新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けている業界は、外食産業や観光業ばかりではありません。介護業界においても影響は大きく、ダメージは多大なものとなっています。
介護サービスは、高齢者やその家族にとって、生活するうえで欠くことのできないもの。これを支えていくため、国や都道府県ではさまざまな支援策や補助金制度を設けています。
もちろんすべての問題がお金で解決するわけではありませんが、お金があれば改善できることも多いはず。コロナ下に限らない補助金制度もありますので、自施設で活用できるものがないか、ぜひチェックしてみてくださいね。
感染症に備えるための費用を助成
新型コロナウイルス感染者数が急増した第5波。このときは医療が逼迫してしまい、感染しても入院できないケースが多く発生していました。入居型介護施設で生活する高齢者の場合は、そのまま介護施設での療養を余儀なくされることも。今後、またそんなケースが起こらないとも限りません。
入居型介護施設では、自施設で感染者が療養生活を送らなければいけなくなった場合に備えて、感染を拡大させないための設備を整えておく必要があります。たとえば多床室に壁を設置して個室化したり、ウイルスが広がらないよう陰圧室を設置したり、感染拡大を防ぐためのゾーニング環境を作るなど。令和2年度の補正予算より、こうした環境整備にかかる費用を助成する制度が設けられています。
【補助上限額】
・多床室を個室化する場合の改修費:1定員あたり97.8万円まで
・簡易陰圧装置の設置費用:1施設あたり432万円×都道府県が認めた台数
・ゾーニング環境の整備費用
(1)ユニット型施設の各ユニットへの玄関室設置:1箇所につき100万円
(2)従来型個室・多床室のゾーニング:1箇所につき600万円
(3)2方向から出入りできる家族面会室の整備:1施設につき350万円
実施主体は各都道府県となっていますので、詳しくは該当する自治体まで問い合わせてみてください。
≫高齢者施設等において新型コロナウイルス感染症の感染者が発生した場合等に活用することができる制度等について
コロナ対応のために追加で増えた費用を助成
通常なら発生するはずのなかった費用が、新型コロナウイルスへの対応のために増えた場合、それを助成する制度も設けられています。こちらも実施主体は各都道府県です。それを助成する制度も設けられています。こちらも実施主体は各都道府県です。
(1)感染者が発生、または濃厚接触者に対応した場合や、休業要請を受けた場合
→緊急時の人材確保にかかった費用や、職場環境の復旧のための消毒・清掃等の費用、やむを得ず施設内療養を行った場合に追加でかかった費用などが助成されます。
(2)平時は通所系サービス事業所だが、コロナ下での代替サービスとして利用者の居宅でサービスを提供する場合
→初期費用として備品や体制を整えるためのお金も助成が受けられます。
(3)感染者が発生した施設から利用者を受け入れたり、応援職員の派遣を行う場合
→人材を確保するためにかかった費用や、応援派遣にともなう費用などが助成されます
上記のほかにも、一人も感染者が発生していない施設であっても、スタッフや入居者に感染の疑いがあって自費検査を行った場合、その検査費用も助成対象とされています。
≫令和3年度新型コロナウイルス感染症流行下における介護サービス事業所等のサービス提供体制確保事業の実施について
無担保・無利子で融資が受けられる
新型コロナウイルスの影響で売上が減ったり事業停止になったりと、経営に影響を受けた介護施設に向けての優遇融資が行われています。
貸付対象は、利用者が減少したり休業要請に対応などで経営に影響を受けた福祉関係施設や、利用者、スタッフ、またはスタッフの家族に感染者が出て休業・減収となった入所施設。最大1億円まで無担保で、当初5年の間無利子で融資を受けることができます。詳しくは下記ホームページをご参照ください。
コロナ関連以外の補助金もチェックを
【介護ロボットやICTの導入補助金】
介護ロボットやICTなどのテクノロジーは、介護の業務負担を軽減する強い味方。すでに予算枠がいっぱいとなっている自治体もありますので、まずは該当する自治体のホームページで状況を確認してみてくださいね。
≫IT導入補助金2021(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)
【働く人の健康をサポートする助成金】
介護スタッフのメンタルヘルスケアも、介護施設の運営には欠かせない大切な要素です。これを推進するための助成金制度が「ストレスチェック助成金」「職場環境改善計画助成金」「心の健康づくり計画助成金」。計画を立てて実施すると10万円の助成金が受け取れるなどの内容となっています。
コロナ下においてメンタルヘルス対策の強化を考えているなら、ぜひ忘れずに助成金も受け取っておきたいですね。詳しくは下記ホームページをご参照ください。
【働く人のキャリアアップを促進する助成金】
パートや派遣で働く人たちを正社員化したり、労働時間を延長して社会保険に適用させたりした場合に受け取れる助成金が「キャリアアップ助成金」。
キャリアアップ管理者を選任したり、計画を作成する必要がありますが、たとえば中小企業で有期雇用から正規雇用に切り替え、それにより生産性も向上すると認められるなら、一人あたり72万円の助成が受け取れます。正社員になる人がシングルファーザーやシングルマザーならさらに加算も。
非正規で働く優秀なスタッフにはぜひ正社員になってほしいところなので、こういった助成金も積極的に活用していきたいですね。
スタッフの資格取得支援を考えているなら、「人材開発支援助成金(一般訓練コース)」の活用を検討してみてください。初任者研修・実務者研修の受講料や、訓練に使った時間に対して、経費・賃金の助成が受けられます。事業所にとってもスタッフにとってもメリットが大きい助成金制度です。
【仕事と家庭の両立を支援する助成金】
「両立支援等助成金」には、「介護離職防止支援コース」や「育児休業等支援コース」「女性活躍加速化コース」など、いくつかのコースがあります。たとえば育児休業等支援コースなら、要件を満たせば育休取得時に36万円、職場復帰時に36万円、代替要員確保時に60万円等々、手厚い助成が受けられます。
【人材確保等支援助成金】
人材の定着率が上がるような、魅力的な職場づくりへの取り組みに対する助成金です。いくつかのコースのなかでも「介護福祉機器助成コース」はチェックしておきましょう。福祉機器を導入して1年後に離職率低下目標を達成すると、かかった費用の最大35%、上限150万円まで助成が受けられます。
≫人材確保等支援助成金 介護福祉機器助成コース(厚生労働省ホームページ)
【就職が困難な方を雇い入れた場合の助成】
「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース・生涯現役コース)」という助成金制度では、高齢者や母子家庭の母、障がい者の方など就職が困難な方をハローワーク等を通じて雇い入れた場合、1年~3年の間、6ヵ月ごとに30~240万円が助成されます。
≫特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)(厚生労働省ホームページ)
≫特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)(厚生労働省ホームページ)
手間を惜しまず制度活用を!
本当に困っているとき、「お金」という目に見える形での援助はやはりありがたいもの。ただし助成金や補助金の情報は、待っていても向こうからはやってきません。情報収集や書類作成の手間はかかりますが、これらを惜しまず活用していきたいですね。コラム内で気になる補助金制度が見つかったなら、ぜひ詳しく調べてお役立てください。