スウェーデンから学ぶ福祉、介護。福祉大国のしくみとは

使えるハウツー

スウェーデンの国旗

以前、デンマークの社会福祉制度や介護システムについてご紹介いたしましたが、今回はもうひとつの福祉大国の介護事情についてもご紹介していこうと思います。今回取り上げるのは「スウェーデン」です。スウェーデンは昔から福祉大国と言われており、デンマークと同様に世界の中で福祉の先端を走っていると言われ、何かと参考にされています。もちろんスウェーデンの介護事情にも色々と問題はあると言われていますが、やはり見習える部分も非常に多いのではないかと筆者は考えています。介護現場で問題が出た時に、どこに問題があって、他者はどう解決したかなどはやはりいろいろな事例を知っておいて損はないですよね。

それではスウェーデンの介護システムをご紹介していきます。

スウェーデンってどんな国?

福祉大国スウェーデン、ストックホルムの街並み

なんとなくヨーロッパの上の方にある国というイメージはあるものの…といった感じの方も多いのではないかと思いますので、まずは地理的な情報から確認していきましょう。スウェーデンは北欧に位置し、北東にはフィンランド、西はノルウェー、またオーレスン海峡を挟んでデンマークと向かい合っている北欧最大の国です。公用語はスウェーデン語ですが、ほぼ皆英語を話すことができます。文化的な面でいうと日本でも大人気のファッションブランド「H&M」やインテリアブランド「IKEA」がスウェーデン発祥です。

また、税金等の面は日本と大きく違います。それは、消費税が25%であったり、所得税が30%程度であることなどが挙げられます。この高い税率のため、介護を受ける際はほとんど費用がかからなかったりと優遇を受けられるようになっています。

スウェーデンには寝たきり老人がほとんどいない?

寝たきり老人がいないスウェーデン:楽しそうに話す高齢者

日本では「寝たきりの老人」は多くいますが、スウェーデンには所謂「寝たきりの老人」はほとんどいません。スウェーデンでは、高齢者が寝たきりになるのは終末期のケアの数週間程度だけなのだそうです。

この状況を聞いて筆者が思ったことは単純に「そんなこと不可能ではないのか?」でした。では、なぜそのようなことが可能になるのでしょうか。

その理由のひとつは、「コミューン」の存在だと言われています。あまりなじみのない言葉かもしれませんが、日本の市町村にあたる基礎自治体の事で、スウェーデンでは「コミューン」が高齢者の希望に沿う形でサービスを提供することになっています。

「コミューン」の役割と介護モデル

スウェーデンの高齢者は基本的に独居で生活しているそうです。それは自立した生活をしたいという国民性からだと言われていますが、独居老人が体調を崩したりしても基本的に家族だけが全面的に介護に没頭することは無いそうです。そのかわり、スウェーデンでは、高齢者が要介護になった時は、コミューンで面倒をみます。そのコミューンは在宅介護を基本としており、高齢者が要介護状態になった時は、できるだけ在宅介護対応を行うそうです。例えば、「介護施設に入りたい」と高齢者が希望したとしても申請者が施設入居に値するかどうかをコミューン内にいる援助判定員という職員が判断し、値しないと判断されれば在宅介護が続きます。スウェーデンの高齢者は基本的に終末期の数週間しか施設に入ることができないそうで、これを「順序モデル」をいいます。

日本では、在宅で介護を受けるか、施設に入って介護を受けるかを被介護者が選択できる「選択モデル」を取っているため認知症を患っていたりすると施設に入ることが多くなってしまいます。しかし、スウェーデンでは、日本で施設に入るほどの認知症患者でも在宅で1日に5回も6回も訪問し介護を行うことが一般的になっています。高齢者の介護にかかるサービスを税金で賄っているためこのようなシステムになっています。税金である程度高齢者の面倒をみるスウェーデンでは、いくら高税率と言ってもすべての老人を施設に入れて24時間体制で面倒をみることはできません。それならば、1日に何回も介護士を派遣する方がコスト的に安いのだそうです。

高齢者の意思を尊重する介護

上で説明した通り、スウェーデンの介護モデルは在宅介護が基本です。しかし、在宅介護が主流となっているスウェーデンでもコミューンの援助判定員が必要と判断すれば施設に入居します。そんなスウェーデンの介護施設は、建物の見た目や内装がオシャレであったり、中で生活している方々もパジャマで過ごすのではなく、きちんと私服に着替えて過ごしていたりと日本と違う特徴があります。オシャレなところで過ごすこと、毎日着替えておめかしすることで気分が切り替わり元気に生活できるともいわれています。ここからはいくつか日本と違う介護施設の特徴をご紹介します。

高齢者の意思を尊重している

歩行器を使い、颯爽と歩くスウェーデンの高齢者
スウェーデンの介護施設ではその国民性からか、高齢者の意思を尊重した介護を非常に大切にしています。日本では、集団でのレクリエーションであったり、団体のアクティビティが多いですが、スウェーデンでは、このようなプログラムはほとんどありません。これが、スウェーデンの国民性なのかもしれませんが、高齢者の方々は各々やりたいことが明確にあるからこそ浸透した介護のありかたなのかもしれませんね。

余談ではありますが、ケアプランも個々人のニーズをしっかり汲み上げてつくられているという特徴もあります。

また、スウェーデンの施設では、高齢者が一人で散歩に行きたいといった場合、外出しても問題ないと判断された場合はGPS付の携帯電話を持って自己責任で外出を許可します。飲酒も大きな病気や医師からのストップが出ていなければ飲んでもOKとしているそうです。

近年の日本では、「徘徊する高齢者の事故は誰が責任を取るのか?」などが社会的な問題になっていますよね。高齢者の自主性は確かにとても大事な事だと思いますが、万が一を考えると過度の自由は逆にデメリットも多いのではないかと筆者は考えます。「個人の自由」を過度に保護するのではなく、高齢者の『安全』と『自由』のバランスも考えることが今後の介護システムには最も重要な事だと感じます。

まとめ

今回は、福祉大国「スウェーデン」から学ぶ介護システムをご紹介してきました。いかがでしたか?スウェーデンでは、寝たきりが少ない理由が少しご理解いただけたでしょうか。日本で介護を行う上で参考になることやこれはスウェーデンだからこそできる、と感じることなど思うところがあったのはないでしょうか?

筆者の考えですが、施設に入ってからも毎日私服に着替えオシャレをするなどは、日本の施設や在宅でも実践できそうな気がします。まずは手始めにパジャマで過ごすのではなく、私服に着替えるということから実践してみてはいかがでしょうか。

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