介護職が知っておきたい「特養」と「老健」の違いとは

介護の仕事

疑問を抱えた様子の女性
「特養」と略されることが多い「特別養護老人ホーム・介護老人福祉施設」と、同じく「老健」と略される「介護老人保健施設」。両方とも似たような漢字が並び、わかりにくい、紛らわしいと感じることがあるかもしれません。

この2つはどちらも介護が必要な高齢者が入居する介護施設ではありますが、異なる目的を持っているため、特徴も大きく異なっています。

今回は介護職として働く人の目線から、その違いをご説明していきます。働いてみて「思っていたのと違う!」と感じることがないように、転職先として「特養」や「老健」を考えている人は、とくにしっかり確認しておいてくださいね。

目的の違い

特養と老健の違いは、この2つの施設の「目的の違い」から生まれます。さっそく確認してみましょう。

特別養護老人ホーム(特養)の目的
介護が必要な高齢者が、必要なケアを受けながら安心して暮らせる生活の場を提供すること

介護老人保健施設(老健)の目的
入居した高齢者が、また自宅に戻って生活できるように医療的ケアやリハビリなどで支援すること

終の棲家として利用する人も多い特養とは違い、老健が目指すのは在宅生活への復帰。そのため老健の入居は原則3ヵ月~6ヵ月と期間が決められており、3ヵ月ごとに在宅復帰ができるかどうかの評価が行われます。根本的に目的がまったく異なるため、施設の雰囲気や仕事内容も大きく異なってくるのです。

特養と老健で異なるポイントは?

利用者と製作レクをする女性介護職員
では実際の仕事上において、具体的にどのような点が異なっているのか、介護スタッフの目線からひとつずつ見ていきましょう。

レクやイベントの頻度
入居者が日常生活をおくる特養では、生活に楽しみや彩りを与えてくれるレクやイベントがしばしば企画されます。しかし機能回復を目指す老健では、それらは必要最小限になります。

入居者様の要介護度
特養の入居基準は要介護度3以上。要介護度の高い方が多いため、移乗や体位変換など体力を使う身体介護の仕事も多めになります。一方老健の入居条件は介護度1~5と幅が広く、比較的元気な高齢者の方もおられます。

医療と介護のバランス
老健は治療やリハビリをメインに行う施設なので、看護スタッフの人数が特養に比べて多く、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職も配置されています。また特養では医師は非常勤であることが多いですが、老健の場合は医師の常駐が義務づけられており、より医療色が強くなっています。

夜間の人員配置
看護職の比率が高い老健では、夜間も看護師や准看護師の勤務があることがほとんど。一方特養では、夜間は介護職のみの勤務となり、看護職はオンコール体制(電話でいつでも連絡が取れる体制)をとるケースが一般的です。特養で夜間に急変があれば、看護職に電話で指示を仰ぐかたちになります。

給与額だけなら特養に軍配

給与明細
管理職でない常勤介護職の平均給与額(月給)を比較してみると、やや特養の方が高くなっています。どちらも夜勤があるため、夜勤手当が給与額を押し上げています。

○特別養護老人ホーム・・・344,140円
○介護老人保健施設・・・330,760円
※月額基本給+手当金+一時金(10~3月支給金額の1/6)

※「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果(154P)」(厚生労働省)より

特養と老健の違い、まとめ

特養と老健は異なる目的を持っており、その目的に合わせて特徴も異なります。それぞれの特徴を下記にまとめてみましょう。

特別養護老人ホーム(特養)の特徴

・その人らしさを支えるケアを重視
・介護の技術全般を磨ける
・レクやイベントが老健より多め
・ご利用者様の入れ替わりが少なく、じっくりと人間関係を築ける

介護老人保健施設(老健)の特徴

・快適な暮らしより病気やケガの治療・リハビリを優先
・医療の知識が身につく
・夜勤時、看護職と協力しながら仕事ができる
・頻繁にご利用者様が入れ替わるが、在宅復帰という目に見えるやりがいもある

もちろん施設によって若干方針の違いはありますが、一般的には上記のような傾向となっています。「ご利用者様とじっくり関係を築いていきたい」「残された時間をその人らしく穏やかに過ごして欲しい」という思いが強いなら、職場としては老健より特養の方が合うかもしれません。

逆に「治療やリハビリをがんばって、元気になって在宅復帰してほしい」という考えの人なら、老健はピッタリ。ご利用者様と心をひとつに、二人三脚で歩むことができるでしょう。自分の介護に対する考え方に近いのはどちらか、よく考えてみてくださいね。

特養と老健の意外な共通点は?

ここまで特養と老健の相違点をみてきましたが、ちょっと意外に思える共通点もあります。それはどちらにも看取り介護があること。

最近特養では、本人やご家族の希望に応じて看取り介護を行うケースが増えています。そのため特養で働くスタッフは、ターミナル期のご利用者様のケアを行ったり、臨終の場面に立ち会うことも多くなるでしょう。

一方老健は、元気になって在宅復帰を目指す施設なので、看取り介護とは縁がないように思えます。しかし医師が常駐し看護師が多く配置されている老健は、終末期の苦痛をやわらげるための薬の処方や注射などの緩和ケアが行いやすく、実は看取り介護との相性が良好。特養よりやや件数は少ないものの、必要に応じて行われているのが実情です。

方針として看取りを行っていない施設もありますが、将来的に入居型介護施設での看取りは広まっていく傾向にあります。特養だから看取りがあるor老健だから看取りはない、と一概には決まっていないため、気になる場合は個別に確認するのがおすすめです。

こちらのコラムも参考に≫介護職のための看取りの知識。不安を払拭して前向きに!

「どんな介護職になりたいか」を大切に

利用者の手を握る女性職員
介護職にとって、身についたスキルは自分を表す名刺のようなもの。そして「どんなスキルが身につくか」は、「どんな職場で働いたか」に直結しています。だからこそ職場選びはとても重要。

「どんなときにも頼ってもらえるオールマイティーな介護職になりたい」「医療やリハビリに興味がある」「お年寄りとの関わり合いが楽しい」などなど、どんどん自己分析をしてみてください。そこから自分に合う職場が少しずつ見えてきます。

いまいち自分にどんな職場が向いているか分からない、という方は、プロのアドバイザーにたずねてみるのもおすすめ。ツクイスタッフでは、介護業界に精通した担当者が個別にお話を伺い、丁寧にあなたの思いを引き出していきます。

ご希望に添った就業先をご案内しますので、不安だらけの転職も心強く踏み出すことができるはず。目指すゴールがはっきり決まっている方も、心に迷いのある方も、ぜひご相談をお待ちしています!

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