康管理
- 機能訓練の実施
- レクリエーションやイベントの企画・実施 など
2.ケアの提供方法
ケアの提供方法では、個別ケアの柔軟性に違いがあります。
▼ケアの提供方法の違い
| 従来型特養 | ユニット型特養 |
| 決まったスケジュールに沿って、フロア全体への集団ケアを提供する | 在宅に近い環境で、一人ひとりの生活習慣やニーズを尊重した個別性の高いケアを提供する |
従来型特養では、起床・食事・入浴・消灯といった決まったスケジュールに沿って、職員が役割を分担しながら一斉にケアを行います。「いかに安全かつ効率的にケアを提供できるか」という視点が重視されることが特徴です。
一方のユニット型特養は、入居者の生活習慣や希望を尊重して柔軟なスケジュールでケアを提供します。例えば、「起床時刻を遅めにしたい」「入浴は食事前の午後に入りたい」など、個人のペースに合わせた柔軟性が重視されます。
3.居室のタイプ
従来型とユニット型では、居室の構造や生活空間のつくりに明確な違いがあります。
▼居室タイプの違い
| 従来型特養 | ユニット型特養 | |
| 居室の構造 | 多床室 | 完全個室 |
| 共同の生活空間 | 食堂などに限られる | ユニットごとにリビングがある |
従来型特養は、1つの部屋に2~4名の入居者が生活する多床室のスタイルが採用されています。各ベッドはカーテンやパーテーションで仕切られ、プライバシーを確保しにくい環境となっているほか、フロア全体で使用する食堂以外の共有スペースがない、または限られている施設が一般的です。
一方のユニット型特養は、少人数のユニットを組みつつ、各入居者が個室で生活するスタイルが採用されています。プライバシーが守られるため、入居者が自由時間を気兼ねなく過ごせ、ご家族の面会もゆったり行えます。また、各ユニットの入居者が利用できる共同生活空間(リビングなど)が備わっており、家庭的な環境が整っていることも特徴です。
4.職員の配置方法
特養では、介護職員の人員配置基準が定められていますが、従来型とユニット型では「担当の割り振り方」に違いがあります。
▼職員の割り振り方
| 従来型特養 | ユニット型特養 |
| フロア全体を職員全体で見るチーム配置 | 各ユニットに少数の専任職員を割り当てる固定配置 |
従来型特養の場合、チーム全体で連携・交代しながらフロア全体にケアを提供します。シフトによって職員のメンバーが入れ替わるため、人間関係が固定化されにくいことが特徴です。また、中~大規模な特養では夜勤を複数人体制で対応するため、協力・相談し合いながら業務に当たれる安心感があります。
一方、ユニット型特養の人員配置は、ユニットごとに専任の職員を割り当てる「固定配置」が基本です。毎日同じ入居者・職員と顔を合わせるため、深い信頼関係を築きやすいことが魅力です。ただし、夜勤は1~2ユニットを1人の職員で見る「ワンオペ対応」になるケースもあり、柔軟な対応力と的確な判断力が求められます。
ユニット型特養で働く魅力・やりがい
ユニット型特養での仕事は、従来の特養とは異なる魅力・やりがいがあります。働くなかで実感しやすいこととして、以下が挙げられます。
入居者に寄り添った丁寧なケアができる
チームによる集団ケアの効率性を重視する従来型と比べて、ユニット型特養では入居者の生活リズムやライフスタイルの価値観に寄り添った個別性の高いケアを実践できます。
決まったスケジュールやマニュアルに沿ってケアを提供するだけでなく、一人ひとりを尊重したきめ細かなケアを通じて豊かな暮らしを支えられることは、介護職としての大きなやりがいにつながると考えられます。
家族のような深い信頼関係を築ける
ユニット単位で専任の職員が割り当てられる固定配置が基本となるため、毎日同じ入居者と日常的に顔を合わせ、多くの時間を共に過ごすことができます。
毎日の挨拶や何気ない会話を通してお互いの距離が自然と縮まり、まるで本当の家族のような温かい信頼関係を築けることが魅力です。
また、一人の入居者とじっくり向き合う時間を確保しやすいため、表情の変化や体調の異変、好みなども深く理解できるようになり、日々のケアにも愛着を持って取り組めるようになると考えられます。
アットホームな環境で働ける
ユニット型特養は、少人数単位のユニットを組み、各個室が共同生活スペースを囲むように配置される居室スタイルになっています。そのため、入居者同士や職員とのコミュニケーションが活発になりやすい環境があります。
日常のなかで入居者同士がリビングで一緒にテレビを観たり、お茶を飲んで談笑したりする機会が生まれやすいため、家庭的で落ち着いた雰囲気のなかでケアを提供できます。施設が和やかな空間になることは、職員自身にも精神的なゆとりが生まれ、働きやすさの向上につながります。
ケアを通じて多様なスキルを磨ける
専任の職員が担当ユニット内のあらゆるケアや生活サポートに対応する体制となるため、介護職員としてのスキルを引き上げられるメリットがあります。
一斉に同じ作業を行う集団ケアとは異なり、その場の状況に応じて「いま自分がどう動くべきか」といった入居者のニーズをくみ取って判断・行動する能力が身につきます。
また、一人ひとりの入居者と丁寧に向き合うケア体制により、日常的な会話の時間を確保しやすくなるため、コミュニケーション力や傾聴力が自然と養われていきます。
ユニット型特養で働くことが向いている人
ユニット型特養は、以下のような人に向いている職場といえます。
▼ユニット型特養で働くことが向いている人
- 人との関わりやコミュニケーションが得意
- にぎやかな職場よりも家庭的で落ち着いた空間が好き
- 自主性があり状況に応じた柔軟な判断ができる
一方、「決まったスケジュールで効率的に業務を遂行することが得意」「複数人のチーム体制で協力し合いながらケアを行うほうが安心」という方は、集団ケアを提供する従来型の特養が向いていると考えられます。
自分が理想とするケアのあり方や職場環境、得意分野などを踏まえたうえで、働きやすい施設形態を見極めることが大切です。
ユニット型特養への就職・転職に失敗しないためのポイント
入居者や職員との距離が近く、少人数体制でユニットケアを提供する施設だからこそ、サポート体制や施設の雰囲気、人間関係などを重視して職場を選ぶことが重要です。
ここからは、ユニット型特養へ就職・転職する際のポイントを紹介します。
ポイント1.シフト形態や職員構成を確認する
ユニット型特養の働き方を左右するのが、シフト形態や職員構成です。
少人数の専任職員でユニットケアを提供する環境では、一人の職員が休むことで「現場の負担が増える」「残業や休日出勤が発生する」といった問題を招きやすくなります。また、交代制のシフトでは、同じユニットの職員と休み希望が重なることも考えられます。
働きやすい事業所を見つけるために、事前に以下の内容を確認しておくことが大切です。
▼シフトや職員構成に関するチェックポイント
- 家庭やプライベートと両立できるシフト形態か
- シフトの組み方に対する公正なルールがあるか
- 夜勤の人員配置はどうなっているか
- 急な休みやシフト変更が必要になった際のフォロー体制があるか
- キャリアが浅い職員に偏っていないか など
ポイント2.現場の業務体制を確認する
ユニット型特養では、限られた職員で担当ユニットを見る必要があるため、「効率的な業務体制が整っているかどうか」が重要です。
ICTの導入が進んでいる施設では、事務作業や情報共有を効率化して職員の負担が軽減されるほか、「伝達漏れ」「転記ミス」によるヒューマンエラーも防ぎやすくなります。
また、利用者の見守りや安全管理に役立つICTは、日中や夜勤での不要な「空振り訪問」を減らし、ほかの業務やケアに時間を充てられるようになります。
▼介護施設におけるICTの導入例
| 分類 | 具体例 |
| コミュニケーション・情報共有 | 介護記録アプリインカム(無線通信機器)多職種連携ツール |
| 介護・ケアの支援 | AI搭載見守りカメラシート型やマット型の離床センサー移乗サポートロボット |
| バックオフィス業務 | 勤怠管理システムシフト作成ツール介護職向け業務管理システム (利用者台帳、各帳票の作成等) |
ポイント3.職場見学・体験に参加する
ユニット型特養への転職を検討している方は、入社前に職場見学・体験に参加することがポイントです。
施設の雰囲気や職員・利用者との関係性などは、求人票や面接で得られる情報だけでは分かりません。自分の目で現場の様子を確認することで、入職後のギャップや人間関係のトラブルなどを防げます。
職場見学・体験に参加する際に確認しておきたい点には、以下が挙げられます。
▼職場見学・体験で確認しておきたいこと
- 職員の年齢層やキャリアの構成
- 共同生活空間の利用状況
- 職員や利用者同士のコミュニケーション
- 事務所や収納スペースの整理整頓 など
ユニット型特養で介護職のやりがいを発見しよう
ユニット型特養は、専任の職員が利用者一人ひとりの生活スタイルに寄り添い、深い関係性を築きながらきめ細かな個別ケアを実践できることが大きな魅力です。
従来型特養との違いや施設のシフト形態、業務体制などを確認したうえで、自分らしく働ける介護施設を見極めることが大切です。少人数体制のアットホームな環境でじっくりとケアと向き合いたい方は、ユニット型特養への転職を検討されてはいかがでしょうか。
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