介護記録の上手な書き方:今日から役立つ!介護の基本(6)

使えるハウツー


介護職の人が毎日書いている介護記録は、よりよいケアに結びつけるための重要なツール。でもそのことを理解していないと、他の仕事に追われておざなりになってしまいがちです。

今回は介護職初心者が戸惑う介護記録について、基本の書き方、上手な表現例やNG例をご紹介。何を書いていいか分からない、時間がかかる、毎日同じ内容ばかりになってしまうなどの悩みにお答えしていきます!

介護記録は何のために書くの?


介護記録は何のためにあるか、知っていますか?

介護記録を書く目的を知っておかないと、的はずれな内容になってしまいます。

介護記録の目的は大きく分けて4つあります。まずは何のために書いているのかを、しっかり確認しておきましょう。

  1. 職員間の情報共有のため
  2. 利用者の様子をケアプランに反映するため
  3. 利用者や家族の方とのコミュニケーションのため
  4. 事故などの際に証明とするため

介護士だけでなく理学療法士、医師、看護士など他職種のスタッフが連携する介護の現場では、職員間の情報共有がとても大切。口頭での申し送りでは、伝言ゲームになりかねません。

多くの職員が関わりながら統一した介護を行うためには、きちんとした記録が必要不可欠です。

また、介護の目標や内容を決めるケアプランを作る際にも、介護記録に記載された情報が重要な役割を果たします。どんなサービスを受け、どんな状態だったのか、介護記録を資料としてよりよいケアプランが作られるので、責任は重大です。

さらに、介護記録は利用者や家族の言葉も書き残します。これを読めば、利用者や家族のその時の思い、気持ちの変化などが分かります。

もちろん、サービスを受けているときの様子がどうだったかを確認するため、家族が読むこともあります。家族も含め、関わる人全員が思いを共有し、コミュニケーションを深めるためには、なくてはならないツールだと言えるでしょう。

そして万が一の際、行ったケアが適切だったかどうかの証明となるのも介護記録。あいまいな内容ではその役目が果たせません。できるだけ具体的に、正確な情報を記載することが大切です。

介護記録の書き方の基本ルール

まずもっとも大切なルールは、日付と時刻、記録した人の名前を記載すること。

そして書き方の基本は、「事実を正確に書く」ことです。

具体的には、「5W1H」を意識してみましょう。「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「なぜ」という5つのWと、「HOW=どうしたのか」。これらのキーワードが抜けていると、読んだ人に正確に情報が伝わりません。

慣れないうちは書き終えたら読み返し、これらが抜けていないかをチェックすると安心です。

筆記用具には消えないボールペンを使用し、書き間違えてしまったときは二重線を引いて訂正印を押します。その脇に訂正した日付と内容、訂正理由を書くようにしましょう。

修正ペンなどを使うと記録の改ざんとの区別がつかなくなってしまうので、使わないようにします。また、空欄は斜線をひいたり、「以下余白」などと書いたりするように。そのままにしておくと、加筆や改ざんができてしまうからです。

上手な表現とNG表現を、例文でチェック


具体的にどんな表現がNGで、どんな表現が適切なのかを例文でチェックしてみましょう。

悪い例「歌を歌って楽しそうにしていた」
良い例「リズムに合わせて体をゆすり、大きな声で歌っていた。終始笑顔が見られた」

悪い例「昼食はいつも通りだいたい食べた」
良い例「昼食は食堂で主食を完食、副食は2/3を摂取した」

楽しそう、イライラしている、などの印象は、書いた人の主観です。

もちろん主観も印象を伝えるうえでは役立つのですが、そう感じた根拠が書いていないと、書いた人の推測ではないかと思われてしまいます。事実と印象をバランスよく書くようにしましょう。

また「いつも通り」「だいたい」といったあいまいな言葉も、具体的な情報が伝わりません。数字や利用者の言葉などを交えて書くようにすると良くなります。

では転倒などのトラブルがあったときは、どんなことに注意して書くと良いのでしょうか。NG例、適切例で見てみましょう。

悪い例:「あざは見られるが、痛みはない様子」
良い例:「外傷、腫れはないがあざが見られた。本人に痛みがないかと問いかけると『痛みはない』と返答があった」

トラブル時は特に、決めつけや推測と疑われるような曖昧な書き方は避け、具体的な事実を記載するようにしましょう。

悪い例:「居室に行くと、床に尻もちをついていた」
良い例:「排泄介助のため居室に行くと、ベッドの脇の床におしりをつけ、両膝を曲げて座っている状態になっていたのを発見した」

この場合は、尻もちをついたところを見ていないので、見たままを正確に書くようにします。推測を書くことで状況が分かりやすくなるなら、推測だということが分かるように書きます。

その他の注意点としては、「打撲傷」「挫傷」「血便」「血尿」といった、医学的な判断を必要とする言葉は、医師の診断がおりるまでは使えません。傷や排泄物についてはできるだけ色や状態を詳しく表現し、自己判断で医学的な用語を使わないように気をつけましょう。

その他、「ボケ症状」「汚い」「不潔」「暴言」「暴力」「わがまま」など、侮蔑的であったり、人格を否定したりするような表現にも注意を。

こうした言葉で決めつけてしまうのではなく、「居室内を歩き回っていた」「大声を出して職員の足を蹴ることが数回あった」など、具体的にどんな言動があったかを正確に記載するようにしましょう。

介護記録に何も書くことがない?そんなときは


介護記録に関する介護職初心者の悩みで多いのは、「特に何事もなく過ごされたので、何を書いていいか分からない」というもの。

そんなときはまず、その人のケアプランを参照することから始めましょう。

その人の介護の目的を再確認し、目標達成に向けての変化の様子が分かるように書くことで、後々資料として役立つ、ポイントを押さえた介護記録になります。

たとえばレクリエーションがケアプランに含まれているなら、レクリエーションの様子を詳しく。

「折り紙の時間、最初は職員の話にうなずきながら聞き入っていた。途中で『うまくできない』と言い、折り紙を押しやるなど落ち着きがなくなったが、◯◯職員が『とても上手ですよ』と声掛けすると落ち着き、その後は意欲的に取り組んでいた。1時間の間に3つの作品を仕上げ、『上手にできたでしょう』と笑顔で他の利用者に見せていた」など、利用者の言葉、職員の声掛けも文章に盛り込むのがおすすめです。

いつも通りであっても、様子がリアルに伝わるよう、見たことを詳しく記録しましょう。たとえば「一階フロアでソファに座り、テレビでニュース番組を見ながら他の利用者と談笑していた」など。読んだ人の目に浮かぶように書くことを意識すると、より客観的で伝わりやすい介護記録になりますよ。

介護記録はよりよい介護のための大切なツール


日々の介護記録は、施設や事業所に監査や実地指導が入った際にももちろんチェックされます。

介護記録が不適切な修正だらけだったり、「いつも通り過ごしていた」「◯◯と思われる」といったあいまいな内容ばかりだったりすると、当然指摘を受けてしまいます。

他の仕事に追われて時間がない・クタクタに疲れているなどで、記録はついつい簡略化しがちなこともありますが、介護記録は介護サービスが適切に行われていることの証明です。

そして、日々のがんばりがまっすぐ目標に向かっているかを確認するためのツールであり、方向がズレたときには軌道修正するための羅針盤にもなります。

効率的に書けるようになる一番のコツは、回数を重ねること。介護記録の大切さをよく理解して、あせらず上手な書き方を身につけていきましょう!

【今日から役立つ!介護の基本】
1.上手な声かけ
2.ラクラク着替え介助
3.立ち上がりと起き上がり
4.トイレ問題の対処法
5.食べるを楽しむ食事介助
6.介護記録の上手な書き方
7.車椅子と移乗のコツ

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