親が要支援1の認定を受けたものの、仕事や家事、育児をしながら慣れない介護……。疲れを感じつつもゆっくり休めず、無理してがんばっていませんか?
「要支援1でも、ショートステイを利用できるのかな?」
「条件や費用はどうなんだろう?」
そのように悩みつつ、誰にも相談できないままだと、介護をしている家族の方が倒れてしまいかねません。
結論として、ショートステイは、要支援1の人も利用できるサービスです。
本記事では、ショートステイサービスの概要や、デイサービスとの違い、利用条件や費用などについて、詳しく紹介します。
ショートステイを利用するメリットやデメリット、手続きや施設の選び方もお伝えしますので、自分たちだけの介護に限界を感じている方は、ぜひ参考にしてくださいね。
ショートステイとはどのようなサービスか
「ショートステイ」とは、短期間(通常1日から1週間程度。最長30日間)施設に入所して、介護や生活支援を受けるサービスです。
介護者が出張や冠婚葬祭で在宅介護が一時的に困難なとき、また、介護者の休息や療養が必要なときに利用できます。
ショートステイには、日常生活のサービスを受ける「短期入所生活介護」と、必要な医療を受けられる「短期入所療養介護」の2種類があります。
施設や部屋のタイプによってサービス料が異なりますので、利用する際は確認しておきましょう。
以下、ショートステイの「短期入所生活介護」と「短期入所療養介護」の特徴をまとめました。
項目 | 短期入所生活介護 | 短期入所療養介護 |
入所先 | 老人短期入所施設、特別養護老人ホームなど | 療養型医療施設、療養型老人保健施設など |
サービス内容 | 入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練 | 看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練。その他必要な医療並びに日常生活上の世話 |
利用料 | 要介護度などに応じた基本サービス費と宿泊費 | 要介護度などに応じた基本サービス費と宿泊費 |
自己負担するもの | 個人消耗品(歯ブラシ、シャンプーなど)、飲食物(おやつ、飲み物など)、医療費(薬剤費など)、交通費 | 個人消耗品(歯ブラシ、シャンプーなど)、飲食物(おやつ、飲み物など)、医療費(薬剤費など)、交通費 |
参考:厚生労働省「短期入所生活介護」
参考:厚生労働省「短期入所療養介護」
ショートステイとデイサービスとの違い
「ショートステイ」と「デイサービス」との違いは、宿泊の有無と利用時間のふたつです。
ショートステイは、施設に宿泊して介護や生活支援を受けるサービスです。夜間も施設内で過ごし、就寝や起床の介助も受けられます。通常24時間以上利用します。
デイサービスは、施設に通って、日中に介護や生活支援を受けるサービスです。夜間は自宅に帰り、就寝や起床は利用者自身でしたり、家族が介助したりします。利用時間は通常8時間以内です。
ショートステイの利用条件
通常、介護保険適用のショートステイを利用できるのは、要介護認定を受けている方に限られます。
ショートステイの利用対象者
- 65歳以上で要支援1・2、要介護1~5と認定を受けている人
- 40歳~64歳で特定疾病により要介護認定を受けている人
ただし、これらの条件に当てはまらない人でも利用できる、介護保険適用外の「有料ショートステイ」など利用できる施設もあります。有料ショートステイは、介護保険の適用範囲外のため、費用は全額が自己負担になるため、ご注意ください。
ショートステイを利用する場面
ショートステイを利用することで、介護者の負担が軽くなり、休息がとれます。上手に利用していきましょう。
主な利用場面は、以下のような状況のときです。利用者と介護者の場合で表にしていますので、利用を考えたときの参考にしてみてくださいね。
利用者 | 介護者 |
|
|
参考:厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 短期入所生活介護(ショートステイ)」
ショートステイ1日の流れ
ショートステイでの一日の流れは、一般的には以下のような流れです。※施設によって異なります。
1日の流れ | |
7:00~8:00 | 起床・身支度・必要に応じて排泄介助など |
8:00~10:00 | 朝食・服薬・口腔ケア |
10:00~12:00 | 入浴(週2~3回が目安) 自由時間(読書や趣味など) |
12:00~13:00 | 昼食・服薬・口腔ケア |
13:00~15:00 | レクリエーション(歌や手芸など) リハビリ(日常生活動作の機能訓練など) |
15:00~17:00 | おやつ |
17:00~18:00 | 夕食・服薬・口腔ケア |
18:00~20:00 | 自由時間(自室でテレビを見たり、交流したりするなど) |
21:00~翌7:00 | 就寝・必要に応じて排泄介助など |
ショートステイの費用(自己負担)の目安
要支援1の人がショートステイを利用するときの費用は、施設の種類や部屋のタイプによって異なります。
ショートステイの利用料金は、サービス費用と日常生活費の2つに分かれます。
サービス費用は、介護保険で一部が補助されますが、日常生活費は全額自己負担です。
以下、費用について、厚生労働省のサイトをもとに表を作成しました。
施設の種類と部屋のタイプごとに、サービス費用と日常生活費の内訳を示しています。
実際の利用料金は、施設と利用者の契約によって異なる場合がありますのでご確認ください。
施設の種類 | 部屋のタイプ | サービス費用(1日あたり) | 日常生活費(1日あたり) |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | ユニット型個室 | 437円(1割負担) | 3,451円(食費1,445円+滞在費2,006円) |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | ユニット型個室的多床室 | 437円(1割負担) | 3,113円(食費1,445円+滞在費1,668円) |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 従来型個室 | 437円(1割負担) | 2,616円(食費1,445円+滞在費1,171円) |
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | 多床室 | 437円(1割負担) | 2,300円(食費1,445円+滞在費855円) |
介護老人保健施設 | ユニット型個室 | 437円(1割負担) | 3,451円(食費1,445円+滞在費2,006円) |
介護老人保健施設 | ユニット型個室的多床室 | 437円(1割負担) | 3,113円(食費1,445円+滞在費1,668円) |
介護老人保健施設 | 従来型個室 | 437円(1割負担) | 3,113円(食費1,445円+滞在費1,668円) |
介護老人保健施設 | 多床室 | 437円(1割負担) | 1,822円(食費1,445円+滞在費377円) |
ショートステイを利用するメリット・デメリット
ここでは、ショートステイを利用するメリット・デメリットを、利用する人と家族の視点でお伝えします。
ショートステイを利用するメリット
利用者にとってのメリット
利用者にとってのメリットは、主に以下の3つです。
- 施設で安心して過ごせる
- 他の利用者やスタッフと交流できる
- レクリエーションや健康チェック、医療ケアなどのサービスを受けられる
ショートステイでは、施設のスタッフが24時間体制で見守りや介助をしてくれます。また、医師や看護師などの専門家も常駐している施設もあるので、安心して過ごせます。
他の利用者やスタッフと一緒に食事をしたり、レクリエーションなどで交流したりすることは、気分転換や刺激にもなるでしょう。
また、日常生活動作を中心とした機能訓練や血圧測定や服薬管理などの健康チェック、医療ケアも受けられます。
介護者にとってのメリット
介護者にとってのメリットは、主に以下の3つです。
- 介護から一時的に解放されて休息や療養ができる
- 自分の時間や趣味などを楽しむことができる
- 他の家族や友人と交流することができる
ショートステイを利用することで、介護者が一定期間介護から離れて、休息や療養ができることは大きなメリットです。
介護は数ヵ月から年単位で長期になることもあるため、家族が自分の時間や趣味を楽しみ、気分転換やリフレッシュすることも大切です。
介護者が仕事や冠婚葬祭などに参加したり、遠方の親戚や友人に会いに行ったりするときにも利用できます。
ショートステイを利用するデメリット
利用者にとってのデメリット
- 施設に慣れない場合、不安を感じることがある
- 施設のルールやマナーに従う必要がある
ショートステイでは、自宅とは違う環境で過ごすことになるため、不安を感じることがあります。特に、認知症や精神疾患などの症状がある場合は、施設への適応が難しい場合もあるでしょう。
また、施設のルールやマナーに従う必要があります。例えば、消灯・就寝時間や食事・入浴時間などは施設によって決められていることがほとんどです。自分のペースで自由に過ごせないことをストレスに感じる人もいるでしょう。
介護者にとってのデメリット
- 施設への送迎や荷物の準備などが必要になる
- 急に利用したくなったときに、サービスを利用できない場合もある
ショートステイでは、家族が施設への送迎や荷物の準備などをおこなう必要があるため、仕事や家事育児をしながら準備する家族にとっては負担になる場合があります。施設が遠方であったり、頻繁に利用したりする場合は、大変に感じる場合もあるでしょう。
また、ショートステイは人気があるため、予約が詰まっていることが多く、急な利用や長期間利用したい場合は、施設が見つからないこともあります。
要支援1でショートステイを利用する際の手続き
要支援1でショートステイを利用する際の手続きは、介護保険適用の場合と適用外の場合とで異なります。
ショートステイの利用申し込みは、通常、利用月の1~2ヵ月前から予約をすることが多くみられます。
前述したように、人気のサービスなので、早めに予約するとよいでしょう。
例えば、介護していた家族が急に入院したり、弔事が入ったりした、など急に利用が必要になった場合、まずはケアマネジャーに連絡し、施設を探してもらいます。
空き室がない場合は、市区町村の委託施設を利用できる場合もありますので、ケアマネジャーを通じて問い合わせてみましょう。
以下、それぞれのケースで見ていきます。
介護保険適用の場合
介護保険が適用されるショートステイは、短期入所生活介護と短期入所療養介護の2種類があります。
ショートステイを利用するためには、以下の手続きが必要です。ケアマネジャーと相談しながら手続きを進めていきましょう。
- 要支援・要介護認定を受ける
- ケアマネジャーに相談する
- 利用したいショートステイ施設を選ぶ
- 利用申し込みをする
- 契約をする
介護保険適用外の場合
介護保険が適用されない場合
介護保険適用外のショートステイは、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などが提供している、実費で宿泊できるサービスです。介護保険の手続きは不要なため、必要なときに何度でも利用できるのが特徴です。
介護保険適用外のショートステイを利用するためには、以下の手続きが必要です。
利用したいショートステイ施設を選ぶ
利用申し込みをする
施設と契約をする
利用したい施設に直接電話して、利用条件や空き状況などを確認し、利用条件や空き状況が問題なければ、予約をおこないます。
施設から必要書類や持ち物などの案内があれば、準備しましょう。
ショートステイを利用する施設の選び方
ショートステイで利用する施設を選ぶ際は、納得のいくサービスを受けるためにも、以下の点について確認しておくとよいでしょう。
- 立地や交通アクセス
- サービス内容や費用
- 雰囲気やスタッフの対応
それぞれ、施設によって異なるため、利用者や家族に合った施設を選ぶことが重要です。
ひとつずつ、具体的に見ていきましょう。
施設の立地や交通アクセスを確認する
自宅から近いか遠いか、送迎サービスがあるかないか、公共交通機関が利用できるかどうかなどを確認します。
通いやすく、安心して利用できる施設を選ぶといいでしょう。
厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で、事業所の情報を見たり、比較検討したりできますので、利用するのもひとつです。
施設のサービス内容や費用を比較する
いいなと思った施設があれば、利用者と一緒に見学に行き、食事や入浴、レクリエーションなどのサービス内容や質、費用、自己負担額などを比較しましょう。
利用者や家族が満足できるサービス内容と費用のバランスを確認します。
雰囲気やスタッフの対応
施設の雰囲気や、スタッフの対応は、実際に行ってみないとわかりません。
玄関から入ったときの第一印象や、施設の明るさ、匂い、対応してくれたスタッフの印象はどうでしょうか?
また、働いているスタッフはどのような表情か、スタッフ同士のやりとりは和やかな様子かどうかも見てみましょう。
施設の清潔さや快適さ、スタッフの対応や人数、他の利用者の雰囲気などを見学することで、安心して気持ちよく過ごせる施設を選べます。
ショートステイを利用する際の注意点
ショートステイでは、施設に持っていく持ち物や持ち込み禁止のもの、施設のルールやマナーなどがあります。利用する前に確認しておきましょう。
施設に持っていく持ち物や持ち込めないものを確認する
自宅から用意して持っていく物は、着替えや下着、歯ブラシ、タオル、薬や介護用品などです。
薬や介護用品を忘れないように、ショートステイに行くときはあらかじめ用意しておくなど、気をつけましょう。
持ち込めないものは、現金や貴重品、危険物や禁止物などです。
施設によって持っていくものや持ち込めないものが異なる場合があるため、事前に確認しておきます。
施設のルールやマナーを守る
施設では、利用時間や食事の時間、入浴の順番や時間などのルールが決まっているので、確認しておきましょう。
マナーとしては、スタッフや他の利用者に対する挨拶や声かけ、共用スペースや備品の使い方などです。
施設のルールやマナーを守ることで、利用者がお互いに快適に過ごせます。
ショートステイを上手に利用して介護を乗り切ろう
要支援1でショートステイを利用することは、利用者や家族にとってさまざまなメリットがあります。デメリットや注意点もあるため、利用者や家族に合った施設を選び、適切な手続きをおこなって、利用しましょう。
介護は「ゴールが見えないマラソンのようなもの」と例えられています。
介護者が疲れ切ってしまっては、介護が続けられないどころか、介護者自身も心身を患ってしまう場合も。
利用者自身がある程度動けるときから、上手にショートステイを利用してみることで、今後の介護を乗り切る選択肢が増えますよ。