唾液が出ない?多すぎる?高齢者の唾液トラブル対処法

使えるハウツー

食事がつらそうな高齢女性

私たちがふだん何気なくしている会話や食事。実は「唾液(だえき)」が重要な役割を果たしています。唾液が適度に分泌されることで、お口がうるおい会話や食事がスムーズになるのです。

ところが高齢になると、加齢や病気など、さまざまな理由で唾液が少なくなり、「口が渇く」という悩みを抱えることがあります。さらに飲み込む力が衰えてしまうと、今度は唾液が過剰になり、よだれや誤嚥(ごえん)の心配も出てきます。

高齢者を悩ませる唾液トラブルについて、原因と対処法をご紹介します。

唾液の大切な役割とは

唾液は、私たちのからだにさまざまな効果をもたらしてくれます。

まずは食事のとき。お口の中で食べ物と混ぜ合わさり、「消化作用」「味を感じるのを助ける作用」「喉を通りやすいように助ける潤滑油としての作用」を発揮します。

さらに口の中をきれいにする「自浄作用」「抗菌作用」「粘膜の保護作用」により、口臭や虫歯、口からのウイルス等の侵入などを防いでくれます。

そのうえ唾液は口の中を潤すことで、発声や発音にも役立っています。

食べること、病気を防ぐこと、話すこと・・・こうしてみると、高齢になるほど気をつけたいことばかり。唾液というと「なんだかちょっと汚い」というイメージを持ちがちですが、高齢者の健康を守るうえで欠かせない役割を持った分泌物なのです。

唾液が出ず、口が乾くとき

食べたものをむせてしまう高齢男性

原因は加齢やストレス、薬の影響も

唾液が少ないために口の中が乾く病気を「口腔乾燥症=ドライマウス」といいます。中年以降の女性に多く見られ、「食べ物が飲み込みにくい」「口の中が痛い、傷つく」「水分を摂り過ぎてしまう」などの症状があらわれます。

原因は、加齢による自然な唾液量の減少がひとつ。また高齢者の場合、薬を飲んでいることも多く薬の影響も考えられます。血圧を下げる薬や、抗アレルギー薬、睡眠薬、抗うつ薬などの成分には、唾液の分泌を抑制するものがあります。気になる場合はかかりつけの医師に相談してみましょう。

口が乾くのはストレスも一因です。高齢になると自然に唾液の分泌が少なくなるうえに、緊張すると、ねばねばした粘性の高い唾液が少量分泌されるため、口の中がねばついて不快になりやすいのです。介護を受ける高齢者が緊張する場面といえば、移乗のタイミングや、一度痛い思いをしたケアの時などが考えられます。少しでもリラックスしてもらえるよう、こまめな声かけを忘れずに。

さらに、口で呼吸するとどうしても口の中は乾きがちになります。アレルギー性鼻炎などで鼻が詰まっていないかもチェックするようにしましょう。

口が乾くときの対処法

唾液は、口や舌を動かして刺激することによって出てきます。口を膨らませたりすぼめたり、舌を突き出して、左右に大きく動かすなどの体操をしましょう。

唾液腺をマッサージするのもおすすめです。唾液の90%は「耳下腺(じかせん)」「顎下腺(がっかせん)」「舌下腺(ぜっかせん)」の3つから分泌されています。痛みや赤みが出ないように注意しながら、それぞれの場所をマッサージしてみてください。

顎下腺と舌下腺は、親指を下から当てて、10回ほど押し上げるように刺激します。耳下腺は、指の腹を当てて10回ほどクルクルとやさしく回すようにします。緊張状態では唾液は出にくいので、リラックスしておこなうのがコツです。

手軽な対処法として、市販のドライマウス対策ジェルやスプレーを使用することもできます。その場合は低刺激なものを選ぶようにしましょう。

唾液腺を示すイラスト

唾液が多すぎて、止まらないとき

吸引用の歯ブラシ

原因は口腔機能の低下

唾液の分泌量は、健康な大人で1日約1~1.5リットル。なんと500mlのペットボトル2~3本分もの量になります。通常はたくさん出てきても自然に嚥下(えんげ=飲み込むこと)しているため問題はありませんが、上手に嚥下できなかったり、口をきちんと閉じることができないと、よだれという形で出てきてしまいます。

つまり唾液が多すぎる、よだれで困ると感じるときは、飲み込むための口や喉の機能や、口や唇の筋力など、口腔機能が低下していることが多いのです。

唾液が多すぎるときの対処法

つばを飲み込めない、口をきちんと閉じられないのは、顔の筋肉がこわばってしまっていて、うまく動かせていないことも関係します。まずはこわばりをほぐすように、やさしく話しかけながらマッサージをしてみましょう。

このときいきなり口や顔をマッサージすると、びっくりさせてしまいます。まず、軽く手を握るところから始め、次に腕や肩、緊張がほぐれてきたらお顔に進みます。黙ってするのではなく、明るく話しかけながら進め、なるべくリラックスしてもらえるようにしましょう。

お口や歯の汚れを取り除く口腔ケアも、続けていくと口の中の環境が良くなり、よだれが改善することがあります。誤嚥の危険があるときは、吸引できる歯ブラシや口腔ケア用スポンジなどを使い、水分を吸引しながら。誤嚥を防ぐには、姿勢を横向きに整えるのがおすすめです。

横向きに寝ている高齢女性とヘルパー

●飲み込む力を鍛える体操
手軽なのは「会話」や「歌を歌う」こと。言葉を発するだけでも唇や舌、喉の筋肉を使うので、よいトレーニングになります。どちらも楽しんでいるうちに、いつの間にかトレーニングできてしまうところが魅力ですね。
しっかりトレーニングしたいときは、「パ・タ・カ・ラ」と発声することで口や喉周りを鍛える体操や、おでこを押さえながらうつむく喉の筋トレなどを試してみてください。

>飲み込む力の鍛え方について、もっと詳しく

唾液のトラブルは病気のもと

唾液が少なく、口が渇いてしまう口腔乾燥症(ドライマウス)。食べ物がおいしくなくなり、食べる量が減ってしまったり、水を飲みすぎてトイレが頻回になったり、会話量が減ってしまったり・・・。本人もつらいですが、介護者にとっても見過ごせない要素がたくさんあります。

また、逆に唾液やよだれが多すぎるのも問題で、この場合は肌荒れや口臭につながることも。

実は、この両方の問題に効果があるのが口腔ケアです。胃ろうなどで口から食べ物を食べていなくても、汚れは溜まっています。歯やお口の中の汚れを取り、舌や口の中を刺激することで、ごくんと飲み込む力(嚥下力)が向上し、唾液トラブルの予防や改善につながります。

入れ歯も細菌が繁殖しやすく、汚れていると口腔内の環境が悪くなるので、きちんとお手入れを。1日1回寝る前には入れ歯用のブラシでこすって汚れを落とし、3日に1度程度は入れ歯洗浄剤に浸けて清潔を保ちましょう。口の中がキレイになると細菌数が減り、肺に細菌が入って起こる誤嚥性肺炎の予防にもなります。

ドライマウスの場合は、口腔ケアの前と仕上げに、お口を潤すスプレーを使うとスムーズです。唾液のトラブルに気づいたら、毎日の口腔ケアを少し見直してみるとよいかもしれません。

>飲み込む力の鍛え方について、もっと詳しく

トラブルを改善して、人生楽しく

笑顔で寄り添うヘルパーと高齢女性

おいしく食べたり、楽しく会話をしたり・・・人生を楽しむには、お口を健康に保つことが欠かせません。ドライマウスやよだれといった唾液のトラブルは、いますぐ生死に関わることではないけれど、毎日の暮らしに少しずつ影響し、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=人生の質)を下げてしまいます。
トレーニングは本人がやる気になる必要がありますが、マッサージや保湿スプレーなど、周囲が手助けできることもたくさんあります。たかが唾液とあなどらず、きちんとケアをしていきましょう。

参考文献:障害のある人たちの口腔のケア(玄 景華 監修  栗木 みゆき 著)

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