軽度認知障害(MCI)と認知症との違いとは?

使えるハウツー

頭をかかえる高齢女性と寄り添う高齢男

近年CMなどでよく耳にするようになった「軽度認知障害(MCI)」。認知症の一歩手前の状態で、この段階で発見できれば認知症への移行を防ぐことが可能だといわれています。いち早く異変に気づいて適切な対処ができるよう、軽度認知障害についての正しい知識を持っておきましょう。

認知症は不治の病というイメージが強く、高齢者自身も恐怖心を持っています。そのため周囲が認知症を疑っても、本人が受診を拒むという悩みも多く聞かれますが、軽度認知障害なら認知症とは違い、ケアによる回復の可能性があります。きちんと説明すれば、受診にも前向きになってもらえそうですね。

今回は、軽度認知障害と認知症との違いや、その他の間違いやすい病気についても詳しくご説明していきます。

軽度認知障害(MCI)とは

軽度認知障害とは、認知症を発症する手前の段階のこと。「MCI(Mild Cognitive Impairment)」とも呼ばれ、正常な状態と認知症の中間の「認知症予備軍」を指します。まだこの段階ではそれほど日常の生活に支障はありません。しかしこの状態を放っておくと、1割程度の人が1年以内に認知症に移行してしまいます。

いったん認知症を発症すると、現在の医学では完全に元に戻すことはできません。しかし軽度認知障害の段階であれば、適切なケアによって元の状態に戻すことが可能です。つまり、認知症との大きな違いは、回復可能かそうでないかというところ。一度軽度認知障害と診断されても、最大で4割程度の人が、元の状態に戻ることができると考えられています。そのため、軽度認知障害の段階で発見し、ケアを始めることが重要だといわれているのです。

介軽度認知障害と認知症との境目は?

質問形式の評価用紙イメージ

では認知症の一歩手前の段階=軽度認知障害と、認知症との境目はどこにあるのでしょうか?その診断で役立てられているのが、「ミニメンタルステート検査(MMSE)」と呼ばれる質問形式の評価スケールです。

「今日は何日ですか」「ここは何地方ですか」「100から7を順番に引いてください」といった20の設問によって、認知能力や記憶力を測定します。30点満点のうち27点以上なら正常ですが、22~26点なら軽度認知障害の疑いがあり、21点以下なら認知症などの認知障害がある可能性が高いという判定基準になっています。

もちろんこの他にも頭部CTやMRI、脳の血流を調べる検査なども行われ、ほかの病気の可能性がないかなども合わせて総合的に判断されます。うつ病や慢性硬膜下血腫など、軽度認知障害と似た症状があらわれる病気もありますので、気になる症状があれば早めの受診がおすすめ。まずはかかりつけ医に相談し、「物忘れ外来」など適切な医療機関を紹介してもらうと良いでしょう。

  

    アルツハイマー型認知症発症までのイメージ図
    
アルツハイマー型認知症の原因物質のひとつとされているアミロイドβは、発症の20年前から少しずつ脳内に蓄積されていく
  

軽度認知障害の兆候は、自覚のない物忘れ

加齢による物忘れは、年齢を重ねるごとに誰にでもあらわれるもので、それほど心配は無いといわれています。たとえば、「芸能人の名前が出てこない」「何をやろうとしていたか忘れてしまう」「どこに物をしまったか忘れてしまう」などはこれにあたります。いっぽう軽度認知障害の恐れがあり、注意が必要と考えられる物忘れには、以下のような特徴があります。

□物忘れをしている自覚がない
□体験したこと自体を忘れる
□ヒントをもらっても思い出せない
□日付や曜日が思い出せなくなる
□疑い深くなるなど、以前と性格が変わった
□少し複雑な話が理解できなくなる

軽度認知障害が疑われるのは、物忘れをしている自覚がなく、出来事そのものを覚えていない場合。加齢による物忘れの場合は、ふとしたきっかけで思い出したり、ヒントをもらえれば思い出すことができます。

軽度認知障害と間違いやすい病気をチェック

体調のすぐれない寝起きのシニア男性

高齢者は喉の渇きに気付きにくかったり、水分を控えることも多いため熱中症になりやすいといわれています。しかし熱中症の症状は、認知症の兆候と間違いやすいので注意が必要です。

呼んでも返事がない、受け答えがおかしく会話になっていないなどの異変があれば、「認知症の兆候だろう」とスルーするのではなく、熱中症も疑ってみてください。

体温が高い、顔がほてっているなどの症状もあるようなら、すぐに涼しい部屋に移動するなどして体温を下げ、塩分や水分を補給しましょう。日頃からエアコンなどを適切に使用し、こまめな水分補給を心掛けることも大切です。

その他にも、うつ病やお酒の飲み過ぎ、睡眠薬などの薬の影響、インフルエンザなどで高熱が出ている場合にも、認知症に似た症状が出ることがあります。普段と違う症状に気付いた場合は、それらの可能性も疑ってみてください。

早期発見が認知症予防のカギ

四つ葉のクローバーとカギ

現在の医学では、認知症になってしまうと進行を遅らせることはできても、完全に回復することはできません。しかし、認知症の一歩手前の段階である軽度認知障害なら、ケア次第で回復できることが分かっています。

認知症への進行を防ぐうえでは、スタートが早ければ早いほど有利。「あれ、おかしいな」と感じることがあれば、ぜひ速やかに病院を訪れて検査を受けましょう。できるだけ早く適切なケアを始めることが、認知症を遠ざけ、充実した老後を過ごしてもらうためのカギとなります。

{最大4割程度の人がMCIから回復可能であることの論拠として、以下資料の110~111Pを参照しています}
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/sinkei_degl_c_2012_05.pdf

参考文献
「20万人以上を診察した専門医が教える ならない・治す認知症」 監修:長谷川嘉哉
「認知症予防がまるごとわかる本」 執筆:吉澤佐衣子 宮崎聡史 溝口弘美 柿川鮎子 金子志緒

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