いくら介護の仕事が好きでも、トラブルがあったときや心身ともに疲れてヘトヘトなとき、給与明細を見たときなど、「もう辞めたい」と思うことはないでしょうか。そんなとき我慢して働き続けるのか、何か行動を起こすのか・・・悩ましいところですよね。
そんなとき参考になるのが「他の人はどうしているのか」ということ。今回は令和4年度の実態調査から、みんなが介護職を辞めた理由や今の職場を選んだ理由を、ランキング形式でご紹介します。
これを参考に辞める以外の打開策も検討しつつ、辞めたい気持ちが変わらなければ転職を真剣に考えていきましょう。失敗しない転職についてもポイントをお伝えしますので、ぜひ最後までお付き合いくださいね。
介護職を辞めた理由トップ5
令和4年度の介護労働実態調査※から、介護職員から介護職員へと転職した人が、前職を辞めた実際の理由を知ることができます。さっそく1位から見ていきましょう。
1位:職場の人間関係に問題があったため(28.4%)
2位:法人や施設・事業所の理念や運営の在り方に不満があったため(22.5%)
3位:収入が少なかったため(20.4%)
4位:他に良い仕事・職場があったため(18.2%)
5位:自分の将来の見込みが立たなかったため(15.0%)
3割近くの人が挙げたのが「職場の人間関係」問題。同調査内で「人間関係等についての悩み、不安、不満」についてもアンケートしていますが、これによると多かった悩みは「部下の指導が難しい(20.3%)」と「合わない上司や同僚がいる(20.2%)」でした。
「経営層や管理職等の管理能力が低い、業務の指示が不明確、不十分(19.7%)」も2割近くの人が挙げており、2位の「理念や運営に不満があった」と通じるところがありそうです。
さらに、3位の収入面での不満も切実な問題。多くの介護職が「仕事内容のわりに賃金が低い」と感じながら働いており、改善の必要があります。
ただし多くの介護職がこうした理由で辞めているものの、次の仕事としても介護の仕事を選んでおり、6割近い人が「今の勤務先で働き続けたい」と答えていることから、現在は満足できる介護の職場を見つけていることも分かります。
みんなが抱えている悩みは?
では次に、同じ調査から現役介護職の方が抱えている働くうえでの悩み、不安、不満等についてのアンケート結果(複数回答)も、多い順から見てみましょう。
1位:人手が足りない(52.1%)
2位:仕事内容のわりに賃金が低い(41.4%)
3位:利用者に適切なケアができているか不安がある(39.3%)
4位:身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)(29.8%)
5位:健康面(新型コロナウイルス等の感染症、ケガ)の不安(29.0%)
半分以上の人が「人手が足りない」という悩みを挙げています。時間に追われてケアが丁寧にできない、心も体も余裕がない・・・こうした状況は仕事への満足度を低くするうえ、4位の身体的不安や5位の健康面での不安の原因にも。
そして2位の「仕事内容のわりに賃金が低い」という悩みも、4割以上の人が挙げており深刻です。自分の能力や労働に対して正当な評価がないと感じさせる環境は、仕事に対する満足度を下げてしまいます。
辞める以外の方法も試そう
こうしてみてくると、介護職を辞めたくなる理由は、「人間関係の問題」「人手不足」「賃金」の3つがかなりの比重を占めていると言えそうです。このうちどれかひとつではなく、2つ、3つが重なることもあるかもしれません。本当に辞めてしまうと元には戻せませんから、その前に試してみたい対策についてそれぞれみていきましょう。
人間関係の問題で辞めたいとき
合わない上司、同僚がいる
合わない人が1~2人など少数で、他の人とはよい関係を築けている場合は、自分の受け止め方を少し意識して変えることで、ストレスを低減していくことができます。以下の方法を試してみてください。
- 自分のやるべきことに集中し、相手のことを気にしすぎない
- 上層部に相談してチームを変えてもらうなど、適度に距離を保つ
- 相手の良い点を探し、敬意を持って接する
- 挨拶や仕事の話はきちんとするよう心がける
部下の指導が難しい
この場合は、まだ部下と信頼関係が築けていないのかもしれません。好意や信頼を持っている人の指導は素直に受け止められても、知らない人の言うことは反発したくなるもの。あせらず世間話などから関係づくりを心がけると、状況が変わる可能性があります。
- 部下の話に耳を傾け、聞き役になる
- 自分のやり方を押しつけず、部下のやり方をできるだけ尊重する
- 「~してくれてありがとう」「~してくれて助かった」等、感謝の声かけをする
- 「しっかりやる」「ちゃんとやる」といった抽象的な言葉を避け、具体的に指導する
- 「ここのところが努力して進歩したね」など、過程に着目して褒める
こうした対処で改善できる範囲を超えている場合や、自分の心が傷つけられていると感じる場合は、ムリせず職場を変えることがおすすめ。仕事探しのコツや転職時に気を付けたいことは後半で詳しくご紹介します。
人手不足が辛くて辞めたいとき
人手が不足していること以外は気に入っているのなら、下記のような方法を試してみてください。あなたに辞められてしまうと困るので、職場は前向きに検討してくれるはず。
- 業務改善(介護ソフトやタブレット、インカムなどの導入、ストックルームの整理整頓など)を提案する
- 洗濯や掃除といった介護職でなくてもできる業務のアウトソーシングを提案する
賃金に不満があって辞めたいとき
- 資格を取得する
- 役職に就く
- パート・アルバイトから派遣職員、正社員等へ働き方を変える
無資格で働いている場合は、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士などの介護系資格を取得することで、給与を上げることができます。職場に取得応援制度がある場合もあるので、ぜひ確認してみてください。すでに介護福祉士を取得している人は、ケアマネジャーや相談職の資格を取得してキャリアチェンジを行うのも効果的。
パート・アルバイトで働いている人は、派遣職員や正職員など働き方を見直すこともおすすめの方法です。間に派遣会社が入れば、給与アップの交渉を派遣会社にお願いすることも可能です。
転職の決意を固めたら
施設の経営や理念など自分の力ではどうにもできない問題なら、転職という手段が有効です。次の職場では失敗したくないあなたには、ハローワークやネット、求人誌等で自力で探すよりも、その道のプロに探してもらう「派遣」という働き方がおすすめ。
介護業界に特化した転職エージェントに登録すると、都合の良い時間だけ短時間働いたり、一定期間派遣職員として働いて相性を確認してから正職員へ登用される紹介予定派遣など、さまざまな働き方のなかから選んで働くことができます。
派遣職員の場合は直接雇用より時給が高めになることも魅力。エージェントを選ぶ際には、ぜひ施設に実際に足を運んで生きた情報を集めている「地元密着型」を選ぶようにしてください。
こちらのコラムも参考に≫「介護の派遣会社は地域密着がオススメ!派遣のメリットやパートとの違いも」
こだわり条件で介護の仕事探し≫かいごGarden|キーワードから介護の仕事を探す
理想の職場目指して行動を
労働人口が減少している現代日本では、介護業界に限らずどこでも人手不足。介護業界に見切りをつけ、異業種へと転職する人が増えているという最近のニュースも気になります。
“厚生労働省の分析によると2022年は離職した人が新たに働き始めた人を上回り、就労者が前年より1.6%減った。飲食・小売りや製造業などで賃上げが広がり、より良い待遇を求めて転職する人が増えた。介護を必要とする高齢者は増えており、処遇の改善による介護士の確保が急務になる”(2023年10月23日 日本経済新聞記事より抜粋)
コラムを最後まで読んでくださったあなたは、毎日が介護職を辞めたい気持ちと続けたい気持ちのシーソーのような状態かもしれません。今の職場に不満はあっても気に入っているところもあると、なかなか転職まで思いきれないこともあるでしょう。ご紹介した対策のなかで気になったものがあれば、ぜひ試してみてください。
また、かいごGardenにご相談いただければ、専任のキャリア・コーディネーターが誠心誠意お手伝いします。自分の気持ちにフタをせず、理想の職場目指してぜひ一歩を踏み出してみてくださいね。