介護現場でのタブレット活用|メリット・注意点・スマホと比較・実例

介護の仕事

タブレット操作をしている介護職員近年、厚生労働省がデジタル化を進めているものの、介護施設によっては手書きや複写機など、アナログな方法を続けているところが多くみられます。

手書きでの記録は時間や手間がかかるため、職員の負担につながっていますが、タブレットを利用すれば、記録業務の効率化や質の向上が可能です。

介護記録を作成する時間を効率化して作れた時間を、ご利用者様やご家族とのコミュニケーションに使えば、介護の質向上にもつながりますよ。

本記事では、タブレットを活用した介護記録のメリット・注意点・スマホとの比較・実例をご紹介します。
タブレットを導入することで、具体的にはどのように変わるかわかりますので、タブレット導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。

参考:介護現場におけるICTの利用促進|厚生労働省
参考:介護分野の生産性向上に向けたICTの更なる導入促進に関する調査研究 報告書
p.40 図表 2-45 事業所において導入している ICT 機器(サービス票)(複数回答) /
図表 2-46 導入している ICT 機器の台数(台)(サービス票)※各機器を「導入している」と回答した事業所を集計対象

介護記録をタブレットでおこなうメリット

タブレットを見ながら相談する介護職員タブレットを使って介護記録を作成・管理することでの大きなメリットは、介護現場の業務効率化や、ご利用者様へのサービス向上などです。

厚生労働省の「ICT導入支援事業 令和3年度 導入効果報告取りまとめ」によると、記録などの文書をタブレットなどで作成する効果として、以下のような結果が報告されました。

令和3年度I C T導入支援事業 導入効果報告 ~文書

画像引用:文書に関する効果
画像引用:厚生労働省「ICT導入支援事業 令和3年度 導入効果報告取りまとめ

ここでは、以下3つのメリットについて、詳しくご紹介します。

  • 介護記録の入力時間が短縮される
  • 介護記録の質が向上する
  • 介護記録の管理が楽になる

一つずつ見ていきましょう。

介護記録の入力時間が短縮される

現場で手書きしたメモや記録を、改めて手書きで記入したり、パソコンに打ち込んだりするような二度手間の作業を苦痛に感じる介護職も多いのではないでしょうか。

タブレットは持ち運びが簡単なので、ご利用者様のそばですぐに記録できるため、入力時間を短縮できるだけでなく、記録漏れや記入ミスを防げます。

文字を書く量そのものも減るので、外国人技能実習生も記録可能です。

介護ソフトを導入した事業所では、記録作成の時間が2割短縮し、介護の質も向上したという事例も。厚生労働省の動画では、ウォーキング中に音声入力で記録を入力している様子が紹介されています。

参考記事:「入居者の介護日誌を手書きからタブレット入力へ切り替えると、効率化だけでなく介護の質向上につながった マエダメディカルコーポ(香川県)
参考:厚生労働省「タブレット型端末を活用した記録

介護記録の情報共有がしやすくなる

タブレットに記入した介護記録はリアルタイムで共有されるので、スタッフと医療機関の情報交換や連携がスムーズにできるのも大きなメリットです。

介護記録に画像や動画などのメディアを添付でき、文字では伝えにくいご利用者様の状態の変化が記録に残せるので、正確な判断や治療などの対応がおこなえるようになります。

また、訪問先に行ったあと、記録のためにわざわざ施設に戻らなくても自宅で記入ができるため、通勤時間を減らせたり、テレワークできたりするようになりました。

さらに厚生労働省は人手不足を和らげるため、2024年からケアマネジャーとサービス利用者の面談をオンライン化できるよう規制緩和に乗り出そうとしています。

ケアマネの負担を軽減して業務の効率化を図り、複数の施設を兼任できるようにすることで、介護を必要としている高齢者がサービスを受けられるようにすることをねらいとしています。

参考:厚生労働省「タブレット型端末を活用した記録
参考:日本経済新聞「介護のオンライン面談解禁、24年度から 職員負担軽減へ

介護記録の管理が楽になる

タブレットでは、介護記録をクラウドサービスで保存できるので、介護記録の管理が楽になるのもメリットのひとつです。

紙に書いた記録と違い、紛失などのリスクを低減できるだけでなく、以前の記録を探したいときは検索機能を使えばすぐに見つけられるので、探す手間も省けます。

紙を使う必要がなくなるので、コスト削減につながり、保管スペースも必要ありません。

介護ソフト「ケアカルテ」を導入した事業所では、紙で管理していた排泄表や入浴表、健康チェック表、ヒヤリハットなどのExcelシートを一切無くすことができ、ペーパーレス化ができたという事例があります。

参考:ケアカルテ「導入事例

介護記録をタブレットでおこなう際の注意点

タブレットセキュリティイメージタブレットを使って介護記録を作成・管理すると、介護現場の業務効率化やサービス向上につながりますが、注意点もあります。

ここでは、タブレットを介護現場で安全・安心して使うための注意点をふたつ紹介します。

タブレットの管理や保管に注意

タブレットが紛失や盗難にあったり、破損や故障したりすると、介護記録の作成や管理ができなくなるだけでなく、ご利用者様のプライバシーが侵害される可能性があります。そのため、タブレットの管理・保管には十分に注意する必要があります。

タブレットにはパスワードや指紋認証などのロック機能を設定し、施錠できる収納場所に保管するなど、置き場所を決めるようにしましょう。

また、タブレットは水や衝撃に弱いので、防水や耐衝撃のケースに入れ、湿気や温度の高い場所や落下の危険のある場所に置かないように気をつける必要があります。

タブレットの管理・保管に関する注意点は、タブレットの取扱説明書やメーカーのサイトなどに記載されているので確認しましょう。

介護記録の漏えいが起こった場合、個人情報保護法や介護保険法などの法律に違反する可能性があり、事業者や職員に損害賠償や刑事罰などの責任が発生する可能性があるため、注意が必要です。

参考:厚生労働省「個人情報保護法改正に伴う漏えい等報告の義務化と対応について

タブレット利用ルールを決めるときの注意

タブレットの利用ルールは、タブレットの効果的な活用と、ご利用者様のプライバシー保護のために必要です。

利用時間や場所など、タブレットの利用ルールを決める際は、業務内容やニーズに応じて設定し、職員にしっかりと周知しましょう。

一例として、タブレットには名前や番号を記入し、貸出や返却の記録をつけることで、紛失を防げます。

タブレットの操作や入力については、正確に記録するためのわかりやすいマニュアルを作成することで、タブレットの扱いに慣れていない職員も入力や撮影などの機能を使いこなせるようになるでしょう。

また、ご利用者様やご家族のプライバシーを守るためのルールを設定することも大切です。

例えば、タブレットで写真や動画を撮影するときは、ご利用者様やご家族の同意を得て撮影し、外部に出さないようにするなど、記録や情報について、適切な管理をするようにしましょう。

タブレットの利用ルールに関する事例やノウハウは、介護ソフトの提供会社のサイトなどに紹介されています。

タブレットとスマホどちらがいい?比較とメリット・デメリット

メリットデメリットイメージタブレットとスマートフォン(以下スマホ)は、どちらもタッチ操作でインターネットやアプリを使える便利なデバイスですが、それぞれにメリットやデメリットがあります。

移動の多い訪問介護や訪問看護などの場合は、スマホの方が持ち運びやすく、その場で記録を入力できます。

通所や施設内でのサービスの場合は、タブレットの方が画面は大きく、周囲のスタッフと情報共有しやすいです。

メインとして使用するデバイスを決める際は、施設のニーズや用途に合わせて、適切なものを選ぶようにしましょう。

以下、タブレットとスマホの主な違いや特徴を比較表でまとめてみました。

項目 タブレット スマホ
画面サイズ 7インチ~12インチ

(※製品によって異なります)

5インチ~7インチ

(※製品によって異なります)

電話機能 ほとんどなし

(インターネット電話アプリやビデオ通話などを利用すれば可能)

あり
通信方法 Wi-Fiやセルラー 音声通話やデータ通信
持ち運び バッグに入れて運ぶ ポケットに入れて運べる
価格 2万円~10万円

(※性能や機能、価格プランで異なる)

3万円~15万円

(※性能や機能、価格プランで異なる)

維持費 セルラー契約の場合は月額料金 音声通話やデータ通信の月額料金
メリット 大画面で見やすい・操作しやすい 通話ができる・携帯しやすい
デメリット 持ち運びに不便・電話ができない 画面が小さい・小さいため紛失しやすい

以下、タブレットとスマホ、それぞれのメリット・デメリットについて、詳しく見てみましょう。

タブレットのメリット・デメリット

タブレットのメリットとして、以下の点が挙げられます。

  • 大きな画面:より広い画面で記録の詳細を確認しやすい。
  • 直感的な操作:タッチスクリーンによる操作が直感的で使いやすい。
  • 複数のアプリケーション同時使用:画面が大きいため、複数のアプリを同時に使いやすい。
  • 長時間の使用に適している:大きな画面で目の疲れを軽減できる。

デメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 持ち運びの不便さ:スマートフォンに比べて大きく、持ち運びが不便。
  • コスト:購入費用が高い場合がある。
  • バッテリーの持続時間:大きな画面はバッテリーを多く消費する。

スマホのメリット・デメリット

スマホのメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 携帯性:小型で持ち運びが容易。
  • 常時携帯:ほとんどの職員が私物のスマートフォンを持っているため、取り入れやすい。
  • 緊急時の即時対応:どこにいても記録の確認や入力が可能。

デメリットとしては、以下の点が挙げられます。

  • 画面サイズの小ささ:細かい文字や詳細が見づらい。
  • 誤操作の可能性:小さな画面でのタッチ操作は誤操作を引き起こしやすい。
  • プライバシーの問題:個人のスマートフォンを使用する場合、患者情報の取り扱いに注意が必要。

それぞれのメリット・デメリットを知り、施設や業態に合うものを選ぶのがおすすめです。

【介護記録を効率化】安心して記録作成・管理できるアプリ3タイプ

タブレット入力する職員介護記録アプリには大きく3つのタイプがあります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介します。

訪問介護向けの介護記録アプリを選ぶときには、以下のような点をチェックしましょう。

  • スタッフのニーズに合った機能や操作性があるか
  • 導入や維持費用がいくらかかるか
  • セキュリティやプライバシー保護がしっかりしているか
  • サポートやアップデートが充実しているか

以下、タイプごとに特徴を見ていきます。

介護記録特化型アプリ

介護記録特化型アプリは、記録業務が効率化でき、スタッフ間の記録共有をしやすいように設計されています。タブレットで簡単に記録を入力・閲覧・修正できるほか、写真や音声なども活用できるのが便利です。

記録の内容や形式を自由にカスタマイズできるものもあり、事業所や施設のニーズに合わせて使えます。

介護記録特化型アプリの例としては、「タブ録」や「ほのぼのNEXT」などがあり、タブレットで介護記録を入力・管理できるほか、バイタル機器と連動したり、オフラインでも使えたりする機能も備えているのが特徴です。

介護記録特化型アプリを導入することで、記録作成の時間短縮やミスの防止、情報の共有化などの効果が期待できます。

参考:「タブ録
参考:「ほのぼのNEXT

訪問特化型アプリ

訪問特化型アプリは、訪問看護の効率化に役立つアプリです。タブレットで訪問スケジュールやルートを管理したり、訪問先での記録や報告をおこなったりできるのが特徴です。

出先でも使えるので、訪問先での記録や報告がスムーズにできます。また、訪問スケジュールやルートを最適化したり、訪問先のご利用者様や医療機関との連絡を円滑にできたりするのも便利です。

訪問特化型アプリの一例として、「カイポケ訪問看護」や「でらケア」などがあります。
スマホでシフトを確認し、訪問先で記録を入力すれば自動で反映されるので、そのまま帰宅でき、残業時間を減らせます。

参考:「カイポケ訪問介護
参考:「でらケア

介護ソフト一体型アプリ

介護ソフト一体型は、介護記録と業務全般の効率化を図るためのアプリです。タブレットで介護記録だけでなく、ご利用者様管理やスタッフ管理、経営管理などの機能も使えるのが特徴です。

介護ソフト一体型は、介護事業の運営に必要な機能を一つにまとめたアプリで、介護記録以外の業務もタブレットでおこなえます。

LIFEに関連する帳票に登録したデータも、簡単に集計・データ出力ができるので、提出業務の手間を大幅に削減。同じソフトを利用している事業所間での「提供票データ(予定・実績)の送信・受信・取込による登録」も可能です。

介護ソフト一体型の一例として、「ケア樹Free」や「ナーシングネットプラスワン」などがあります。
これらは、さまざまな業務帳票や計画書管理、記録、請求、分析業務など、介護施設運営全般をトータルに支援する機能が使えるので、介護事業の効率化や介護の質向上などの効果があるという実例もあります。

参考:「ケア樹Free
参考:「ナーシングネットプラスワン

タブレットを活用して、業務の効率化と介護の質の向上を実現しよう

笑顔の利用者と介護職員介護記録をタブレットでおこなうメリットや注意点、タブレットとスマホの比較とメリット・デメリット、介護アプリ3タイプをご紹介しました。

タブレットを使って介護記録を作成・管理することで、介護現場の業務効率化につながります。効率化で得られた時間を有効に使えば、よりよいケアやコミュニケーションができるようになりますよ。

事業所や施設のニーズに合ったアプリとデバイスを選び、適切な管理・保管をおこないながら活用していきましょう。

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