プロの仕事といえばクオリティの高さが期待されるもの。掃除なら素人には落とせない汚れまで落としてピカピカに、料理なら高級レストランのようなおいしい料理を短時間で・・・。では介護においてはどのような仕事が求められるのでしょうか。
高齢者の悩みをたちどころに解決してみんなを笑顔にしたいところですが、人を相手にする介護にそんな魔法は存在しません。どんなに仕事ができるベテラン介護職でも、結局悩みながら一人ひとりと向き合い、試行錯誤を繰り返しています。
介護のプロとはどういうものか、漠然としていてよく分からないという人のために、今回はプロの心構えとして最低限「やってはいけないこと」を4つ挙げてみました。介護の基本姿勢ではありますが、長く続けていても見失うこともあります。初心者の方も中堅職員の方も、自分に照らし合わせてぜひチェックしてみてくださいね。
介護のプロとは
最初に、そもそも「介護のプロとは何なのか」について考えていきましょう。どのような人が介護のプロといえるのか、プロであるための条件として考えられるものを挙げてみました。
《どのような人が介護のプロと呼べるか》
- 介護の専門知識を持っている(有資格者である)
- 介護の実務経験を持っている
- 利用者様にいつも笑顔で接することができる
- 自分の感情をコントロールできる
- 知識・技術を吸収し成長しようという意欲を持っている
- 周囲と協力・連携して働くことで、より良いケアを目指している
いかがでしょうか。かなり難しいことも入っていますよね。介護職を始めたばかりの人がこれを実現しようとしても、取り組むべきことが多すぎたり漠然としていてわかりにくいかもしれません。
そんなときはまず「絶対にやってはいけないこと」だけ頭に入れて、「最低限これだけはしない」と決めてしまうのがおすすめです。
あれもこれも「やらなくてはいけない」と考えると、考えることが多すぎてパニックになってしまいがち。まずは「しない」ことだけ意識して基本姿勢を身につけ、そこからプラスαにチャレンジしていきましょう。
プロとしてやってはいけないこと4つ
1.利用者様を上から目線で見る
利用者様の日常生活にはさまざまな手助けが必要とはいえ、職員より利用者様が劣っているわけではありません。「できないかわいそうな人を助けてあげている」といった上から目線の意識を持っていると、ふとしたときに相手を見下した言動につながることがあります。
利用者様一人ひとりに自由な意思と権利があり、最大限尊重されなくてはなりません。小さな子供に対するように接したり、利用者様の意思を軽んじるなどの態度は、尊厳を傷つけることにつながるため介護のプロとしてやってはいけません。
もちろん利用者様と介護職員の間に上下関係はありませんが、ケアをする人とされる人という図式になるので、どうしてもする方は「やってあげている」、される人は「お願いする」という意識になりがちです。
このような思いを持って介護をしていると、利用者様は自尊心を傷つけられたり萎縮して本当の気持ちを言い出せなくなります。常に対等な人と人として、敬意を持って接することを忘れないようにしましょう。
2.利用者様を無視する、冷たい態度をとる
忙しくて余裕がないとき、「早く次のことをしなくちゃ」とあせるあまり、ついつい対応が素っ気なくなることはないでしょうか。小さな用事で頻繁に呼ぶ人だと、呼ばれていることに気付いても聞こえないふりをしたくなるかもしれません。
しかし「無視されること」は人間にとって一番つらいことと言われます。それは「存在を認めてもらえない」ことにつながるから。忙しくて手が離せないときは「ちょっとこれだけ終わらせてからいきますね」などと事情を話して待ってもらうようにしましょう。
頻繁に呼ぶ人はその裏に不安や寂しさが隠れていることもあります。普段から「ケアをするときには必ず声をかける」、「目が合ったら微笑みかける」、「そばを通るときには一声かける」など、コミュニケーションを増やす工夫をしてみましょう。また呼ばれる内容や時間帯などをよく観察して周囲のスタッフと共有すると、改善につながることもあります。
3.気分の波を仕事に持ち込む
嫌なことがあってイライラしている、悲しい出来事があって落ち込んだ・・・。生きていれば、とても笑顔になれる気分ではない日もあります。でも、こちらのプライベートの事情は利用者様には関係のないこと。職場に着いたら気分を切り替えて、つくり笑いでもよいので笑顔になりましょう。まちがっても利用者様や周囲のスタッフにイライラをぶつけたりしてはいけません。
プライベートの気分を仕事に持ち込まないために、仕事に入る前にストレッチをしたり誰かと話したり、甘いものを食べる、好きな音楽を聴くなどして切り替えを。自分が何をしたら気分が晴れるのか、自分の機嫌のとり方も研究していきましょう。
忙しいとクヨクヨしている時間もなくなるので、本当につらいときは仕事に打ち込むのも気分転換になります。あなたがカラ元気でがんばっていると、敏感な利用者様が「何かあったの?」と気づかってくれることもあります。そんな温かいふれあいは介護職の醍醐味です。
4.利用者様ができることまでやってしまう
親切心からの行動かもしれませんが、利用者様ができることまで先回りしてやってしまうと、やがて使わなくなった筋力や機能が低下して、できたはずのこともできなくなってしまいます。
また利用者様のやることがなくなり、生きがいや楽しみを奪うことにもつながりかねません。介護のプロなら必要時以外は手を出さず、見守るテクニックを身につけています。
ただし、何ができて何ができないのかを的確に見極めることは別問題として必要です。少し難しいこともがんばってチャレンジできるときもあれば、ストレスや病気の影響などでがんばれないときもあるもの。「前はできていたのだから、できるはず」と決めつけるのは危険です。
必要なのはいつも利用者様の様子をよく観察し、本人の話に耳を傾けること。迷ったら本人に「お手伝いしましょうか?」と聞いてみて、お願いされてから手伝うようにするのも良いでしょう。
介護の資格を取ろう
最初に述べた介護のプロの条件に、専門知識があることや経験があることを挙げていました。これを誰の目にも見える形で証明してくれるのが資格です。もしまだ資格を持っていないようなら、まずは「介護職員初任者研修」から、ぜひチャレンジしてみましょう。
そこからステップアップして最終的には国家資格である「介護福祉士」を取得していると、必要な専門知識や実務経験を持っていることを国が証明してくれることになります。
給与アップにつながったり就職に有利になることはもちろん、何より自信を持って「私は介護のプロです」と言えるようになるので、ぜひ検討してみてくださいね。
こちらのコラムも参考に≫一生役立つ「介護福祉士」資格。効率のよい取得の方法は?
自分のケアもプロの条件
どうすれば介護のプロになれるのか、日々考えて努力しているあなたはそれだけで素晴らしい存在です。どうか頑張りすぎないでくださいね。
自分に完璧を求めて頑張りすぎてしまうと、知らず知らずのうちに自分の心がすり減り、メンタル不調に陥ってしまうことがあります。介護のプロとして良いケアを提供していくには、自分自身がまず心身ともに元気でいることが大前提。
上に挙げた項目を守ることも大切ですが、あまりムリはせず疲れたらしっかり休むことや、自分の好きなことをしてリフレッシュする時間はもっと大切にしてくださいね。
こちらのコラムも参考に≫こんな症状に要注意!介護職の為の燃え尽き症候群回避法