9月を目の前にすると、昼間はまだまだ暑くても、朝晩に吹く風は少し涼しくなってきます。夕方から聞こえ出す鈴虫の音色も秋の風情。少しずつ過ごしやすくなってくると、お年寄りでなくてもホッとしますね。
暑かった夏が過ぎ、空気が爽やかに衣替えする秋は、さまざまなものへの感性が高まるシーズン。老人ホームやデイサービスなどの高齢者施設でも、本人が少しでも興味を持てるものを見つけ、チャレンジしてもらいたいですね。
運動でもアートでも、レクリエーションで新しい楽しさを知ってもらい、ご本人の趣味や生きがいに育ててもらえれば、こんなにうれしいことはありません。
今回もそのきっかけになりそうなアイデアをいろいろご紹介していきます。高齢者との会話のネタになりそうな9月の風物詩や雑学ネタもぜひ、日々のコミュニケーションのご参考にしてくださいね。
9月ってどんな月?
9月といえば、多くの人にとっては夏の休みが終わり、日常を取り戻す月。夏バテで少し痩せても、おいしいものが出回る9月には、減った体重をすっかり取り戻すという人も多いのでは?
9月においしいものの筆頭といえば、まずは新米ですね。秋の食べ物を炊き込んだ炊き込み御飯などは、1年に一度は食べておきたい季節の味。栗、さんま、きのこ、サツマイモ・・・みなさんのお気に入りの炊き込み御飯の具材は何でしょうか?
高齢者の方にも、これだけは毎年食べるという秋の味などを伺ってみると、楽しい会話になるかもしれません。お料理上手な方なら、おすすめレシピを教えてもらうのもいいですね!
果物ではぶどう、梨、柿、イチジクや栗などもシーズン。施設の食事やおやつにも、こうした季節の味をできるだけ取り入れて、高齢者の食べる意欲を引き出していきましょう。
また、9月のイベントとしては秋分の日があります。この日は祖先を敬い、亡くなった人をしのぶ日。秋分の日を中心とした一週間を「秋彼岸(あきひがん)」といい、家族そろってお墓参りに行ったりします。
お彼岸の供物といえば「おはぎ」。春のお彼岸に食べるぼたもちと同じものですが、ぼたもちは「牡丹餅」と書き、春に咲く牡丹の花にちなんだ呼び方。形も牡丹をイメージして大きく丸く作ります。秋は秋に咲く萩の花にちなみ、「御萩(おはぎ)」と呼び、形も小さめでやや細長くするのだそうです。
9月の植物では、コスモスやりんどう、彼岸花やススキなどが代表的。さらに季節を感じさせる虫として鈴虫、トンボ、キリギリスなども挙げられます。
花の色や香り、虫の鳴き声・・・私たちの感覚を豊かに刺激するものとして、やはり自然に勝るものはありません。施設内の装飾や制作物の題材にも、秋の自然をふんだんに取り入れてみてはいかがでしょうか?
レクリエーションのネタになる9月の記念日
9月1日:防災の日
今から95年前の9月1日は関東大震災が起こった日。1959年に伊勢湾台風が襲来した翌年、この日を防災の日とすることが閣議決定されました。少しでも自然災害による被害を少なくするため、この日は全国各地で防災訓練が行われています。
異常気象によるゲリラ豪雨や台風被害の甚大化など、自然災害が多くなっている昨今。高齢者施設でも、ハザードマップの確認や、避難経路の確認、災害が起こった時にどうするかなどを日頃から確認しておくと安心です。
9月は台風シーズンでもありますから、9月のレクリエーションでは実益を兼ね、防災知識クイズを企画してみるのも面白いのではないでしょうか。
NHK防災ポータルサイトの防災クイズなどを参考にしつつ、地域ならではの防災情報を盛り込むのが手軽でオススメです。
9月5日:国民栄誉賞の日
国民栄誉賞とは、これまでの功績に加えてさらに突き抜けるような功績をあげ、広く国民から敬愛され、明るい希望を与えた人に贈られる賞です。
1977年の9月5日、通算ホームラン数の世界最高記録を作った王貞治が、日本初の国民栄誉賞を贈られたことから、この日が国民栄誉賞の日になりました。
他の受賞者としては、冒険家の植村直己や、歌手の美空ひばり、千代の富士関や寅さんで親しまれた渥美清、映画監督の黒澤明etc・・・あなたは何人思い浮かびますか?
誰もが知っている国民栄誉賞受賞者。顔写真をプリントアウトして、名前当てクイズをしてみるのも楽しそうです。そこから自由に、その人にまつわる思い出やエピソードを語り合っても盛り上がるかもしれませんね。
高齢者にとって昔を思い出すことは、認知機能の改善に役立つだけでなく、自信を取り戻したり、心を癒して心理的に安定させたりする効果もあります。高齢者が話を始めたら、関心を持って耳を傾けるようにしましょう。
9月11日:警察相談の日
警察への電話相談番号「#9110」から制定された、警察相談の日。
「#9110」に電話をかけると警察の総合相談室につながり、この日に限らずいつでも、生活の安全に関する困りごとの相談ができるのだそうです。
高齢者は、オレオレ詐欺をはじめとする各種詐欺のターゲットにされやすいため、自衛に役立つ知識を持っておきたいもの。そこで、「詐欺被害防止講座『私が騙された日』」などと銘打って、スタッフが寸劇を披露するレクリエーションをしてみませんか?
騙され役と詐欺師役が、シナリオに沿ってやりとりをしていきます。電話などの小道具を使い、
スタッフA「おばあちゃん、助けて・・・」
スタッフB「どうしたの?」
スタッフA「実は、魔が差して痴漢をしてしまって・・・今日中に示談金が用意できないと刑事事件になっちゃうんだ(泣く)」
といった具合です。
要所要所で進行役が「皆さんならどうしますか?」と意見を聞きます。みんなで意見を出し合い、良い意見が出たらそれをシナリオに反映して進めていきましょう。
コツは高齢者にもわかりやすいよう、セリフはゆっくりはっきり言うこと。地域の方言や、地名などを入れると盛り上がりますよ。
高齢者にとって新しい情報を学ぶことは良い刺激になり、脳が活性化して認知症の予防や改善につながるメリットも。仲間とのコミュニケーションにもなり、社会見聞も広めることができる一挙両得のレクリエーションです。
お月見団子でおやつレク
「中秋の名月」とは、旧暦の8月15日の夜に見える月のこと。2018年の中秋の名月は、9月24日です。収穫したばかりのサトイモを供えることから「芋名月」と呼ばれることもあります。
空気が乾燥して空気中のチリや花粉も少ない秋は、月がとても明るく、美しく見える季節なんだとか。
中秋の名月にちなみ、みんなでお月見団子を作るおやつレクはいかがでしょうか。高齢者施設では、白玉粉に豆腐を混ぜるなどして喉に詰まりにくくしたレシピがオススメです。
混ぜる、丸めるといった作業は手先の良い運動になり、皮膚感覚も刺激されるので脳の活性化にもつながります。あんこやきな粉、みたらしのタレなどを用意しておき、各自好きな味付けでいただきましょう!
スポーツに親しむ秋、「ボッチャ」にチャレンジ
パラリンピックの正式種目である「ボッチャ」、耳にしたことはありませんか?
赤と青のカラーボールを投げたり転がしたり、他の球に当てて動かすなどして、目標となる白い球にいかに近づけるかを競う競技。「地上のカーリング」とも呼ばれるように、頭脳ゲームの面も備えているので、障害の程度を問わずみんなで楽しむことができます。
まずは準備体操で身体を動かし、用具とルールの説明、基本的な投げ方の練習をしたらゲームスタート。最後は整理体操とリラクゼーションを行って終了します。
ゲーム形式で競うスポーツは、高齢者の意欲を引き出すおすすめレクリエーション。適度な競争意識はモチベーションをアップさせる効果がありますし、周囲の応援も楽しい演出になり、本人のやる気を促します。
ルールをシンプルにするなどして利用者の方々から支持を得ている施設の例もあるので、ぜひ参考にしてみましょう。
読書の秋を楽しむアイデア
静かに読書を楽しみ、自分の興味のある世界を深めるのも、ステキな秋の過ごし方ですよね。
参加者がそれぞれに自分のおすすめの本を紹介する、「私のおすすめ本発表会」を開いてみませんか?好きな本、思い出の本を各自一冊持ってきてもらい、みんなの前で発表します。必要であればご家族にも伝えて協力してもらいましょう。
当日本の紹介をしてもらうときには、その本のおすすめポイントや、どんな思い出があるのかなどをお話してもらいます。なかなかうまく話ができない場合は、スタッフが質問をして、自然に話を引き出すようにしてみましょう。
自分の価値を低く考えてしまいやすい高齢者にとって、自分の主張を周囲の人に聞いてもらうことは、自信を取り戻し自己肯定感を育てることにとても効果的です。仲間とのコミュニケーションやストレス発散にも役立つレクリエーションです。
自尊心を育て、意欲を引き出すレクリエーション
9月の第3月曜日は敬老の日。文字通りお年寄りを敬う日なのですが、生活に介護の手を要する高齢者は、自分に対してなかなか自尊心を持ちにくいという現実があります。
「自分なんてあてにされていない」「迷惑がられているんじゃないか」といったマイナス思考に陥りがちな高齢者に対して、1日いちにちを充実させて生きようという前向きな気持ちになってもらうためには、「自分の意見を聞いてもらえる」「やりたいことができる」「今からでも新しいことにチャレンジしたり、学ぶことができる」といった実感を持ってもらうことが不可欠です。
レクリエーションは、ただゲームや体操で身体を動かして楽しむというだけではなく、そういったポジティブな気持ちを育てるためにも重要な役割を果たします。
気候が過ごしやすくなる9月は、新しいことにチャレンジするのにも最適な季節。定番のレクリエーションに加えて、今までやったことのなかったレクもぜひ、挑戦を検討してみてくださいね。